合同会社とは?株式会社との違いやメリット・デメリットを解説!

2022.01.11

はじめに

「会社」と聞くと、株式会社をイメージする方が多いと思いますが、近年では「合同会社」を選択・設立するケースが増えています。

これから会社を設立しようと検討している方の中には「合同会社」を選択肢の一つとして考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

合同会社の設立を検討する際には、株式会社との違いや合同会社を選択するメリット・デメリットなどをきちんと理解しておく必要があります。

そこで今回は、「合同会社」について、そのメリット・デメリットを中心に弁護士がわかりやすく解説します。

1 合同会社とは

合同会社(LLC:Limited Liability Company)」とは、会社法の改正により、2006年から新たに設立できるようになった会社形態の一つです。

合同会社の大きな特徴は、以下の2点にあります。

  • 経営者と出資者が同一である
  • 出資者全員が有限責任社員である


ここでいう「有限責任社員」とは、会社に対して、出資した分だけ責任を負う社員のことをいいます。
たとえば、会社が負債を残して倒産してしまった場合、有限責任社員は自己が出資した範囲でしか弁済する義務を負いません。

2006年を皮切りに合同会社の設立件数は増えており、有名なところでいうと、アマゾンジャパンやグーグル、西友などはいずれも合同会社の形態をとっています。

2 合同会社と株式会社の違い

合同会社と株式会社には、主に以下の点において違いがあります。

  1. 所有と経営
  2. 社員(役員)の任期
  3. 代表者の肩書
  4. 意思決定機関
  5. 定款認証
  6. 決算公告

(1)所有と経営

先に見たように、合同会社では経営者と出資者が同一であるため、所有=経営という関係にあります。

これに対し、株式会社では原則として出資者が経営に関与することはありません。
そのため、所有と経営は分離する関係にあります。

(2)役員の任期

合同会社の社員は、一定の事由が生じた場合に退社する必要がありますが、任期そのものは存在しません。

これに対し、株式会社の役員は、最長で2年と任期が定められています。

(3)代表者の肩書

合同会社における代表者の肩書は「代表社員」です。
業務を執行する社員の全員が代表者となりますが、定款や社員の互選によって業務を執行する社員の中から代表社員を選任することも可能です。

これに対し、株式会社における代表者の肩書は、みなさんもご存知のとおり、「代表取締役」です。
正確にいえば、取締役は会社を代表しますが、その中から代表取締役を選任した場合には、代表取締役が会社の代表者となります。

代表取締役は、定款や取締役の互選、株主総会によって選任することができます。

(4)意思決定機関

合同会社において、組織体としての意思決定を行う機関は「社員総会」です。

これに対し、株式会社では「株主総会」が意思決定を行います。

(5)定款認証

合同会社および株式会社を設立する際には、定款を作成しなければなりません。
もっとも、合同会社の場合、作成した定款につき公証人の認証を受ける必要はありません。

これに対し、株式会社では公証人から認証を受ける必要があります。

(6)決算公告

合同会社の場合、作成した決算書類について、公告義務は課されていません。

これに対し、株式会社では、作成した決算書類を公告することが義務付けられています。

3 合同会社を選択するメリット・デメリット

合同会社を選択する際には、その前提として、以下のメリット・デメリットを十分に理解していることが必要です。

(1)メリット

合同会社を選択すると、主に以下のようなメリットを受けられます。

  1. 設立費用を抑えることができる
  2. 経営の自由度が高い
  3. 迅速な意思決定ができる

①設立費用を抑えることができる

株式会社を設立する場合には、設立登記や定款認証などの費用を負担する必要があり、最低でも20万円程度の費用がかかります。

これに対し、合同会社の場合は定款認証を受ける必要がないため、設立費用を最小で数万円程度に抑えることが可能です。

②経営の自由度が高い

合同会社では、比較的自由にさまざまなルールを作ることができます。

たとえば、株式会社において利益を配分する場合には、株式の保有数によってその額が決まりますが、合同会社の場合、出資比率に関係なく、社員間で配分を決めることができます。

このように、合同会社には経営の自由度が高いというメリットがあります。

③迅速な意思決定ができる

株式会社では、重要事項などを決定する場合には、必ず株主総会を開かなければなりません。
そのため、意思決定に至るまでに、どうしても一定の時間を要することになります。

その点、合同会社は所有=経営という関係にあるため、社員間で重要事項を決めることができます。

このように、合同会社では、迅速な意思決定が可能になるというメリットもあります。

(2)デメリット

一方で、合同会社には以下のようなデメリットがあります。

  1. 認知度が低い
  2. 資金調達方法の選択肢が少ない
  3. 出資者が対立した場合のリスクが大きい

①認知度が低い

合同会社の設立件数は増えていますが、それでもまだ株式会社ほどの認知度があるわけではありません。

また、合同会社は決算公告が義務付けられておらず、小規模で閉鎖的な会社が多いため、株式会社に比べると信用度が落ちるといえるかもしれません。

②資金調達方法の選択肢が少ない

合同会社には株式という概念がないため、株式会社のように株式を発行する方法で資金調達をすることはできません。

そのため、国や自治体が設けている補助金制度や助成金制度などを利用して資金調達するほかなく、資金調達方法の選択肢が限られています。

③出資者が対立した場合のリスクが大きい

合同会社では、利益配分を自由に決めることができますが、それが原因となって社員間で対立が生じる可能性があります。

そのような事態になると、業務に悪影響が及ぶ可能性があります。

4 まとめ

合同会社には、経営の自由度が高いだけでなく、設立費用を抑えられるという大きなメリットがあります。

もっとも、合同会社を選択する際には、資金調達の面や信用度などを十分に考慮し、自社の事業に適した会社形態であるかどうかをきちんと見極めることが大切です。

弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
弊所サービスの詳細や見積もり等についてご不明点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

この記事は役に立ちましたか?
もし参考になりましたら、下記のボタンで教えてください。

弁護士(東京弁護士会)・中小企業診断士 GWU Law LL.M.〔IP〕/一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(博士前期・2026年~) 金融規制、事業立上げ、KPI×リスク可視化を専門とする実務家×研究者のハイブリッド。

関連記事

目次