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EdTech(エドテック)とは?事業者が注意すべき4つの規制を解説

はじめに

「スタディサプリ」や「資格スクエア」に代表される、いわゆる「EdTech(エドテック)」サービスを利用する人が増えています。
オンラインで学習することができ、かつ、自由なタイミング・場所で学べるというメリットがあります。

コロナ禍のなか、EdTechサービスを開始しようと検討している事業者もいらっしゃるのではないでしょうか。
もっとも、EdTechサービスを開始する場合には、その前提として、押さえておかなければならない法律があります。

今回は、EdTechサービスを運営する教育系ベンチャーが押さえておくべき法規制を弁護士がわかりやすく解説します。

1 「EdTech(エドテック)」とは

EdTech(エドテック)」とは、Education(教育)とTechnology(技術)を組みわせた造語です。

教育現場にテクノロジーを取り入れることにより、教育現場の革新を目指そうとするビジネス領域を指します。

現在では、子ども向けのものから大人向けのものまで、幅広くサービスが展開されており、受験やスキルアップを目的とするなど、サービス内容もさまざまです。

2 EdTechサービスに関係する法規制

EdTechサービスとの関係で注意すべき法規制は、以下の4つです。

  1. 未成年者への対応
  2. 特定商取引法による規制
  3. 著作権
  4. 個人情報の取り扱い

3 未成年者への対応

特に受験を目的とするEdTechサービスの場合、ユーザーの大半は「未成年者」です。

この点、民法は、未成年者による法律行為について、以下のような制限を設けています。

    • 民法5条(未成年者の法律行為)

 

    • 1 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

 

    2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

このように、未成年者が法律行為をするには、原則として、保護者の同意が必要となります。

そのため、未成年者がEdTechサービスを利用する場合、原則として、保護者の同意を得ていることが必要となり、仮に、保護者の同意を得ていない場合には、その契約を取り消され、返金に応じなければならなくなる可能性があるのです。

EdTechサービス業者としては、未成年者への対応として、以下のような対策を講じることが必要になってきます。

  • UI上において、親権者の同意が必要であることを告知する
  • 利用規約において、親権者の同意が必要であることを定める

4 特定商取引法による規制

学習塾や家庭教師などにおいて、一定の条件を満たすものは、特定商取引法上の「特定継続的役務提供」として、一定の規制を受けることになります。

具体的には、役務の提供期間が2ヶ月を超えており、利用者がこれに応じて支払う金額が5万円を超えている場合は、特商法の規制対象となります。

「特定継続的役務提供」にあたる場合、事業者は、以下のような規制を課されることになります。

(1)書面の交付義務

事業者は、契約を締結するまでに利用者に対し「概要書面」を交付し、また、契約を締結したときは遅滞なく「契約書面」を交付しなければなりません。

概要書面と契約書面には、主に以下のような事項を記載する必要があります。

  • 事業者の名称、住所、電話番号、代表者の氏名
  • サービスの内容
  • 購入が必要な商品がある場合はその商品名、種類、数量
  • 役務の対価等
  • 対価等の支払時期、方法
  • 役務の提供期間
  • クーリング・オフに関する事項
  • 中途解約に関する事項

書面の交付に代えて、アプリ等で通知することは認められていないため、注意が必要です。

(2)クーリング・オフの適用

「特定継続的役務提供」は、クーリング・オフの適用対象です。

そのため、利用者が契約書面を受け取った日から8日間は、利用者は理由の有無を問わず、書面で契約を解除することができます(「クーリング・オフ」)。

ここでいう「8日間」という期間は、あくまで利用者が契約書面を受け取っていることが前提となります。

そのため、契約書面を交付していない場合、利用者は「8日間」という期間に拘束されることなくいつまでもクーリング・オフを行使することが可能になるため、注意が必要です。

5 著作権

特に、受験を目的とするサービスでは、参考書や資料など、多くの文章や図が記載されている教材を使用します。
これらの教材は、一定の条件を満たす場合には、著作権の保護対象となります。

著作権により保護される教材を無断でコピーしたり、ウェブ上にアップロードしたりすると、著作権侵害にあたるおそれがあるため、注意が必要です。

事業者においては、独自の教材を作製するために他人の著作物を複製するような場合は、あらかじめ著作権者の許諾を受けておくことが無難だといえるでしょう。

6 個人情報の取り扱い

EdTechサービスを提供する事業者は、学生をはじめとした多くの利用者情報を取得することになります。
そのため、「個人情報取扱事業者」として、個人情報保護法上の規制を受けることになります。

事業者は、プライバシーポリシーなどにより、個人情報保護についての方針を定め、かつ、個人情報の安全管理のために必要な措置を講じることが必要になります。

2014年には、「進研ゼミ」や「こどもちゃれんじ」を運営するベネッセコーポレーションが、個人情報を流出させるという事件を起こしています。

このようなことが起きないよう、事業者は、個人情報の取り扱いについても、十分な対策を講じておくことが必要です。

※個人情報取扱事業者に課される規制について、詳しく知りたい方は、「個人情報取扱事業者とは?事業者が課される3つの義務を解説」をご覧ください。

7 まとめ

教育事業を進めていくにあたっては、クリアしなければならない法規制が数多く存在します。

法規制の中には重い罰則を設けているものもあるため、事業者は、自社サービズに関係する法規制をきちんと理解・クリアすることが大切です。

弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
弊所サービスの詳細や見積もり等についてご不明点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。


なお、記事の内容は投稿時の法令・制度に基づいており、投稿後に法改正等がなされている可能性があります。
記事をご参考にされる際は、必ずご自身の責任において最新情報をご確認下さい。

勝部 泰之 (Yasuyuki Katsube)

                                               

弁護士・中小企業診断士。民事系法律事務所勤務→留学→証券会社インハウスにてブロックチェーン事業立上げを経験。経営的知見とバックエンドエンジニアリング経験を活かし、企業コンサルティング、生成AIによる企業法務内製化、リスク管理等のアドバイスに注力する。George Washington University Law School (LL.M.・知財専攻) 修了(2016)。経済産業省 中小企業庁主催 適正取引講習会 「下請法(実践編)」講師(2024)

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