はじめに

ドローンを導入している事業者やこれから導入することを検討している事業者は、ドローンを飛ばす際の法律規制について正確に理解していますでしょうか。ドローンを飛ばす際の法律規制は、航空法に代表されますが、そのほかにも電波法という法律で規制されているということを知っている人は意外に少ないかもしれません。電波法という法律自体、あまり馴染みのない法律であるため、初めて耳にする人もいると思います。

そこで今回は、ドローンの法律規制のうち、電波法にフォーカスして、弁護士が詳しく解説していきます。

1 ドローンとは?

ドローン 

ドローン」とは、無人航空機の一種で、人が乗って操縦することなく空を飛ぶことができる機体のことをいいます。手のひらに乗るようなサイズのものから人を乗せることができるようなサイズのものまで、人が機体に乗って操縦することを必要としない機体はすべてドローンに該当します。

もっとも、ドローンは空を飛ばすものなので、これを自由に飛ばすことができるとすると、さまざまな問題が出てきます。そこで、ドローンを飛ばす際の法律規制が必要になってくるわけです。

以下で、その法律規制について、簡単に見ていきましょう。

2 ドローンに関する法律規制

ドローンの法律規制

ドローンが空を飛ばすものである以上、どのような法律により規制されているのか、すぐに思い付く人もいるかもしれません。ドローンを飛ばす際に、まず一番に考えなければならないのは「航空法」による規制です。この点は、既に知っている人もいらっしゃると思いますが、ドローンを飛ばす際の法律規制は航空法だけではありません。このほかにも「電波法」を始めとして、注意しなければならない法律が以下のとおり数多くあります。

  1. 航空法
  2. 小型無人機等飛行禁止法
  3. 電波法
  4. 公園条例
  5. 土地所有権との関係
  6. プライバシー権・肖像権との関係
  7. 文化財保護法
  8. 海上・港周辺の規制
  9. 河川区域の規制
  10. 道路交通法

この項目では、以上の法律規制のうち、航空法と電波法について、簡単に見ていきたいと思います。

(1)航空法とは?

航空法」とは、ざっくりいうと、航空機が安全に運航できるようにすることを目的とした法律です。そして航空法は、

  • 飛ばすことができる場所(飛行禁止区域)
  • 飛ばし方のルール(飛行方法)

という2つの角度から「無人航空機(ドローンを含む)」を規制しています。

仮に、これらの規制に違反した場所や方法でドローンを飛ばすと、

  • 最大50万円の罰金

が科される可能性があります。ですので、ドローンを飛ばす際にはこれらの規制をきちんと理解しておくことが重要です。

※ドローンを飛ばす際の航空法の規制について詳しく知りたい方は「ドローン企業が知るべき航空法とは?3つのポイントを弁護士が解説!」をご覧ください。

(2)電波法とは?

電波法」とは、限りある電波を公平かつ能率的に利用することを目的とした法律です。わたしたちは、日頃スマートフォンやインターネットなど、電波を飛ばすことでやり取りをするツールを使っています。これらのツールを大きな支障なく、多くの人が使うことができているのは、まさに「電波法」という法律によってさまざまなルールが決められているからにほかなりません。後に詳しく説明しますが、電波法はドローンに関し、主に「無線局の免許」や「無線局の運用」などを規制しています。

仮に、電波法に違反すると、

  • 最大1年の懲役
  • 最大100万円の罰金

のいずれかを科される可能性があります。

このように、航空法のほかにもきちんと知っておかなければならない大事な法律があります。とはいえ、電波法とドローンの間には一体どのような関係があるのでしょうか。

以下で、詳しく見ていきましょう。

※ドローンを飛ばす際の法律規制について詳しく知りたい方は「200g以下のホビードローンは規制の対象外!?9つの規制を解説」「ドローンが他人の土地上空を飛ぶのは違法?4つの視点で弁護士が解説」をご覧ください。

3 ドローンと電波法の関係

ドローンと電波法

電波法」は、電波を使う際の基本的なルールを定めている法律です。

ドローンはその操縦や映像を送る際に必ず無線を利用しているため、電波法に則った利用をしなければなりません。では、具体的にどのようなルールを電波法は設けているのでしょうか。電波法が設けているルールの中でも特に重要なものとして「免許制」があります。以下で、この「免許制」について簡単に見てみましょう。

ドローンは無線を利用して操縦されるため、電波を使うことになりますが、電波を使うためには無線設備を備えた無線局を開設する必要があります。ですので、ドローンを飛ばすという行為は、新たに無線局を開設する行為にあたります。「無線局」とは、無線設備とその操作を行う人の総体をいい、無線局を開設しようとする人は、原則として総務大臣の免許を受けなければなりません。

もっとも、ドローンの機体について「技術基準適合証明」を受けていれば、例外的に総務大臣から免許を受ける必要はありません。「技術基準適合証明」とは、「特定の無線設備が電波法令の技術基準に適合していることを証明するもの」をいいます。わかりにくいかもしれませんが、電波法令が求めている無線設備のレベルにドローンが達しているということを証明するものと考えて頂ければ結構です。ドローンの機体が技術基準適合証明を受けているかどうかは「技適マーク」がその機体に付いているかどうかにより確認できます。技適マークは下記のように平成7年4月より現在のマークになりましたが、それより以前に使われていた旧タイプの技適マークも有効です。

技適マーク

このように、ドローンを飛ばす場所やその方法について主に規制しているのが航空法であり、ドローンの機体そのものを主に規制した法律が電波法です。

それではなぜ、電波法はドローンの機体そのものを規制しなければならなかったのでしょうか。その理由について、以下で詳しく見ていきましょう。

4 電波の利用

電波法

(1)制度概要

ドローンを飛ばす際には、操縦や画像の伝送のために、多くの場合、電波を飛ばす無線設備が利用されています。「電波」とは、300万MHz(メガヘルツ)以下の周波数の電磁波のことをいいます。肉眼で電波を確認することはできませんが、わたしたちの周りでも電波は飛んでいます。そして、日本で無線設備を利用するためには、無線局開設の免許を受けなければなりません。仮に、有限である電波に関して、何らルールがないとすると、他の無線通信に支障が生じるおそれがあります。もっとも、後に述べるように、他の無線通信に支障が生じるおそれがないような小電力の無線局などは免許を受ける必要はありません

このように、ドローンと電波は切っても切り離せない関係にあります。以下で、その関係についてもう少し具体的に見ていきたいと思います。

(2)ドローンと電波の関係

ドローンを飛ばす際には、多くの場合、電波を飛ばすことが必要になりますが、その際に使う無線の周波数帯は、以下の3つです。

  • 920MHz(メガヘルツ)帯
  • 2.4GHz(ギガヘルツ)帯
  • 5.8GHz(ギガヘルツ)帯

以上3つのうち、920MHzと2.4GHzを使っているドローンは、技適マークがあれば、免許を受ける必要はありません。ですが、5.8GHzを使っているドローンについては、無線局の免許を受ける必要があります。

なお、現在日本で販売されているドローンの多くは2.4GHzのもので技適マークも付いています。

このように、技適マークがついていれば基本的に問題ありませんが、技適マークがついていない場合は、無線局の免許を受ける必要があります。もっとも、無線設備とその操作を行う人を準備さえすれば、誰でも無線局の免許を受けられるというわけではありません。無線局を開設するためには、一定の条件をクリアしている必要があります。

以下で、その条件について、見ていきましょう。

(3)電波法の基準

日本で無線局を開設するためには、「無線局から飛ばす電波が一般的な環境において電波防護指針の規制値以下であること」という条件をクリアしていなければなりません。「一般的な環境」とは、人が集まったり、通行したり、出入りしたり、などといった場所のことを指します。それでは「電波防護指針の規制値以下」の電波とは、具体的にどのような状態のことをいうのでしょうか。

①電波防護指針とは?

電波防護指針」とは、長年にわたる研究などにより、人体に影響を及ぼすとされる電波の数値を導き出し、その最低限の数値の約50倍の安全性を確保できる数値をボーダーラインにしたものをいいます。

つまり、無線局を開局するためには、このボーダーラインに達していない電波を利用していることが条件として必要になってくるわけです。

このように、電波の強さによっては、人や電子機器などに悪影響を及ぼすおそれがあるため、電波防護指針にのっとった無線局であることが条件になっているのです。

②電波の危険性

電波が人間の肉眼で確認できるものではないため、「電波による悪影響」と言われてもしっくり来ない人もいるかと思います。

電波による悪影響の例として、わたしたちは、日常的に電車やバスを利用しますが、優先席付近では電子機器の電源をオフにすることが義務付けられています。これは、埋めこまれたペースメーカーなどが電子機器の飛ばす電波によって妨害され、機能を狂わせてしまうおそれがあるためです。

以上のように、ドローンと電波は密接に関係しており、使い方を誤ると、さまざまな支障が生じるおそれがあるのと同時に、ペナルティの対象にもなります。ですので、ドローンを飛ばす際には、航空法のみならず電波法についてもきちんと理解しておくことが必要不可欠です。

5 免許・登録を必要としない場合

登録不要

以上のように、ドローンを飛ばす際には、原則として無線局開設の免許・登録を受ける必要がありますが、技適マークがついていれば、例外的に免許・登録を受ける必要はありません。他方で、技適マークがついているかどうかにかかわらず、免許・登録を必要としない場合があります。それは、以下の2つの場合です。

  1. 微弱無線局
  2. 小電力無線局

それぞれについて、簡単に見ていきましょう。

(1)微弱無線局

ラジコンなどに使われる微弱無線局は、無線設備から高さ500メートルでの電界強度(電波の強さ)が200μV/m以下のものとして、総務省告示において周波数などが定められています。このように、飛ばす電波が極めて弱い無線局については、その免許や登録を受ける必要はありません。たとえば、農薬を散布する機能をもつラジコンヘリなどで微弱無線局が使われています。

(2)小電力無線局

小電力無線局」とは、空中線電力が1W以下で、特定の用途に使われるための技術基準が定められた無線局のことをいいます。身近なところでいうと、わたしたちが日常的に使っているWi-Fiなどの小電力データ通信システムの無線局が小電力無線局にあたります。もっとも、小電力無線局の場合、微弱無線局と同様に免許・登録を受ける必要はありませんが、技術基準適合証明等を受けた適合表示無線設備であることが必要です。

このように、飛ばす電波がきわめて弱い無線局は、他者や他の電子機器に及ぼす影響が低いため、免許・登録を受けることを必要とされていないのです。

6 ドローンが電波法に違反する場合とは?

ドローン電波法

これまでに見てきたとおり、技適マークがついている正規品を購入して普通にドローンを飛ばしている分には、電波法に違反することはありません。注意しなければならないのは、下記のような場合です。

  1. 並行輸入もしくは海外で購入した
  2. 中古品を購入したが技適マークが付いていない
  3. 改造した

それぞれの場合について、具体的に見ていきましょう。

(1)並行輸入もしくは海外で購入した

いずれも日本で購入したものではありませんので、電波法に則ったものではない可能性があります。たとえば、日本では許されていない電波帯を使っていたり、日本で許されていない電波の強さをもっていたり、といったことが考えられます。このような場合、電波法に違反する可能性があります。

(2)海外製の中古品を購入したが技適マークが付いていない

海外製のドローンを中古で購入すると、技適マークが表示されていないことがあります。このようなドローンを飛ばしてしまうと、電波法に違反する可能性があります。

(3)改造した

ドローンを改造した場合、改造後のドローンにつき、新たに技適マークの申請をしなければなりません。技適マークの申請を経ずに改造後のドローンを飛ばすと、電波法に違反することになります。

また、改造をすること自体故障や事故に繋がるおそれがありますので、改造をすることはできる限り控えるようにしましょう。

以上に挙げた点は、ドローンが正規品かどうか、技適マークが表示されているかどうか、などといったように自分できちんとした対応をとれば、どれも確認することが可能な事項です。電波法に違反しないためにも、自分が飛ばそうとするドローンについて、問題がないということをきちんと確認することが重要です。

7 免許申請

免許申請

最後に、無線局の免許申請について、簡単に触れておきたいと思います。繰り返しになりますが、電波を利用するためには、無線設備などを備えた無線局を開設しなければなりません。そして、無線局を開設するためには、総務大臣から免許を受ける必要があります。

以下の図で、免許申請から免許を受けるまでの流れを確認しましょう。

免許申請

無線局の免許を受けるためには、そのための申請を行わなければなりません。提出した申請書類は、総務省により審査されます。総務省による審査をパスすれば、予備免許が与えられます。予備免許を与えられた申請者は、無線設備の工事が終了した時点で各総合通信局に対し「落成届」を提出したうえで、落成検査を受ける必要があります。「落成届」とは、つまりは、工事が終了したということを報告することを意味します。

なお、一定の条件をみたしている申請者については、簡易な免許手続きによることができますので、予備免許→検査の手続きを省くことができます。

落成検査に合格した場合、もしくは簡易な免許手続きによって予備免許→検査の手続きが省かれた場合にようやく免許状が申請者に交付されることになります。

8 小括

まとめ

ドローンを飛ばす際には、航空法のほか、電波法による規制にも気を付けなければなりません。電波法による規制を確認せずに、ドローンを飛ばすと、場合によっては、ペナルティを科される可能性があります。ドローンを飛ばす際には、航空法はもちろんのこと、電波法にも目を配り、同法が規制している内容を十分に理解したうえで、しかるべき対応をとるようにしましょう。

9 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下のようになります。

  • 電波法は主に「無線局の免許」や「無線局の運用」などを規制している
  • 電波法に違反すると、①最大1年の懲役、②最大100万円の罰金のいずれかを科される可能性がある
  • 「無線局」とは、無線設備とその操作を行う人の総体のことをいう
  • 無線局を開局しようとする場合、原則として総務大臣の免許を受けなければならない
  • ドローンの機体について「技術基準適合証明」を受けていれば、免許を受ける必要はない
  • 「技術基準適合証明」とは、特定の無線設備が電波法令の技術基準に適合していることを証明するものである
  • ドローンを飛ばす際に使う無線の周波数帯は、①2.4GHz(ギガヘルツ)帯、②920MHz(メガヘルツ)帯、③5.8GHz(ギガヘルツ)帯の3つである
  • 2.4GHzと920MHzを使っているドローンは、技適マークがあれば、免許を受ける必要はないが、5.8GHzを使っているドローンは、無線局の免許を受ける必要がある
  • 日本で無線局を開局するためには、無線局から飛ばされる電波が一般的な環境において電波防護指針の規制値以下であることが必要である
  • 「電波防護指針」とは、長年にわたる研究などにより、人体に影響を及ぼすとされる電波の数値を一定の幅をもって導き出し、その最低限の数値の約50倍の安全性を確保できる数値をボーダーラインにしたものである
  • 技適マークがついているかどうかにかかわらず、免許・登録を必要としないのは、①微弱無線局、②小電力無線局の2つである
  • 電波法に違反する可能性があるのは、①並行輸入もしくは海外で購入、②中古品を購入したが技適マークが付いていない、③改造、の3つのケースである