はじめに

取引先と契約をする際に「秘密保持契約書(NDA)」を交わすことって多いですよね。

その際に、賠償責任や契約の有効期間などをサクッとチェックするだけで、契約書の作成・レビューを済ませている企業がほとんどではないでしょうか?

しかし、秘密保持契約書(NDA)のチェックを適当にやっていると、

  • 秘密情報が漏洩
  • 秘密情報を受け取る際の「管理コスト」が増大
  • 損害を賠償する

といった事態に陥りかねません。

そこで、以下では、秘密保持契約書(NDA)の意味やこれを交わす理由、具体的な書き方のポイントを解説していきます。

1 秘密保持契約書(NDA)とは

秘密保持契約書とは

秘密保持契約書」(英語: Non-DisclosureAgreement、略称: NDA)とは、自社が持つ情報の中で、外部に漏洩してしまうとヤバい情報(=秘密情報)を相手企業に渡す場合に、これを漏らさないように相手方を拘束する契約書を意味します。

※別名で、「機密保持契約書」や「CA(英語:.Confidential Agreement)」とも呼ばれますが、いずれも同じ意味で、違いはありません。

2 秘密保持契約書(NDA)が必要な理由

秘密保持契約書(NDA)が必要な理由

では、なぜ、秘密保持契約書(NDA)が必要なのでしょうか?

それは、企業が安心して提携先企業などと取引をできるようにするためです。

企業は、日々、取引先との間で様々な契約をします。

その中で、自社の秘密情報をやむをえず、取引先に開示しなければならない場合が想定されます。

新規事業に関する業務提携などをイメージしてもらうとわかりやすいかと思います。

仮に、自社の企業秘密ともいえる情報が漏れた場合、新規事業のプロジェクト自体がとん挫し、 これまでに投下した資本を回収できないばかりか、プロジェクトが成功したら得られたであろう利益(=逸失利益)を失うことになります。

また、競合他社などとの間で何らかの契約をする場合、仮に秘密保持契約書(NDA)を交わしていなかったとしたら、自社の秘密情報を流用されてしまうリスクがあります。

そのため、こういったリスクを回避し、安心して取引ができるようにするためツールとして、秘密保持契約書(NDA)が必要なのです。

3 秘密保持契約書(NDA)の利用場面

秘密保持契約書(NDA)の利用場面

秘密保持契約書(NDA)が必要になる場面としては、どういったケースがあるのでしょうか?

主なケースとしては、新規事業における業務の一部を外注するなど、何らかの業務を外部に「業務委託契約」する場合です。

他にも、他社と製品の「共同開発」をする場合や、システム開発、M&Aを検討をする場合などにも、頻繁に、秘密保持契約書(NDA)が交わされます。

4「ひな形」の無料ダウンロード

秘密保持契約書(NDA)無料ダウンロード

実際に秘密保持契約書(NDA)の書き方を解説していきますが、秘密保持契約書(NDA)のひな形があれば、よりわかりやすいですよね。

そのため、秘密保持契約書(NDA)のひな形をご用意しましたので、ご自由にダウンロードしてください。

「秘密保持契約書(NDA)のひな形」はこちら

5 書き方の解説

秘密保持書書き方説明

それでは、具体的に「秘密保持契約書(NDA)の書き方」をみていきましょう。

※なお、「秘密保持契約書(NDA)のチェックポイント」をざっくりと把握したい方は、「【ひな形付】秘密保持契約書(NDA)とは?7つのポイントを弁護士が徹底解説」をご参照ください。

(1)タイトル(表題)

秘密保持契約書

株式会社〇〇〇〇〇(以下、「甲」という。)と株式会社×××××(以下、「乙」という。)とは・・・・・

まずは、契約書の一番上の方に、「タイトル(表題)」をつけましょう。

ここには、タイトルとして、たんに「秘密保持契約書」と書きます。

なお、他の書き方として、この後に契約する予定の契約と関連付けて、「秘密保持契約書(●●●契約に関して)」と記載する方法もあります。

いずれでも構いません。

(2)契約当事者の特定

    株式会社〇〇〇〇〇(以下、「甲」という。)と株式会社×××××(以下、「乙」という。)とは、甲乙間で相互に開示される情報の取り扱いに関して、以下のとおり合意し、本契約(以下、「本契約」という。)を締結する。なお、本契約の当事者のうち、秘密情報を開示した者又は開示する立場にある者を「開示者」といい、秘密情報の開示を受けた者又は受ける立場にある者を「受領者」という。

まず、この契約書が誰と誰の間での契約なのかを特定する必要があります。

そのため、この秘密保持契約書(NDA)を交わす自社と相手方企業の名前をそれぞれ記載し、それぞれを「甲・乙」と書きます。

そのうえで、秘密情報を「開示する側」と「受け取る側」のそれぞれについて、前者を「開示者」とし、後者を「受領者」とする、という定義を書いてください。

甲・乙と書けば足りるのではないか?と思われるかもしれません。ですが、甲・乙のそれぞれが、秘密情報を開示する立場(=開示者)と受領する立場(=受領者)になりえることから、甲・乙とは別に、このように書くことが必要になります。

(3)目的

    • 第1条(目的)

 

    • 本契約は、甲及び乙が以下の目的(以下、「開示目的」という。)に関連して、甲乙間で相互に開示する秘密情報の機密保持に関する取り扱いを定めるものである。

開示目的:新規取引検討にかかる各種情報の授受

次に、秘密保持契約書(NDA)を交わす「目的」を書きます。

例えば、「●●サービスの業務委託の可否を検討するため」といった記載や、ひな形のように、「新規取引検討にかかる各種情報の授受のため」という記載です。

目的の記載は、具体的に書くのがポイントです。

目的を書く意味は、2つあります。

①目的がない場合、「どの契約」に関する秘密保持契約書(NDA)なのかがあいまいになります。それによって、仮に秘密情報が漏洩された場合に「漏洩した情報については、秘密保持契約書をかわしていないから、義務違反にはならない」という反論を許してしまうからです。

②開示する秘密情報の「目的外利用を禁止する」ためです。そもそも「目的」が書かれていなければ、目的外での利用を禁止することはできないからです。

(4)「秘密情報」の定義

①秘密情報とは

    • 第2条(定義)

 

    本契約において「秘密情報」とは、本契約有効期間中、開示目的に関連して、開示者が受領者に対して開示する技術、営業、業務、財務、組織、その他の事項に関する一切の情報(文書,電子ファイル,口頭その他の媒体のいかんを問わない。)をいう。

相手方に漏らされては困る「秘密情報の範囲(=定義)」を書いてください。

「秘密情報」に含まれますよ、と定義した情報以外の情報については、仮に、相手方が漏洩したとしても、契約違反は問えません。

そのため、

  • どういった情報を秘密情報に含め
  • どういった情報を秘密情報から除外すべきか

をきっちり検討して、秘密情報の定義を書くのがポイントです。

冒頭のひな形は、口でしゃべった情報もすべて秘密情報に含まれるとしているため、秘密情報の範囲を広くしたものです。

反対に、以下の例のように、情報を開示する過程で、「今から開示する情報が秘密情報です。だからしっかり管理してくださいね」ということを「書面(⇔口頭)」で伝えた情報のみを秘密情報にする、という形で、秘密情報の範囲を狭くすることもできます

    本契約において「機密情報」とは、本目的(次条参照)に関して、開示者が被開示者に対して開示する情報のうち、(1)文書その他の媒体(電磁的又は電子的媒体を含むが、これに限らない。)上に、「秘」「Confidential」その他の方法で、機密である旨を明示した情報、又は(2)口頭で開示された情報で、開示後14日以内に開示者が別途書面で要約した上で機密である旨を被開示者に通知した情報、のいずれかに該当する情報をいう。

受領者の目線からみると、管理コストを考え、秘密情報を狭めたいはずですので、この例文を使って書くことになります。

②秘密情報の例外

    • 前項の規定にかかわらず、受領者が次の各号のいずれかに該当することを書面その他の方法により証明できる情報については、秘密情報から除かれるものとする。

 

    • (1) 開示者より開示を受ける以前又は受けた時点ですでに所有していた情報

 

    • (2) 開示者より開示を受けた時点ですでに公知の情報

 

    • (3) 開示者より開示を受けた後に、受領者の責によらず公知となった情報

 

    • (4) 正当な権利を有する第三者から機密保持の義務を負うことなく適法に入手した情報

 

    • (5) 開示者の秘密情報を利用することなく独自に開発又は創作した情報

 

    (6) 秘密情報から除くことを甲乙相互に確認した情報

もっとも、あらゆる情報を秘密情報とされたのでは、受領者の負担が重すぎる場合も考えられます。

そこで、例外的に、秘密情報から除外される情報をいくつか列挙するのがポイントです。

ひな形に書かれた(1)~(6)は、いずれも「秘密保持義務を負わせるのが不当といえる情報」です。

例えば、(6)の「秘密情報から除くことを甲乙相互に確認した情報 」が秘密情報にはならないのは当然ですよね。

この例外規定は、ある意味テンプレートですので、例文をそのまま使うのはアリです。

(5)目的外使用の禁止

    • 第3条(目的外使用の禁止)

 

    受領者は、事前に開示者の書面(電子メール等の電磁的方法を含む。)による承諾を得ることなく、秘密情報を開示目的以外に使用してはならない。

開示する秘密情報の「目的外利用の禁止」規定を書きましょう。

もともと秘密保持契約書(NDA)を交わす理由は、相手方に伝えた秘密情報がその取引以外に流用されたり、漏洩してしまうのを回避するためです。

ところが、「目的外での利用を禁止する」との一文がないと、相手が秘密情報を悪用して、自社サービスに流用したとしても、これに対してクレームを入れたり責任を問うことができなくなってしまうのです。

そのため、第2条の「目的」と合わせて、「目的外利用の禁止」を書いておく必要があるのです。

(6)複製(コピー)について

    • 第4条(複製等の制限)

 

    受領者は、事前に開示者の書面(電子メール等の電磁的方法を含む。)による承諾を得ることなく、開示者より開示された秘密情報の全部又は一部の複製、複写及び改変を行ってはならないものとする。なお、受領者は、複製物、複写物及び改変物についても秘密情報として取り扱うものとし、他の資料と明確に区別してこれらを厳重に保管しなければならない。

開示した秘密情報が含まれている各種資料について、受領者による複製等(コピーなど)を認める、認めないの一文を書きましょう。

コピーを広く認めると、秘密情報が漏れやすくなりますし、反対に、コピーを制限すれば、秘密情報が漏洩する確率は、低くなります。

この点は、取引当事者のパワーバランスによって決まるところですが、ひな形では、「原則、コピーはダメ。例外として、開示者の承諾があれば複コピーはOK」という形で、コピーを比較的制限する形にしています。

反対に、受領者から見た場合、コピーは広く認めてもらいたいはずですから、「原則、コピーはOK」といった書きぶりにしておく必要があります。

(7)秘密保持義務

    • 第5条(秘密保持)

 

    • 1.受領者は、秘密情報を善良なる管理者の注意義務をもって機密として管理保持するものとし、事前に開示者の書面(電子メール等の電磁的方法を含む。)による承諾を得ることなく、当該秘密情報を開示対象者以外の第三者に開示又は漏洩してはならない。

 

    • 2.前項の規定にかかわらず、受領者は、裁判所、検察又は警察の適法・適式な命令、要求及び正式な手続に基づき、秘密情報の開示を義務付けられた場合、当該命令等に従うために必要な限度において、当該秘密情報を開示することができる。但し、この場合、受領者は、事前に開示する部分について開示者に通知するものとし、情報の秘密が保持されるよう最善の努力をした上で開示者の合理的な指示に従うものとする。

 

    • 3.受領者は、開示目的のために知る必要のある最小限の自己の役員、従業員並びに弁護士、公認会計士、税理士、弁理士、等の法令上の守秘義務を負う者に対してのみ秘密情報を開示することができる。

 

    • 4.前項の場合、受領者は、秘密情報を開示した自己の役員、従業員に対し、本契約に基づき自己が負担する義務と同等の義務を負担させるものとし、当該役員、従業員が本契約のいずれかの規定に違反した場合には、当該役員、従業員と連帯して責を負うものとする。

 

    5.受領者が、事前に開示者の書面(電子メール等の電磁的方法を含む。)による承諾を得て、第三者に秘密情報を開示することができる。この場合、受領者は、提供する秘密情報の内容、提供日、提供方法、提供場所及び提供の相手型等,秘密情報の提供を特定するに必要な事項につき、書面(電子メール等の電磁的方法を含む。)により、事前に開示者に通知するものとする。また、受領者は、秘密情報を開示した当該第三者に対し、本契約に基づき自己が負担する義務と同等の義務を負担させるものとし、当該第三者が本契約のいずれかの規定に違反した場合には、当該第三者と連帯して責を負うものとする。

秘密情報を受け取った側が、「どういった内容の義務を負うのか」を書きます。

秘密保持契約書(NDA)を交わした最大の目的は、秘密情報が漏洩するのを防ぐことにありますから、まずは、①秘密情報を厳重に管理する義務を負担させます。

ただし、契約後に、秘密情報を弁護士などの専門家やグループ会社の関連企業に開示したり、裁判所といった公的な機関に開示するなど、様々な理由で、秘密情報を第三者に開示することが想定されます。

そのため、②例外的に秘密情報を第三者に開示できるケースを列挙して書いておく必要があります。

ただし、③専門家は別としても、関連企業などに開示する場合には、秘密をきちんと守ってくれる保証がないため、こういった者に開示する場合には、受領者と同じく秘密保持義務を負担させることを約束させる必要があります。

このように、受領者が負担する義務の内容については、①~③を意識するのがポイントとなります。

なお、これらの規定は、ある意味テンプレートですので、ひな形をそのまま使うのはアリです。

(8)秘密情報等の返還・廃棄

    • 第6条(機密書類等の返還)

 

    本契約が終了したとき、開示目的が中止されたとき、もしくは終了したとき又は時期の如何を問わず開示者の請求があったときは、受領者は、遅滞なく秘密情報、秘密情報を記載又は包含した書面及び記録媒体等並びにそれらのすべての複製物、複写物及び改変物を開示者に返還し、又は開示者の合理的な指示に従って、これらを廃棄又は消去するものとし、その後これらを一切保持しないものとする。廃棄又は消去した場合には、受領者は、これらをすべて廃棄又は消去した旨を証する書面(電子メール等の電磁的方法を含む。)を速やかに開示者に交付するものとする。

秘密保持契約の有効期間が終了した際や、開示した秘密情報の返還を求めた場合に、秘密情報が記載された資料について、これを返還(or 廃棄)する、旨の一文を書く必要があります。

これは、契約期間終了後などに、受領者の手元に秘密情報が残ってると、漏洩したり、あるいは、不正に流用されるリスクがあるためです。

なお、秘密情報の「廃棄」を選択した場合、受領者の方で、本当に秘密情報を廃棄したかどうか、その保証がありません。

そこで、廃棄する場合には、「当社は、秘密情報を破棄したことを証明します」という「破棄証明書」を受領者側から差し入れてもらいましょう。

※破棄証明書のひな形は、こちらからダウンロードしてご利用ください。
【ひな形・テンプレート】破棄証明書

(9)義務がないこと

    • 第7条 (義務の不存在)

 

    • 甲及び乙は、次の各号に定める事項を、相互に確認するものとする。

 

    • 1.本契約の締結は、開示者の受領者に対するいかなる情報の開示も義務付けるものではないこと。

 

    • 2.本契約に基づく受領者への秘密情報の開示が、何らかの取引を開始する合意としての効力を有するものではなく、また、開示目的において言及されている取引と同一又は類似の取引を本契約に定める義務を遵守した上で、自ら又は第三者との間において、検討及び実行することを妨げるものではないこと。

 

    • 3.秘密情報は現状有姿で開示者から受領者に対して提供され、開示者は受領者に対し、明示黙示を問わず、秘密情報の内容が第三者の権利を侵害していないことを保証する義務を負わないこと。

 

    4.本契約に基づく秘密情報の特定目的適合性、正確性、最新性、適法性等並びに受領者による秘密情報の利用及びその結果について何らの保証も行う義務を負わないこと。

秘密保持契約書(NDA)を交わしたとしても、以後の取引を開始する義務はないなど、「義務化されたら困ること」を列挙して書きましょう。

ある意味テンプレートですので、ひな形をそのまま使うのはアリです。

(10)保証

    • 第8条 (保証)

 

    開示者は受領者に対し、本契約に基づき秘密情報を開示する適法な権限を有していることを保証するものとする。

開示者側が、秘密情報を開示できる権利を持っていることを保証させる一文を書く必要があります。

これは受領者側の目線になりますが、開示者が、仮にこの権利を持っていなかった場合、本当の権利者から、受領者が訴えられるといったリスクがあるからです。

(11)知的財産権

    • 第9条(知的財産権)

 

    • 1.本契約に基づく、開示者から受領者への秘密情報の開示により、秘密情報に含まれる開示者又は第三者のいかなる知的財産権(著作権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権をいい、これらの権利を取得し、又は登録等を出願する権利、その他のアイディア、ノウハウ、コンセプト及び技術情報等を含む。著作権については、著作権法第27条及び同第28条に定める権利を含む。以下本契約において同じ。)その他一切の権利も受領者に移転又は許諾されるものではない。

 

    • 2.受領者は、開示者より開示された秘密情報の中に、知的財産権又は知的財産権になりうる情報が含まれていた場合であるか否かを問わず、リバースエンジニアリング、逆コンパイル、逆アセンブル等の解析行為、ソースコード、アルゴリズム、ノウハウ等の情報を取得しようとする行為等、開示者の権利又は利益を侵害する行為を自ら行わず、いかなる第三者にもこれを行わせないものとする。

 

    • 3.受領者が、開示目的の過程において、前項に違反することなく、開示者より開示された秘密情報を利用することにより、技術上の発明、考案、ノウハウ等の技術的成果を得るに至った場合は、直ちにその旨を開示者に報告するものとする。

 

    4.前項の技術的成果に係る一切の知的財産権の帰属及び取扱いについては、甲乙別途協議の上、これを決定するものとする。なお、当該技術的成果も、かかる協議により帰属が決定するまでの間、秘密情報とみなすものとする。

①提供された秘密情報の中には、特許などの知的財産権に関する情報が含まれることもありますが、その情報提供によって、知的財産権が相手方に移転するわけではないことの確認規定と、
②提供された秘密情報を合法的に利用して、何らかの発明をするなどの「成果物」がある場合、その成果物に関する権利を開示者と受領者のどちらが取得するのかについても、書いておく必要でがあります。
ひな形の例では、②について、協議をしたうえで、成果物の所在を決定するという内容になっていますが、この点を開示者に有利に変更して、「技術的成果に係る一切の知的財産権については、開示者に帰属する」と書くこともできます。

(12)漏洩時の措置

    • 第10条(漏洩時の措置)

 

    • 1.秘密情報が第5条に規定する場合を除き、被開示者以外の第三者に漏洩した又はその疑いがあると認めたときは、発生原因の如何にかかわらず、受領者は開示者に対し、直ちに状況を報告するとともに、漏洩の有無等を調査し、漏洩の事実を認めるときはその原状回復と再発防止に必要な措置を講じなければならない。

 

    2.前項の場合において、受領者は、開示者の合理的な指示に従うものとする。

開示した秘密情報が漏洩した、あるいは、その疑いがある場合に、①状況報告を求める権利、②調査をさせる権利、③再発防止措置策を請求できる権利を開示者に認める、旨の一文を書いておきましょう。

これは、秘密情報が漏洩した(or その疑いがある場合)場合に、そのまま放置すると損害がどんどん拡大してしまいます。そのため、損害がこれ以上拡大しないようにするために、①~③の権利を開示者に認める必要があるからです。

(13)権利義務の譲渡の禁止

    • 第11条(権利義務の譲渡の禁止)

 

    甲及び乙は、事前に相手方の書面による承諾を得ることなく、本契約により生じた権利及び義務の全部又は一部、もしくは本契約上の地位を第三者に譲渡し、担保に供し、承継させ、又はその他の方法により処分をしてはならない。

当事者は、秘密保持契約書(NDA)を交わしたことによって得た権利・義務を、相手方のOKサインを得ずに勝手に第三者に譲ることはできない、と書きましょう。

これが許されてしまうと、例えば、開示者の知らないところで、受領者が秘密保持義務を第三者に移転させており(裏返しとして、受領者は義務から免れる。)、その結果、義務を負っていない受領者を介して、秘密情報がダダ漏れになる、といった事態が生じるリスクがあるからです。

(14)損害賠償

    • 第12条(損害賠償)

 

    • 1.受領者の責に帰すべき事由により、秘密情報が漏洩し、これにより開示者に損害を与えたときは、受領者は、開示者に対して損害の賠償をしなければならない。

 

    2.甲及び乙は、前項に定めるほか、本契約に違反し相手方に損害を与えたときは、当該違反行為により被った損害の賠償をしなければならない。

秘密情報が漏洩してしまった場合に、受領者に対して賠償請求できる、との一文を書く必要があります。

損害賠償の義務規定を書いておくことで、

  • 実際に漏洩した場合に賠償してもらえるということ
  • 心理的な引き締め効果によって、漏洩の可能性を低める

メリットがあります。

なお、損害賠償の「額」について、予め「金〇〇円」と記載する、あるいは、金額の「計算方法」を書いておく方法も考えられます。

(15)差止

    • 第13条(差止)

 

    • 1.受領者が本契約に違反したときは、開示者は受領者に対し、受領者に開示した秘密情報の使用の差止請求をなすことができる。

 

    2.前項の規定は、開示者が受領者に対して損害賠償の請求をなすことを妨げるものではない。

秘密情報が漏洩してしまった場合に、前条の賠償請求と合わせて、受領者に対し、秘密情報の使用の差止を請求できる、旨を書いておくと便利です。

差止の規定を書いておくことで、①被害の拡大を防ぐとともに、②賠償義務の記載と同じく、心理的な引き締め効果によって、漏洩の可能性を低めるメリットがあります。

(16)契約の有効期間・残存条項

    • 第14条(契約の有効期間)

 

    • 1.本契約の有効期間は契約締結日にかかわらず20●●年●月●日から1年間とする。但し、契約満了1ヶ月前までに甲乙いずれからも書面による申し入れがない限り、さらに1年間延長するものとし、それ以降も同様とする。

 

    2.本契約第2条乃至第13条及び第15条乃至第17条の規定は、本契約終了(終了事由を問わない)後においても引き続き有効とする。

  • 秘密保持契約書(NDA)の「有効期間
  • 契約終了後も例外として、秘密保持契約書(NDA)の効果を持続させることができるとの「残存条項

を書く必要があります。

有効期間」とは、契約が開始してから終了するまでの期間であり、終了時期を迎えると、秘密保持契約の効果がなくなってしまいます。

受領者からみると、有効期間は短くした方が有利で、開示者からすると、長ければ長いほど有利(もっと言うと、有効期間なんてない方がいい。)になるので、有効期間(〇〇年)の長短は、取引のパワーバランスによって決まります。

もっとも、開示者から提示する秘密保持契約書(NDA)のひな形に、あえて、開示者に不利な「有効期間」の定めを設ける理由は本来ないはずです。

では、なぜ、秘密保持契約書(NDA)の有効期間を設けるのでしょうか?

それは、秘密保持契約書(NDA)の有効期間を設けないと、法律上の理屈として、「期間の定めのない」契約に該当し、受領者側から、いつでも、秘密保持契約を解約できる、と言われるリスクがあるからです。

この解約リスクを回避するために設けるのが「残存条項」です。

残存条項」とは、秘密保持契約書(NDA)が終了した後も、引き続き、一定の期間、契約の効力(秘密保持義務・賠償義務など。)を存続させる規定をいいます。

これを「有効期間」の規定とセットで記載することで、開示者としては、いつでも解約されるリスクを回避しつつ、受領者の義務規定(秘密保持義務・賠償義務など。)を存続させることができるわけです。

(17)反社条項

    • 第15条(反社会的勢力の排除)

 

    • 1.甲及び乙は、相手方に対し、次の各号のいずれかにも該当せず、かつ将来にわたっても該当しないことを表明し、保証する。

 

    • (1) 自ら又は自らの役員もしくは自らの経営に実質的に関与している者が、暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標ぼうゴロ又は特殊知能暴力集団等その他反社会的勢力(以下総称して「反社会的勢力」という。)であること。

 

    • (2) 反社会的勢力が経営を支配していると認められる関係を有すること。

 

    • (3) 反社会的勢力が経営に実質的に関与していると認められる関係を有すること。

 

    • (4) 自ら若しくは第三者の不正の利益を図る目的又は第三者に損害を加える目的をもってするなど、反社会的勢力を利用していると認められる関係を有すること。

 

    • (5) 反社会的勢力に対して資金等を提供し、又は便宜を供与するなどの関与をしていると認められる関係を有すること。

 

    • (6) 自らの役員又は自らの経営に実質的に関与している者が、反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有すること。

 

    • 2.甲及び乙は、相手方に対し、自ら次の各号のいずれかに該当する行為を行わず、又は第三者を利用してかかる行為を行わせないことを表明し、保証する。

 

    • (1) 暴力的又は脅迫的な言動を用いる不当な要求行為。

 

    • (2) 相手方の名誉や信用等を毀損する行為。

 

    • (3) 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害する行為。

 

    • (4) その他これらに準ずる行為。

 

    • 3.甲又は乙は、相手方が前二項のいずれかに違反し、又は虚偽の申告をしたことが判明した場合、契約解除の意思を書面(電子メール等の電磁的方法を含む。)で通知の上、直ちに本契約を解除することができる。この場合において、前二項のいずれかに違反し、又は虚偽の申告をした相手方は、解除権を行使した他方当事者に対し、当該解除に基づく損害賠償を請求することはできない。

 

    4.前項に定める解除は、解除権を行使した当事者による他方当事者に対する損害賠償の請求を妨げない。

反社条項」を記載する必要があります。

反社条項」とは、当事者が、反社会的勢力、簡単に言うと、ヤクザなどの暴力団や、それと似たような怖い方々である場合には、一方から、①契約を解除できること、②損害賠償を請求できること、などを規定した条項を意味します。

この規定は、ある意味テンプレートなので、ひな形のまま使用するのはアリです。

(18)準拠法・裁判管轄

    • 第16条(準拠法、管轄裁判所)

 

    • 1.本規約の有効性,解釈及び履行については,日本法に準拠し,日本法に従って解釈されるものとする。

 

    2.当社と利用者等との間での論議・訴訟その他一切の紛争については、訴額に応じて、東京簡易裁判所又は東京地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とします。

  • どこの国の法律が適用され(これを「準拠法」といいます。)、
  • どこの国にある裁判所で闘うことになるのか?(これを「裁判管轄」といいます。)

に関する記載が必要です。

日本企業同士の取引であれば、準拠法の問題は生じにくいです。しかし、オフショア開発などで、海外の企業と取引をしたり、クロスボーダーM&Aで海外の企業を買収するケースでは、「準拠法」の問題が生じます。

日本の法律ですら、「日本語でおk」(=難解で理解しづらい。)なのに、海外の法律は、なおさら難しく、理解なんて到底できないですよね。

また、日本の企業間でも、裁判管轄についての問題は、常に生じえます。

例えば、東京と大阪の企業が裁判を起こすとなった場合、大阪の裁判所で闘うのか、それとも、東京の裁判所で闘うのかの綱引き合戦が始まります。なぜなら、東京の企業がいちいち裁判のたびに、大阪の裁判所へ出頭するとなれば、弁護士の交通費(+日当)がかかってしまうからです(※その費用もバカになりません。)。

そのため、例えば、東京の企業であれば、

準拠法:日本の法律
裁判管轄:東京の裁判所(霞が関 or 立川)

との規定を設けるのがポイントになります。

(19)協議事項

    • 第17条(契約に定めのない事項)

 

    本契約に定めのない事項及び本契約の条項に関して疑義を生じたときは、甲乙双方誠意をもって協議し解決するものとする。

秘密保持契約書(NDA)に書ききれなかった事項については、当事者で話し合った上で決めましょう、という「協議事項」を書きましょう。

協議事項は、秘密保持契約書(NDA)に限らず、多くの契約書に置かれるテンプレートなので、ひな形の記載をそのまま使用するのはアリですね。

(20)日付と署名押印

    • 本契約の締結を証するため本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。

 

    • ●●●●年●●月●●日

 

    • 【甲】

 

    • 住所:

 

    • 氏名:

 

    • 【乙】

 

    • 住所:

 

    氏名:

最後に、①秘密保持契約書(NDA)を締結した年月日を記載し、②契約当事者の署名・押印が必要です。

年月日については、秘密保持契約書(NDA)の有効期間の起算点にもなるので、正確に記載してください。

署名・押印については、

    • A案) 署名のみ
    • B案) 署名+押印
    • C案) 記名+押印

※「記名」とは、スタンプなど、本人の手書き以外のもの。

の3つの方法がありますが、一般的なのは、B・C案です。

そして、契約の一方当事者の署名(記名)・押印しかない場合には、秘密保持契約は不成立となりますので、注意しましょう。

6 小括

まとめ

以上が、秘密保持契約書(NDA)の書き方になります。

指摘したポイントは、いずれもケースによって内容が変わりえるものですから、個別のケースごとに、ケースに沿った形で、秘密保持契約書(NDA)の内容をカスタマイズしていく必要があることには留意が必要です。

7 秘密保持契約書(NDA)作成の流れ

秘密保持契約書(NDA)作成の流れ

では最後に、秘密保持契約書(NDA)を作成する場合の実際の流れ・フローを確認します。

(1)契約内容を話し合う

まず、秘密保持契約書(NDA)を交わす場合、通常、開示者・受領者のいずれかの企業が持つフォーマットをベースに、主に、以下のポイントについて話し合うことになります。

  • どちらの当事者がより多く秘密情報開示するのか
  • 秘密情報の範囲はどうするのか?
  • 契約する目的をどう定めるか?
  • 秘密情報が記載された資料のコピーは認めるか?
  • 有効期間終了後の秘密情報は返却させるか?廃棄させるべきか?
  • 違反した場合に、損害賠償・差止を認めるか?
  • その他印紙代など

なお、話し合うべき内容の詳細を知りたい方は、「【ひな形付】秘密保持契約書(NDA)とは?7つのポイントを弁護士が徹底解説」をご参ください。

(2)秘密保持契約書の作成・チェック作業

秘密保持契約の内容について話しがまとまったら、その内容を秘密保持契約書(NDA)に落とし込んでいく必要があります。

このとき、契約当事者のうち、いずれが持つフォーマットを使用するのか?という問題が起きます。

この点は、パワーバランスによって決まりますが、可能であれば、自社フォーマットを作成して利用しましょう。

なぜなら、自社フォーマットの方が、取引上のイニシアティブをとれるため、自社に有利な内容にすることができるからです。

他方で、やむをえず、先方のフォーマットを使用する場合には、自社に不利な内容になっていないかをチェックしていく必要があります。

(3)修正作業の往復

秘密保持契約書(NDA)のフォーマットを作成、あるいは、チェックが一旦終了したら、次は、その「ファーストドラフト」のデータを先方にメールに添付するなどして送ります。

このファーストドラフトでFIXすればよいですが、通常は、相手方から修正依頼がきます。

修正依頼が妥当なのかを確認し、これで問題がなければFIXとなります。

これに対して、修正依頼に納得できない場合には、さらに加筆・修正をした「セカンドドラフト」を相手方に送ることになります。

この繰り返しを経て、FIXとなれば、あとは、当事者それぞれの、代表者による「(4)署名・押印の作業」をするだけとなります。

(4)署名・押印の作業

秘密保持契約書(NDA)の内容がFIXしたら、最後に、当事者それぞれの代表者が「署名・押印」をします。

この際、全く同じ内容の秘密保持契約書(NDA)の原本を2通作成し、2通それぞれについて、代表者が署名・押印します。

そのうえで、当事者のそれぞれが、原本を1通ずつ保管する形になります。

また、秘密保持契約書(NDA)の枚数が2枚以上(製本が必要)になるケースでは、各ページのつなぎ目のところに、当事者がそれぞれ代表者を押印します(=「契印」)。

原本の2通それぞれについて、契印が必要です。

【契印のイメージ図】

契印の押す場所

出典:http://hankoman.jp/wariin.php

契印をする理由は、契約書の中身が差し替えられたりするリスクを回避するためです。

契印の作業が済めば、秘密保持契約書(NDA)を作る作業はここで終わりとなります。

後は、秘密保持契約書(NDA)を踏まえて、そのあとの本体の取引内容を検討し、締結するか否かなどを判断していくことになります。

(5)印紙代は不要

なお、契約書を作成する場合、印紙代が必要になるケースもありますが、秘密保持契約書(NDA)については、印紙代は不要とされています。

8 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下のとおりです。

  • 秘密保持契約」(英語: Non-Disclosure Agreement、略称:NDA)とは、自社が持つ情報の中で、外部に漏洩してしまうとヤバい情報(=秘密情報)を相手企業に渡す場合に、これを漏らさないように相手方を拘束する契約書のこと
  • 秘密保持契約書が必要な理由は、取引先と安心して契約をするため
  • 秘密保持契約書が必要な場面は、主に、業務委託契約やM&Aなどの場合
  • 秘密保持契約書の書き方のポイントは、20項目ある
  • ひな形は、個別のケースに応じてカスタマイズすることが必要

※【ひな形の注意事項】

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  • 各種ひな形をご利用いただけるのは、法人様又は法律家以外の個人の方のみに限り、弁護士・司法書士・行政書士などのいわゆる士業の方のご利用は一切禁止しておりますので予めご了承ください。
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