食品ベンチャー企業が押さえておくべき2つの法律を弁護士が解説!

はじめに

新型コロナウィルス感染症の拡大により、自宅で飲食する機会が増えたという方は多いと思います。
現在では、食品のデリバリーやテイクアウト、食品ECサイトなど、食品に関するサービスが数多く出てきています。

これから、食品事業に新規参入しようと検討している事業者もいらっしゃるのではないでしょうか。
食品事業を検討する際には、関係する法律を必ず押さえておく必要があります。
食品は人の健康に直結するものであるため、「知らなかった」では済まされません。

そこで今回は、食品事業を行う事業者が押さえておくべき法律を弁護士が分かりやすく解説します。

1 食品事業者が押さえておくべき2つの法律

食品事業者が最低限押さえておかなければならない法律は、以下の2つです。

  1. 食品衛生法
  2. 食品表示法


以下で、それぞれについて見ていきましょう。

2 食品衛生法

食品衛生法」は、食品の安全を確保するために必要とされる基準や表示・検査方法などを定めた法律です。

食品を扱う事業者が押さえておかなければならない基本的なルールは、以下の3つです。

  1. 販売等が禁止される食品・添加物
  2. 食品衛生責任者の配置
  3. HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理

(1)販売等が禁止される食品・添加物

食品事業者は、以下の食品・添加物について、販売、製造、加工などを行ってはいけません。

  • 腐敗、変敗したもの又は未熟であるもの
  • 有毒、有害な物質が含まれるもの
  • 病原微生物により汚染されているもの
  • 不潔、異物の混入などにより人の健康を損なうおそれがあるもの


いずれにおいても、人の健康を損なうおそれがあるため、販売等を行うことが禁止されています。

これらに違反した場合、営業許可の取消しや禁止などの行政処分を課される可能性があり、さらには罰則を科される可能性もあります。

(2)食品衛生責任者の配置

食品を扱う事業者は、営業許可を受けた施設ごとに「食品衛生責任者」を配置しなければなりません。

たとえば、事業者において販売部門と製造部門がある場合、それぞれについて食品衛生責任者を選任・配置する必要があります。

(3)HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理

HACCP(ハサップ)」とは、「Hazard(危害)」「Analysis(分析)」「Critical(重要)」「Control(管理)」「Point(点)」の5つの単語の頭文字を取った造語で、衛生管理の手法を意味します。

2021年6月1日より、大規模事業者は「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理」を遵守することが義務付けられました。

小規模な営業者については、大規模事業者より義務が緩和され「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を行うことが求められます。

具体的には、事業者団体が作成する手引書を参考にして、温度管理や手洗い等といった衛生管理を行うことが求められます。

3 食品表示法

食品表示法」は、言葉のとおり、食品の表示に関するルールを定めた法律です。

一般消費者にとって、食品に付されている表示は、その食品を購入するかどうかの基準にもなり、また、食品の安全性を確認するための情報にもなります。

このような観点から、食品に付される表示は適正なものでなければなりません。

食品に表示される内容としては、消費・賞味期限や原材料名、添加物、保存方法などが挙げられますが、これらにはすべて「食品表示基準」が設けられています。

食品事業者は、食品表示基準に従った食品表示がなされていない食品を販売することは禁止されています。

また、食品表示の中でも、特に重要な表示の一つが「アレルギー表示」です。

食物アレルギーは、最悪の場合、死に至るおそれもあるため、特に重篤なアレルギーを招きやすいものとして、卵やそば、エビ、カニなど計7つの食品について、アレルギー表示をすることが義務付けられています。

これに違反した場合、事業者は罰則を科される可能性があります。

このように、食品表示基準は、食品の容器や包装に付される表示を規制するものですが、飲食店のように調理された料理を包装せずにそのまま提供する場合は規制対象になりません。

そこで問題となるのが、飲食店でのテイクアウトやデリバリーにおいて食品の容器や包装に付される食品表示です。

先に見たとおり、調理された料理をそのまま包装せずに客に提供する場合は、食品表示法の規制対象にはなりません。

ですが、テイクアウトやデリバリーのように作り置きした料理を容器や包装に入れて販売する場合は、食品表示法の規制対象となります。
そのため、アレルギー表示をすることも必要になり、仮にアレルギー表示をせずに販売した場合には、罰則を科される可能性があります。

4 まとめ

今回は、数ある法規制のなかでも最も基本となる法律について見てきました。

実際に食品を扱うビジネスを検討する際には、このほかにも検討しなければならない法律はあります。
たとえば、食品広告に関して規制する景表法や薬機法、産地偽装などを規制する不正競争防止法など、事業内容に応じて検討しなければならない法律があります。

規制によっては、罰則も設けられているため、慎重に検討する必要があります。

弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
弊所サービスの詳細や見積もり等についてご不明点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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弁護士(東京弁護士会)・中小企業診断士 GWU Law LL.M.〔IP〕/一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(博士前期・2026年~) 金融規制、事業立上げ、KPI×リスク可視化を専門とする実務家×研究者のハイブリッド。

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