はじめに

著作権に、登録制度があることをご存知ですか?

著作権は著作物を作成した時点で自動的に発生するものです。「登録をしなければ権利が認められない」というものではありません。

この登録制度、実は事業者の方にとっては自身の著作物を他者の侵害から守るのに有用なシステムでもあります。

この記事では、弁護士が「著作権の登録」について、主に

  1. なぜそのようなシステムがあるのか
  2. 登録のメリット
  3. 登録の方法

などについて、詳しく解説していきます。

上手に利用して、自社のコンテンツを守っておきましょう。

1 著作権登録とはどのようなものか、なにができるのか

2721

まず、著作権登録制度について

  1. なぜ登録というシステムがあるのか
  2. 著作権登録のメリットは?

について説明をします。

(1)なぜ登録というシステムがあるのか

冒頭でご紹介した通り、著作権は、著作者が著作物を作成した時点で自動的に発生するものです。届出や登録などの手続きは必要なく、誰でも著作物さえ生み出せばこの権利を持つことができます。

もっとも、権利が勝手に発生するのであれば、なぜ「著作権登録制度」というシステムがあるのでしょうか。

「著作権登録制度」があるのは、

  1. いつ作成したかといった著作権に関わる事実関係の証明を容易にすること
  2. 著作権の発生・変更などを明確にすること

が目的です。

著作権は、自動的に発生する権利であるために、誰に、いつ、権利が発生したのか、わかりにくいです。また、権利の譲渡も可能で、誰に今権利があるのかが不明確になりがちです。不明確だと、怖くて著作権が発生したであろうコンテンツの取引ができなくなってしまう場合があります。こうした不都合を解消するために、「著作権登録制度」はあるのです。

(2)著作権登録のメリットは?

それでは、登録をすることで、どのようなメリットがあるかを順番に見ていきましょう。

①著作権に関わる事実関係の証明が容易になる

たとえば、コンテンツを無断転載されてしまった場合を考えてください。

このように著作権が侵害された疑いがある場合に、よく問題になるのは、その著作物を誰が、いつ作成したかについてです。

通常、著作権侵害の責任を追及するためには、転載元は自身のコンテンツであることを証明しなければいけません。つまり、無断転載されたコンテンツを自身が先に作成したり公表したりしていたことを証明しなければいけないのです。

もっとも、著作権は自動的に権利が発生するため、誰が、いつ、そのコンテンツを作成(公表)したかを証明することは容易ではありません。

著作権登録制度を利用し、いつ、誰が作ったかといった著作権に関わる事実関係をあらかじめ登録しておくことで、著作権侵害などのトラブルが起こった際にも、「令和〇年〇月〇日に私が作成(公表)しました」と証明しやすくなります。

②登録内容の確認ができる

著作権が登録されると、文化庁の著作権等登録状況検索システム(無料)で検索したり、登記事項記載書類の交付(有料)を受けることで、誰でも登録内容を確認することができます。

このように、誰でも検索可能となっていることから、自身がそのコンテンツの著作者であることなどを取引相手に確認してもらうことも可能です。自身が著作者であることを確認してもらうことで、取引相手も「あなたが作った(公表した)コンテンツなんだね」と、スムーズに取引することが可能になるという効果があります。

検索システムでの検索は無料となっていますが、確認できる登録内容は著作物のタイトル(題号)や著作者の氏名(最初の公表の際に表示されたもの)など、一部の情報に限られています。より詳しく登録内容を知りたい場合は、手数料を払い登記事項記載書類の交付を受ける必要があります。

なお、プログラムの著作物にかんしては、登録先が異なるため、著作権登録状況検索システムでは確認ができません。登録の有無を検索する際には、プログラムの著作物の登録先である一般財団法人ソフトウェア情報センターに電話で問い合わせなければいけません。センターの詳細については後述します。

2  登録可能なのは5項目、それぞれの役割は?

2722

では、登録できる項目はどのようなものがあるのでしょうか。

大まかに分類すると、以下の5項目がそれに当たります。それぞれについて見てみましょう。

  1. 実名の登録
  2. 第一発行(公表)年月日の登録
  3. 創作年月日の登録
  4. 著作権などの移転等の登録
  5. 出版権の設定等の登録

(1)実名の登録

ここでいう「実名」とは本名のことです。

このように本名の登録が可能になっているのは、コンテンツを公表する際に、

著作物を無名(匿名)あるいは、変名(ペンネーム、雅号、ハンドルネーム、略称)で公表することがあり、無名や変名では誰がその著作物を作成したのか分からなくなるからです。

そのため、このように実名登録を申請できるのは、

  1. 著作物を無名で公表した著作者
  2. 著作物を変名(ペンネーム、雅号、ハンドルネーム、略称)で公表した著作者
  3. 著作物を無名、変名で公表した著作者が遺言で指定した者

となっています。

そして、著作権は永久に保護されるわけではなく、保護期間が決まっています。無名や変名で公表された著作物の保護期間は原則、公表後70年間となっていますが、実名を登録することで、例外的に、この期間が著作者の死後70年間となります。

無名や変名で公表したコンテンツをより長く保護したいと考えるのであれば、著作権を登録するか、実名で公表し直すという選択肢があります。

(2)第一発行(公表)年月日の登録

第一発行(公表)年月日」とは、初めて、著作物を世の中に発表したり、販売したり、インターネットのホームページなどにアップロードしたりした日付のことをいいます。

そのため、第一発行(公表)年月日を登録できるのは、すでに発行(公表)されている著作物のみです。未公表の作品の発表予定日を登録することはできません。公表した日を客観的に証明できる必要があります。

実務上、世の中に発行(公表)したと認められるためには、おおよそ、発行部数でいうと50部以上発行していたり、著作物を視聴、聴いた人が50人以上いたりすることが必要となっています。また、ホームページへのアップロードは、誰でもアクセス可能な状況にした段階で公表したことになっています。

この第一発行(公表)年月日の登録を申請できるのは、

  1. 著作権者
  2. 出版社などの著作物の発行者(無名、変名の著作物の場合)

となっています。

著作物を作成した著作者が権利を譲渡した場合には、著作者≠著作権者となる点には注意してください。また、著作権の保護期間が切れた場合には、著作権は消滅し著作権者ではなくなってしまうため、登録の申請を行うことはできなくなります。ご注意ください。

(3)創作年月日の登録

プログラムの著作物であれば、、そのプログラムが生み出した年月日を登録することができます。

このように、プログラムにのみ創作年月日の登録が認められているのは、プログラムというものが、他のコンテンツと異なり、公表せず社内でのみ利用されることがあるからです。このように公表せず社内でのみ利用されると、第一発行(公表)年月日の登録を受けられないという不都合があるため、この不都合を解消するため、プログラムにかんしては創作年月日の登録が認められています。

もっとも、いつでも申請が認められるわけではなく、創作後6ヶ月以内に申請しなければいけない点には注意が必要です。

この創作年月日の登録を申請できるのは、著作者です。

たとえば、会社が業務命令で社内のエンジニアなどの従業員にプログラムを作らせることはよくある話かと思います。この場合、「職務著作」の要件をみたせば、プログラムを作成した従業員が著作者となるわけではなく、会社が著作者となります。そのため、職務著作にあたるプログラムが作成された場合は、会社が創作年月日の登録申請をすることができるようになります。

 
※職務著作の要件などについて詳しく知りたい方は、「従業員が生み出したものは会社のもの?職務著作の4つの要件を解説!」をご覧ください。

(4)著作権などの移転等の登録

著作権や著作隣接権(著作物を広めることに重要な役割を担っているテレビ曲などに認められる放送する権利など)という権利を譲渡する場合など、権利の変動に関しても登録することができます。

このように、権利の変動を登録することで、仮に、同じ権利が複数の人に譲渡されてしまった場合にも、「私が権利を譲渡してもらった」と主張することが可能になります。

この移転等の登録申請は、原則として、登録権利者と登録義務者が共同で行うこととなっています。ここでいう「登録権利者」とは、権利を譲り受ける者(譲受人)のことをいい、「登録義務者」とは、権利を譲り渡す者(譲渡人)のことをいいます。そのため、権利を譲り渡す者と、譲り渡される者が一緒に登録申請を行う必要があります。

もっとも、登録義務者の承諾書や判決文などがあれば、例外的に登録権利者が単独で申請を行うことも可能になっています。

(5)出版権の設定等の登録

出版権」とは、著作物を独占的に出版できる権利のことをいいます。出版権が設定された出版者は、著作者が作成した著作物を独占的に複製し、販売、頒布することができます。もちろん、紙の書籍だけでなく、電子書籍も対象となっています。

この出版権の設定や移転などの権利の変動も登録ができます。出版権の設定等の登録をすることで、誰かが出版権の設定されたコンテンツを勝手に出版している場合には、「私がこのコンテンツの出版権の設定を受けている、勝手に出版するな」と主張することが可能になります。

この出版権の設定等の登録も、原則として、登録権利者(出版者)と登録義務者(著作権者)が共同で行うこととなっていますが、登録義務者の承諾書や判決文などがあれば、例外的に登録権利者が単独で申請を行うことも可能になっています。

3 著作権はどこに登録できるのか

2723

著作権を登録できるのは、

  1. 文化庁(著作物全般)
  2. 一般財団法人ソフトウェア情報センター(SOFTIC)

2ヶ所のみです

これ以外の民間機関や出版社などは登録機関ではありません。

(1)文化庁

文化庁」とは、著作物の円滑な利用や流通の促進のための施策を担い、登録制度全体を統括する公的機関です。

(2)ソフトウェア情報センター

コンピューターのプログラム著作権にかんしては、一般財団法人ソフトウェア情報センター(SOFTIC)が著作権の登録先です。

文化庁から指定登録機関の認定を受けている団体で、プログラム著作物の登録事務、登録事項記載書類の交付、登録されたプログラムの公示などを行っています。

(3)登録団体として間違われやすいのは?

なお、よく間違われやすい団体としては、音楽著作物・著作権などを扱う一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)があります。

こちらは音楽著作物の権利を管理する団体で、著作権者が作権の管理を同会に依頼すると、楽曲を使いたい利用者からの申請や利用料の分配などを著作権者に代わって管理してくれる団体です。これにより、著作権者は1曲ごとに発生する利用希望者の申請を自分で処理する必要がなくなります。

あくまでも音楽作品を利用する際の「申請」先であり、著作権の「登録」機関ではありません。

4 申請のやり方と費用

2724

(1)申請の流れ

申請から登録の流れは以下の通りです。

272_4_1【堀江】著作権 登録-修正:著作権の登録申請の流れ

①申請

申請者は必要な書類を文化庁またはソフトウェア情報センターに提出して申請します。プログラム著作物であればソフトウェア情報センター、それ以外の著作物については、文化庁が登録先です。

提出方法は、必要書類を郵送することになっています。確実に届くよう、書留やレターパックで送るようにしましょう。

提出にあたっては、申請書左上に登録の費用として登録免許税を支払ったことを示す収入印紙を貼り付けます。割印はしないでください。具体的な費用については、後の項目で説明します。

なお、書類の不備や抜けの防止として、文化庁やソフトウェア情報センターに対して書類の事前チェックを依頼することができます。任意ではありますが、受けておいた方がスムーズになるでしょう。事前チェックを依頼する際には、

  • 収入印紙は貼付しないこと
  • 署名、押印したうえで依頼しないこと

に注意してください。

②審査

申請後、文化庁やソフトウェアセンターでは、登録するかどうかを審査します。

申請から審査結果が出るまでにかかる時間は、おおよそ30日です。

③書面の交付

無事登録が認められた場合には、「登録済通知書」という書面が交付されます。他方、登録が認められなかった場合には、「却下通知書」という書面が交付されます。

却下されるのは、

  • 登録を申請した事項が登録すべきものでないとき
  • 必要書類が提出されていないとき
  • 登録免許税が納付されていないとき

などの場合です。提出書類に不備があった場合、いきなり却下されることはありませんが、できる限り早く不備があった箇所に対して補正などの対応を行うようにしましょう。

(2)必要書類

登録申請にあたっては、申請書が必要になります。また、申請書に加えて、登録したい事項によって他にも必要になる書類があります。

まず、申請書については、以下からダウンロードしてください。

次に、以下の登録を申請する場合に、申請書に加えて必要になる主な書類を確認していきましょう。

  1. 実名の登録
  2. 第一発行(公表)年月日の登録
  3. 創作年月日の登録
  4. 著作権の譲渡の登録
  5. 出版権の設定等の登録

①実名の登録

実名がわかる公的書類を用意します。

具体的には、戸籍、登記簿の謄本または抄本、住民票の写し(マイナンバーの記載がないもの)などです。

②第一発行(公表)年月日の登録

第一発行(公表)年月日を証明できる資料を用意します。

具体的には、受領書や販売証明書などです。

③創作年月日の登録

プログラム著作物の複製物を用意します。

提出に際しては、CDーRやDVD-Rにプログラムを格納して提出するようにしてください。

④著作権の譲渡の登録

登録したい事項を証明する資料を用意します。

具体的には、譲渡契約書などの写しや譲渡証書などです。

相続があったことを証明したい場合には、戸籍謄本または抄本、遺産分割協議書の写しなどを提出します。

⑤出版権の設定等の登録

登録したい事項を証明する資料を用意します。

具体的には、出版権設定契約書などの写し、出版権設定証書などです。

上記書類以外にも書類の提出を求められる場合があります。そのため、提出書類の事前確認を行うことをおすすめします。

(3)申請にかかる費用

登録する事項によってかかる費用が異なっています。主な登録費用は以下となっています(2020年1月現在)。

272_4_2【堀江】著作権 登録-修正:登録の費用

他の登録事項について具体的な費用を確認したい場合は、文化庁のWebサイトをご確認ください。

5 小括

shutterstock_319332347

著作権登録制度についてご説明してきました。

著作権は誰にでも付与される権利ですが、だからこそ「誰に、いつ権利が発生したか、移転したか」を証明する術がないと、安心して著作物を利用できません。

自社の著作物を守ることのみならず、他者からも著作物を安心して利用してもらうために、登録制度を使っておくことには意味があるでしょう。

6 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下の通りです。

  • 「著作権登録制度」があるのは、①いつ作成したかといった著作権に関わる事実関係の証明を容易にすること、②著作権の発生・変更などを明確にすることが目的である
  • 登録可能な項目は、①実名、②第一発行(公表)年月日、③創作年月日、④著作権などの移転等、⑤出版権の設定等である
  • 著作権を登録できるのは、①文化庁(著作物全般)、②一般財団法人ソフトウェア情報センター(SOFTIC)の2ヶ所のみである
  • 一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)は音楽著作物の権利を管理する団体であり、登録先ではない
  • 著作権登録申請の流れは、①申請、②審査、③書面の交付という流れである
  • 申請にかかる費用は、登録する事項によって異なる