「資金決済法に基づく表示」に記載すべき事項をわかりやすく解説!

はじめに
自社サービスで発行するコインやポイントが「前払式支払手段」にあたる場合、発行事業者は資金決済法上、一定の情報を提供すべき義務を負うことになります。
webサービスなどで「資金決済法に基づく表示」というページを見ることがありますが、これは、ここでいう情報提供義務を履行する方法として用いられているのです。
それでは、具体的にどのようなことを記載しなければならないのでしょうか?
今回は、「資金決済法に基づく表示」に記載すべき事項を中心に弁護士がわかりやすく解説します。
この記事を執筆したのは

- 弁護士・中小企業診断士 勝部 泰之
- 注力:知的財産権・著作権/ライセンス、ブロックチェーン、データ・AI法務
GWU Law LL.M.(知的財産法)
事業の成長とリスクを両立する実務寄りの助言に注力しています。 - 詳しいプロフィールはこちら
1 「資金決済法に基づく表示」に記載すべき事項
資金決済法上、前払式支払手段発行者が利用者に対して提供しなければならない情報は多岐にわたります。
具体的には、以下のような情報が挙げられます(資金決済法13条1項、前払式支払手段府令22条2項)。
- 氏名、商号又は名称
- 前払式支払手段の支払可能金額等
- 前払式支払手段の使用期間・期限
- 利用者からの苦情・相談に応ずる営業所などの所在地・連絡先
- 前払式支払手段を使用できる施設・場所の範囲
- 前払式支払手段の利用上の必要な注意
- 電磁的方法により金額・数量を記録している前払式支払手段にあっては、その未使用残高を知る方法
- 前払式支払手段の利用に係る約款などが存在する場合には、その旨
また、前払式支払手段を発行する場合には、書面の交付その他の適切な方法により、「その他利用者保護を図るための措置等」(いわゆる保護措置)に関する情報を利用者に提供しなければならないとされています(前払式支払手段府令23条の2)。詳しい内容は(9)で後述します。
(1)氏名、商号又は名称
前払式支払手段の発行主体を記載します。
<発行者の名称>
株式会社〇〇〇
発行主体が個人であれば氏名を、法人であれば会社名を記載します。
(2)前払式支払手段の支払可能金額等
一回当たりの前払式支払手段の購入限度額や、一回当たりの前払式支払手段の使用限度額などを記載します。
また、支払可能額などに制限がなければ、その旨を記載します。
<支払可能金額等>
1ポイント=10円とします
保有可能な上限は、〇〇ポイントです
たとえば、ゲーム系のアプリなどは、未成年者が多く利用するサービスの一つです。
このようなサービスでは、未成年者が多額の前払式支払手段を購入するおそれがあるため、年齢ごとに購入限度額を記載することもあります。
(3)前払式支払手段の使用期間・期限
前払式支払手段の使用について、期間や期限を設定する場合には、その期間や期限を記載します。
<有効期間>
ポイントは、〇〇から起算して6ヶ月を経過した時点で失効します
(4)利用者からの苦情・相談に応ずる営業所などの所在地・連絡先
前払式支払手段の発行や利用について、利用者から苦情・相談があった場合の窓口に関する情報を記載します。
<苦情・相談の窓口>
東京都千代田区〇〇 △△ビル2階 お客様相談室
TEL:03-〇〇〇〇-〇〇〇〇
メール:〇〇@〇〇
連絡先は、相談窓口の電話番号やメールアドレスなどを記載する方法や、問い合わせフォームへのリンクを貼る方法が一般的になっています。
(5)前払式支払手段を使用できる施設・場所の範囲
実際に前払式支払手段を使用できる施設名・サービス名などを記載します。
<使用可能な施設・場所の範囲>
〇〇(サービス名)のサイト内でのみ使用することができます
(6)前払式支払手段の利用上の必要な注意
サービスの内容などに応じて、独自の注意点を記載します。
<利用上の注意>
原則、〇〇コインの払い戻しはいたしません。
ただし、各サービスの提供を終了する場合は、この限りではありません。
このように、資金決済法では、前払式支払手段の払い戻しが原則として禁止されているため、その旨が記載されることが多いといえます。
(7)電磁的方法により金額・数量を記録している前払式支払手段にあっては、その未使用残高を知る方法
利用者が保有する前払式支払手段の残高を確認する方法について記載します。
具体的には、残高を確認できるページなどを記載することになります。
<未使用残高を確認する方法>
未使用残高は、アプリ内の設定>〇〇でご覧いただけます
(8)前払式支払手段の利用に係る約款などが存在する場合には、その旨
サービスに係る利用規約のリンクを貼ることが一般的です。
<利用規約>
〇〇ポイントの利用につきましては、利用規約(URL・・・)をご覧ください
(9)いわゆる保護措置(発行保証金)
①なぜわざわざ用意されているのか
前払式支払手段(いわゆる「有償ポイント」や「チャージ残高」など)を発行する事業者は、万が一、会社が倒産したり、事業を続けられなくなったりした場合でも、利用者の未使用残高の一部を返せるように「発行保証金」というお金を別枠で確保しておく義務があります。
利用者は、この発行保証金を原資として、一定の範囲で払い戻しを受ける権利を持っています(資金決済法31条1項で定められている権利です)。
つまり、「サービス側に何かあっても、チャージしていたお金が、まるごと消えてしまうことを防ぐためのセーフティネット」が発行保証金の仕組みと、その根拠条文の趣旨です。
②発行保証金はどこで、どんな形で守られているのか
発行保証金をどういう形で保全しているのかも、利用者に対してきちんと明示する必要があります。
具体的には、次のような点をわかりやすく書きます。
-
-
- 発行保証金を
-
- 裁判所への「供託」によって保全しているのか
- 保険会社・金融機関との「発行保証金保全契約」によって保全しているのか
- 信託銀行等との「発行保証金信託契約」によって保全しているのか
-
- 保険契約や信託契約で保全している場合は、
-
- その相手方(銀行・信託銀行・保険会社など)の名称
を、ユーザーが見てわかる形で表示します。
利用者からすると、「このサービスのチャージ残高は、どの金融機関・どんな仕組みで守られているのか?」が一目で確認できる、というイメージです。
③不正利用が起きたとき、どこまで補償してもらえるのか
もう一つ大事なのが、不正使用が起きた場合の補償や対応方針です。
前払式支払手段の残高について、たとえば
- 第三者が不正にログインして勝手に使ってしまった
- 権限のない者が、利用者の意思に反してチャージや支払いの指図を行った
といった場合に、どのようなルールで損失補償や対応を行うかを、あらかじめ方針として定め、それを利用者に示す必要があります。
たとえば、次のような内容を盛り込むイメージです。
- 不正利用が疑われる場合の連絡窓口
- カード・アカウント情報が盗まれた場合の停止手続
- どの範囲まで事業者が補償するのか(利用者の重大な過失がある場合の扱いなど)
- 調査フローや、補償の有無・範囲を判断する基準の概要
こうした方針を事前に示しておくことで、「万一、不正な利用があったときに、このサービスはどう動いてくれるのか?」が利用者にとって見えやすくなり、トラブル予防にもつながります。
2 「資金決済法に基づく表示」を掲示する際の注意点
「資金決済法に基づく表示」をサイト上などに掲示する場合、金融庁ガイドラインによれば、以下の点に注意する必要があります。
- 前払式支払手段を購入するタイミングで利用者が確認できるようになっていること
- 前払式支払手段を購入した後も利用者が確認できるようになっていること
サイト上で「資金決済法に基づく表示」を掲示していたとしても、利用者が前払式支払手段を購入する際に確認することができなければ、適切に情報を提供しているとはいえません。
そのため、たとえば、利用者が前払式支払手段を購入する際に、「資金決済法に基づく表示」の画面を表示し、購入者において確認済のボタンをクリックしないかぎり、前払式支払手段を購入できないといったような仕組みにすることが考えられます。
3 まとめ
前払式支払手段を発行する事業者の多くは、「資金決済法に基づく表示」を掲示することにより、資金決済法上の義務を果たしています。
「資金決済法に基づく表示」を作成する際には、他社による表記を参考にするなどして、記載すべき事項を正確に盛り込むようにしましょう。
現在は、弁護士としての企業顧問と、大学院での研究という2軸の活動をしています。 弁護士としては、IT・ゲーム・フィンテック領域を中心とした企業法務をサービスの中心としています。 大学院では、一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(M1)において、法令工学に基づいて処理済みのデータを計量統計的に処理する研究しています。 証券会社の社内弁護士として、暗号資産交換業の法制化初期に、登録申請やコンプライアンス体制の整備に従事し、独立後も国内外の暗号資産交換業者、投資助言・代理業者、資金決済関連事業者の顧問業務を担当し、許認可・当局対応から契約、社内規程、サービス設計まで幅広く支援してきました。 ゲーム・デジタルコンテンツ、AI・データ分野では、開発・運営に関する契約、利用規約、著作権、個人情報保護、データの取得・利用条件、課金・サービス提供スキームなどを取り扱っています。また、日常的な契約・会社法務、資本政策、資金調達、株主・役員関係、紛争対応など、企業の成長段階に応じたジェネラル・コーポレート業務にも対応しています。 また、中小企業診断士として、財務分析、事業計画、資金繰り、融資・エクイティを含む資金調達の検討にも関与しています。法的な可否やリスクを指摘するだけでなく、事業性、財務、オペレーションを踏まえた実行可能な選択肢を示し、契約、規程、業務フローに落とし込むことを重視しています。 【経歴】 2006年 弁護士登録。複数の法律事務所において、企業間紛争、訴訟その他の企業法務に従事。 2015年~2016年 米国ジョージ・ワシントン大学ロースクールに留学し、Intellectual Property Law LL.M.を取得。コンピュータ・ソフトウェア産業における知的財産保護、著作権、ライセンス及び契約法を研究。 2016年~2017年 証券会社の社内弁護士として、法制化初期の仮想通貨交換業、現在の暗号資産交換業に関する登録申請及びコンプライアンス体制の整備に従事。 独立後、海外大手企業を含む複数の暗号資産交換業者、金融商品取引業者(投資助言・代理業)、資金決済関連事業者の顧問業務を担当。許認可・当局対応、契約・規約、社内規程、事業スキームの設計などを支援。












