キャッシュバックの法律規制とは?景表法3つのポイントを徹底解説!

はじめに
近年ちまたでよく見る「キャッシュバックキャンペーン」。
消費者に分かりやすく「お得感」を演出することができ、集客にも効果的なことから、多くの企業がこれを取り入れていますよ。
みなさんもキャッシュバックにつられて携帯電話を購入したり、インターネットに加入したことがあるのではないでしょうか?
さて、この「キャッシュバックキャンペーン」を実際に行おうとした場合、事業者は「景表法」という法律に気を付けなければいけません。
キャッシュバックは現金が動くものであるため、何かしら法律の規制があってもおかしくないですよね。
今回は、実際にキャッシュバックキャンペーンを行おうと考えている事業者の方へ向けて、キャッシュバックの内容や、ビジネス上のメリット・デメリット、キャッシュバックと景表法の関係について具体的に分かりやすく解説していきます。
この記事を執筆したのは

- 弁護士・中小企業診断士 勝部 泰之
- 注力:知的財産権・著作権/ライセンス、ブロックチェーン、データ・AI法務
GWU Law LL.M.(知的財産法)
事業の成長とリスクを両立する実務寄りの助言に注力しています。 - 詳しいプロフィールはこちら
1 キャッシュバックとは?

「キャッシュバック」とは、商品を買ったりサービスを利用する中で、一定の条件をみたした場合に、事業者から利用者へ現金を払い戻すことをいいます。
読んで字の如く、現金(キャッシュ)を戻す(バック)ことからキャッシュバックといいます。
例えば、インターネットや携帯電話の契約などで「今、〇〇の通信業者と契約すれば、もれなく20,000円をキャッシュバックします!」といったキャンペーンを行なうような場合です。
「キャッシュバック」は、現金がそのまま戻ってくるため、利用者に対して「お得感」を演出することができます。
そのため、利用者を取り込みやすいというメリットがあり、集客をする上でもとても有効な手段として、多くの事業者がキャッシュバックキャンペーンを取り入れています。
2 キャッシュバックの仕組み

キャッシュバックの仕組みは大きく分けて2つあります。
- 購入と同時にキャッシュバック
- 後日キャッシュバック
1つ目は、商品を買ったその場でキャッシュバック分が支払われるタイプです。 冒頭の例でいえば、商品をレジで買ったときに、その場でキャッシュバック分の2000円について直接手渡されるパターンです。
2つ目は、キャッシュバック分については後日支払われるタイプです。
例えば、インターネットの契約をした場合に、一定の期間契約を継続すれば店頭や振り込みでキャッシュバック分の現金を支払ってもらえるようなパターンです。
ただ、最近では、ポイントカードを導入し、たまったポイントを現金としてキャッシュバックするケースも増えています。
【注:ポイント・ギフト券等で返還する場合、設計によっては「値引き」ではなく「景品」や資金決済法上の前払式支払手段に該当し得ます。現金以外での返還は要注意です。】
3 キャッシュバックのメリット・デメリット

キャッシュバックを行う場合、お客さんから一度お金を払ってもらってい、その後、一定の金額を払い戻す形をとります。「こんな面倒なことをしなくても、最初から値引きして売ればいいのに・・・」と思いますよね。でも、事業者がわざわざこのようなやり方をするのは、もちろんメリットがあるからです。一方、キャッシュバックにはデメリットもあります。
順番に確認していきましょう。
(1)キャッシュバックを行うメリット
①安売りのイメージをつけずに商品価格を維持できる
何でもかんでも値引きをすると、消費者は「安くて当たり前!」と、値引きが前提の認識になってしまいます。 キャッシュバックという方法をとれば、販売価格は変えないまま、消費者はお得感を感じることができます。
②最初に手にする金額が増える
キャッシュバックを取り入れる場合、キャッシュバック分については後日入金の形をとっている事業者が多いようです。 そうすれば、値引きをする場合よりも初めに手にする金額は多くなるため、すぐにキャッシュが欲しい事業者にとってはメリットがあります。
③顧客情報を集めることができる
キャッシュバックを後日入金の形にすれば、利用者の口座情報が必要となります。 合わせて簡単なアンケートも行うようにすれば、通常よりもより多くの顧客情報を集めることができます。
④実際はキャッシュバックしなくてもいい可能性がある
キャッシュバックを後日入金の形にすれば、中には面倒になったり忘れたりして支払いの申し出をしてこない人もいるでしょう。 そうすると、最初から値引きした場合にに比べて、実際にはキャッシュバックをしなくて済んでいる分、事業者側の利益を上げることができます。
(2)キャッシュバックを行うデメリット
他方で、キャッシュバックにもデメリットがあります。
①感覚的に即効性のあるお得感はない
初めから値引きされている場合は、その価格を見て「安い!今買おう!」という即効性があります。ですが、キャッシュバックの場合、消費者は「まぁお金が戻ってくるなら買おうかなぁ・・・・」という程度には購買意欲をそそることできるのですが、お得感をそこまで強く打ち出せないというデメリットがあります。 後日入金の形をとる場合にはこれが顕著になります。
②入金が面倒くさい
初めから値引きをする場合には、その場で価格を安くすればそれで終わりです。 ですが、キャッシュバックの場合は、その場でいちいち現金を払い戻す作業や、後日入金する作業が増えるため事業者にとっては手間・作業が増えるデメリットがあります。
③キャッシュバックするための現金が必要
キャッシュバックを後日入金の形にする場合、最初に支払われたお金を事業資金などに使ってしまった場合、改めてキャッシュバック分についての資金繰りをする必要があります。
以上のように、事業者がキャッシュバックキャンペーンを行うにあたっては、メリット・デメリットの両方があります。
両者をきちんと把握したうえで、本当にキャッシュバックキャンペーンを行うべきなのか判断する必要があります。
以上を踏まえて、次の項目から、キャッシュバックの法律規制について解説していきます。
4 キャッシュバックと景表法

さて、実際に事業者がキャッシュバックを行う場合、「景表法」という法律がかかわってきます。
(1)景表法とは
「景表法」とは、商品そのものの品質や価格ではなく、大げさな広告やおまけ(景品)によって不当に消費者を釣ろうとするやり方を取り締まる法律です。 言い換えれば、商品やサービスについて、消費者の適切な判断が捻じ曲げられることのないよう、企業が守らなければならないルールが「景表法」です。
つまり、景品表示法は「不当な表示の禁止」と「景品類の提供の制限」により、消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害する行為を防止するための法律なのです(景品表示法1条・4条・5条)。
景表法では、大きく分けて2つのルールを定めています。
- 景品規制(豪華すぎるおまけを禁止するもの)
- 表示規制(ウソや大げさな広告を禁止するもの)
このうち、キャッシュバックにかかわるものは「景品規制」になります。
景品規制について詳しく知りたい方は「景品(おまけ)にも法律の規制がある!?景表法4つのポイントを解説」を、表示規制について詳しく知りたい方は「盛りすぎ広告に注意!5分でわかる景表法に違反しないためのポイント」をご覧ください。
(2)景品規制
次に、景品規制の内容について解説します。
「景品」と聞いてみなさんが想像するのは、おまけや粗品・賞品だと思いますが、景表法では「景品」の定義について以下のように定めており、この定義に当てはまらないおまけについては、景品規制がからないことになります。
- お客を誘引するための手段として
- 商品やサービスの取引きとともに提供する
- 物やお金、その他の経済的な利益
- 以上の3つにあてはまるもののうち、国によって指定されているもの
以上の4つの要件すべてにあてはまるものは、景表法上の「景品」として規制の対象となります。 規制されると、キャンペーンで提供する景品(おまけ)の価格などに上限が付されることになります。
ただ、お客さんからみれば、景品(おまけ)がもらえれば、嬉しいことはあっても、特段不利益を受けるわけではないのに、なぜ規制されるのでしょうか?
それは、景品(おまけ)によって私たちが正しい判断をすることができなくなる可能性があるからです。
例えば、100円のガムを買った人にはもれなくハワイ旅行がプレゼントされたとしたら、ほとんどの人がガムそのものの価値を重視するのではなく、おまけにのハワイ旅行につられてガムを買うことになりますよね。
これがエスカレートすると、企業は商品そのものではなく景品(おまけ)の豪華さによって競争をしていしまい、豪華すぎる景品(おまけ)によって私たちの判断はゆがめられてしまいます。
このような事態にならないように、景表法によって景品(おまけ)の上限を設定するなどの規制をかけているのです。
(3)景品にあたらない例
次に、一見すると「景品」にあてはまりそうでも、実は「景品」にあてはまらないものを紹介します。
以下のいずれかにあてはまるおまけは景表法上の「景品」にはあたらないため、規制の対象とならず、価格などの上限はありません。
- 値引き
- 取引き本来の内容となるもの
- 仕事の報酬としてもらえるもの
- 本体商品・サービスと同じものを提供する場合
- 賞品を組み合わせて販売することが商習慣となっているもの
- 商品を組み合わせることによって独自の機能や効能を持つ商品
いずれも、「おまけの良さに釣られて、不要な商品を買ってしまう」というリスクに乏しいことから、景品にあたらない、とされています。 このように、一見すると景品にあてはまりそうなものでも、該当しない例があるため、何らかのおまけやキャンペーンを実施する際には、「景品」の定義のほか、「景品に当てはまらないもの」に該当しないかのチェックが必要になります。 後程詳しく解説しますが、この中でキャッシュバックにかかわるものが「値引き」になります。
5 キャッシュバックは景品にあたるか?

(1)キャッシュバックと「景品」
景品規制の概要を解説してきましたが、キャッシュバックが景表法上の「景品」にあたれば、規制の対象となります。 景表法上の「景品」とは、以下の要件をすべてみたすもののことをいいましたね。
- お客を誘引するための手段として
- 商品やサービスの取引きとともに提供する
- 物やお金、その他の経済的な利益
- 以上の3つにあてはまるもののうち、国によって指定されているもの
これをキャッシュバックにあてはめて考えてみましょう。 まず、①お客を誘引するための手段にあたるかついて、キャッシュバックは主にお客さんを集めるための販売促進の1つとして行われるため、この要件にあてはまります。 また、利用者が商品を買ったりサービスを利用したりしたときにキャッシュバックが行われるため、②商品やサービスの取引きとともに提供しています。 さらに、キャッシュバックは現金を利用者に払戻す行為なので、③物やお金・その他の経済的な利益という要件もみたします。
以上より、キャッシュバックは「景品」にあたるようにも思えます。
しかし、「景品」とは、①~③にあてはまるもののうち④国によって指定されているもののことを指しますが、「正常な商慣習に照らして値引きと認められる場合」、つまり「値引き」については、景品に含まれない、ということが「景品の指定に関するガイドライン」において定められています。
したがって、「値引き」は景品にあたらず、規制の対象にはなりません。
適正な「値引き」であれば、それは商慣習として一般的に広く行われていることであって、わざわざ規制する必要がないことがその理由です。
この点、キャッシュバックは、事後的な返金という形をとるものの、トータルで見たときには、価格をディスカウントしたのと同じ効果があります。
そのため、キャッシュバックが「値引き」にあたるのか?が問題となります。
「値引き」にあたるとすれば、キャッシュバックは「景品」にはあたらず、景表法の規制を受けません。
(2)キャッシュバックと「値引き」
ここで、どのようなものが「値引き」にあたるのかを確認しましょう。
「値引き」には、事業者が販売・提供する商品やサービスの価値を下げる効果のあるものが広く含まれるとされています。
具体的には、以下のようなパターンがあります。
-
- これから支払う代金の減額をする場合(例:5個以上買ったら1000円引き)
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- すでに支払った金額の払い戻しをする場合(例:商品購入後、レシートの金額の10%を返金)
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- 買った商品と同じものをもう1つあげる場合(例:CDを2枚買えばもう1枚プレゼント)
要するに、商品の代金から、何らかの形で一定の金額がディスカウントされ、トータルで考えたときに代金額が下がる場合を「値引き」としているのです。
3つ目については少し見方を変える必要があるのですが、3枚分のCDを2枚分の値段で買うことができるため、実質的に1枚分の値段を割り引いているのと同じだ、という捉え方をするんです。(ちなみに、値引きと似た概念に割引券があり、同じように商品やサービスの価値を下げる効果がありますが、これはまた別のカテゴリになります。)
上に挙げた3つのパターンをみると、キャッシュバックは商品購入後に「一定額の現金を払い戻すこと」をいうので、値引きの3類型の中のうち、「2.すでに支払った金額の払戻しをする場合」にあてはまります。
そのため、キャッシュバックは「値引き」にあたり、景表法の規制対象とはなりません。
ただし、現金振込や自社商品購入時に充当できる自社ポイントによるキャッシュバックに比べ、商品券や他社ポイントで還元する場合は、「自社商品の値引き」と評価されず、景品表示法上の景品規制の対象となるおそれが高くなります。現金返還か、少なくとも自社取引で即時充当可能な返還設計が安全です。
(3)キャッシュバックでも「値引き」にならない事例
ただし、キャッシュバックだからといってどんな場合でも規制から逃れられるわけではありません。以下のような場合には、名目上は「キャッシュバック」だとしても、「値引き」として認められず、「景品」として景表法の規制対象となります。
順番にみていきましょう。
①懸賞(くじや抽選)によりキャッシュバックを行う場合
- 【例-1】商品を買った人の中から抽選で1万円キャッシュバックする場合
キャッシュバックがくじや抽選によってなされる場合、当たる人もいればハズれる人もいますよね。これだと、キャッシュバックされなかった人については「値引き」がなされていないことになります。 そのため、くじや抽選形式のキャッシュバックは「値引き」として認めることができません。
②キャッシュバックした金額の使い道を限定する場合
- 【例-2】東京で買い物をしたのに、キャッシュバック分については沖縄にある○○店での買い物にしか使えませんと言われた場合
私たちがキャッシュバックを受ける場合、「その使い道については自由である」というのが一般的な認識ですよね。 でも、【例-2】のようにキャッシュバック分の使い道としてはるか遠くのお店を指定されてしまったら、キャッシュバック分を使うのは現実的に無理な話になってしまいます。そうすると、実質的にはキャッシュバック分が宙に浮いた状態となってしまいます。これではキャッシュバックの本来の意味からは大きくずれることになり、ある意味消費者を騙しているのと同じことになります。
そのため、初めから使い道を限定しているような形式のキャッシュバックについては、それはもはや「キャッシュバック」とは呼べず、「値引き」として認められません。
③キャッシュバックと景品の提供が選択制の場合
- 【例ー3】キャッシュバックか人気家電のどちらかを選んでもらう場合
この場合も【例ー1】と同様、選択制であるため、商品を買った者の間で、キャッシュバックされる人とされない人(【例-3】の場合、家電を選んだ人)の2種類がいることになります。キャッシュバックされない人については、金銭的なディスカウントが存在しないため、景品とキャッシュバックを選択制にする形式のキャッシュバックについても「値引き」として認めることはできません。
このように、キャッシュバックについては、お金を返す、という性質上、「値引き」と認められるのが原則ですが、サービス設計次第では、値引きにならず、景品規制を受けてしまうことになります。
そのため、キャッシュバックキャンペーンをしたい場合には、その「仕組み」や「値引きにあたらない事例」を踏まえたうえで、キャッシュバックの設計を行なう必要があります。
6 まとめ
ここまでの解説をまとめると以下のとおりです。
- 「キャッシュバック」とは、商品を買ったりサービスを利用する中で一定の条件をみたした場合に、事業者から利用者へ現金を払い戻すことをいう
- キャッシュバックの仕組みとしては、①商品を買ったその場でキャッシュバック分が支払われるタイプと、②キャッシュバック分については後日支払われるタイプの2種類がある
- キャッシュバックにはメリット・デメリット双方ある点に注意
- キャッシュバックをする際には、「景表法」というマーケティングの手法を規制する法律に書かれた、「景品規制」というルールを守らないといけない
- 「景品」とは、おまけやキャンペーンを意味し、たいていの施策は、この「景品」にあてはまり、その価格に上限が付されてしまう
- ただ、「値引き」といえるキャンペーンについては、例外的に景品規制の対象とならない
- キャッシュバックキャンペーンは、ディスカウントそのものなので、原則として、景品規制の対象とならないが、その態様によっては規制の対象ってしまうことに注意
【注:限度額の数値・類型の当てはめ、値引き該当性の判断基準、ガイドラインの細目は改正で変更され得ます。最新の告示・運用基準(消費者庁)を必ず確認してください。】
IT・EC・金融(暗号資産・資金決済・投資業)分野を中心に、スタートアップから中小企業、上場企業までの「社長の懐刀」として、契約・規約整備、事業スキーム設計、当局対応まで一気通貫でサポートしています。 法律とビジネス、データサイエンスの視点を掛け合わせ、現場の意思決定を実務的に支えることを重視しています。 【経歴】 2006年 弁護士登録。複数の法律事務所で、訴訟・紛争案件を中心に企業法務を担当。 2015年~2016年 知的財産権法を専門とする米国ジョージ・ワシントン大学ロースクールに留学し、Intellectual Property Law LL.M. を取得。コンピューター・ソフトウェア産業における知的財産保護・契約法を研究。 2016年~2017年 証券会社の社内弁護士として、当時法制化が始まった仮想通貨交換業(現・暗号資産交換業)の法令遵守等責任者として登録申請業務に従事。 その後、独立し、海外大手企業を含む複数の暗号資産交換業者、金融商品取引業(投資顧問業)、資金決済関連事業者の顧問業務を担当。 2020年8月 トップコート国際法律事務所に参画し、スタートアップから上場企業まで幅広い事業の法律顧問として、IT・EC・フィンテック分野の契約・スキーム設計を手掛ける。 2023年5月 コネクテッドコマース株式会社 取締役CLO就任。EC・小売の現場とマーケティングに関わりながら、生成AIの活用も含めたコンサルティング業務に取り組む。 2025年2月 中小企業診断士試験合格。同年5月、中小企業診断士登録。 2025年9月 一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科(博士前期課程)合格。












