連鎖販売取引とは?該当するための4つの要件と事業者への規制を解説

2023.03.21

はじめに

「連鎖販売取引」という言葉をご存知でしょうか。
マルチ商法と聞くとわかる方もいらっしゃると思いますが、「連鎖販売取引」はマルチ商法の正式名称です。

連鎖販売取引は、その取引の仕組みなどからさまざまな問題を生むおそれがあるため、特定商取引法という法律で厳しく規制されています。

連鎖販売取引を始めようと検討している事業者は、まずは、始めようとする取引が「連鎖販売取引」にあたるかどうかをきちんと確認することが大切です。

今回は、「連鎖販売取引」について、該当性を判断するための要件などを中心に解説します。

1 連鎖販売取引とは

連鎖販売取引」とは、個人を販売員として勧誘し、さらにその個人に次の販売員の勧誘をさせることにより、連鎖的に販売組織を拡大させて行う商品やサービスに係る取引のことをいいます。

連鎖販売取引にあたるといえるためには、以下の4つの要件をすべて満たしていることが必要です。

  1. 物品販売・サービス提供などの事業であること
  2. 再販売、受託販売もしくは販売のあっせん等を行う者を対象としていること
  3. 特定利益が得られると誘引すること
  4. 特定負担を伴う取引であること

ここでいう「特定利益(要件3)」とは、商品やサービスを販売することにより得られる利益のことではなく、新たに当該システムに加入することにより得られる利益のことを意味しています。

また、「特定負担(要件4)」とは、「商品の購入」や「サービス対価の支払い」などを意味します。

以下のケースについて見てみましょう。

  • 入会した場合の経済的メリットを伝え、他人を誘ってその人に売れば儲かるとして勧誘するケース
  • 他人を入会させると紹介料がもらえるなどとして勧誘するケース

これらのケースは、いずれも、入会することにより利益が得られるということを伝えて誘引しているため(上記要件3)、何らかの経済的負担を負うことが取引の条件になっていれば(上記要件4)、当該取引は「連鎖販売取引」に該当することになります。

2 連鎖販売取引を行う事業者への法規制

連鎖販売取引を行う事業者は、特定商取引法上、さまざまな規制を課されます。

以下は、そのなかでも特に重要となる規制です。

  1. 広告に関する規制
  2. 書面の交付義務
  3. クーリング・オフ制度
  4. 中途解約

(1)広告に関する規制

事業者をはじめ、統括者や勧誘者等は、連鎖販売取引について広告する場合には、以下の事項を表示する必要があります。

  • 商品・サービスの種類
  • 統括者などの氏名(名称)・住所・連絡先
  • 取引に伴う特定負担に関する事項
  • 特定利益について広告をするときにはその計算方法

また、誇大広告や事実と著しく異なる内容の広告は、消費者とのトラブルを招くおそれがあるため、禁止されています。

さらに、電子メールを使った広告は、あらかじめ消費者が承諾していない限り、送信することが原則禁止されています(「オプトイン規制」といいます。)。

もっとも、契約の成立や発送の通知などに付随してなされる広告、契約に関する重要事項を通知するメールの一部に含まれる広告は、規制の対象外となっています。

(2)書面の交付義務

連鎖販売取引を行う事業者は、取引に係る契約の締結前と締結後において、それぞれ以下の書面を契約の相手方に交付しなければなりません。

①契約の締結前

契約の締結前には、連鎖販売取引の概要を記載した書面(「概要書面」といいます。) を契約の相手方に交付する必要があります。

「概要書面」には、以下のような事項を記載する必要があります。

  • 統括者の氏名(名称)・住所・連絡先
  • 商品名
  • 商品の販売価格、引渡時期など
  • 商品の種類、性能や品質等に関する事項
  • 特定利益・特定負担に関する事項

②契約の締結後

契約締結後には、契約内容を記載した書面(「契約書面」といいます。)を契約の相手方に交付する必要があります。

「契約書面」には、以下のような事項を記載する必要があります。

  • 統括者の氏名(名称)・住所・連絡先
  • 商標・商号等
  • 商品の種類、性能や品質等に関する事項
  • 特定利益・特定負担に関する事項
  • 特定負担以外の義務についての定めがあるときはその内容

(3)クーリング・オフ制度

クーリング・オフ」とは、一定期間、無条件で契約に係る申込みを撤回したり、契約を解除したりすることができる制度です。

連鎖販売取引では、契約書面を受け取った日から起算して20日間以内であれば、相手方は書面によって契約を解除することができます。
この場合、事業者は契約の解除に伴う損害賠償や違約金の支払いを請求することはできないため、商品を引取る際に要する費用については事業者が負担しなければなりません。

クーリング・オフの行使期間は、あくまで相手方が契約書面を受け取ってから起算されるため、事業者が契約書面を交付していない場合、クーリング・オフの行使期間に制限はなくなります。
事業者においては、この点に注意する必要があります。

(4)中途解約

連鎖販売契約により組織に入会した消費者は、クーリング・オフ期間が経過した後も、将来に向かって連鎖販売契約を解除することができます。

その場合、以下の条件をすべて満たしていれば、連鎖販売に係る商品の販売契約を解除することができます。

  1. 入会後1年を経過していないこと
  2. 引渡しを受けてから90日を経過していない商品であること
  3. 商品を再販売していないこと
  4. 商品を使用・消費していないこと
  5. 自らの責めで商品を滅失・毀損していないこと

3 まとめ

連鎖販売取引は、消費者保護などの観点から厳しく規制されています。

これに違反すると、行政処分のほか罰則が科される可能性もあるため、事業者は規制内容を十分に理解して、事業を展開していくことが大切です。

弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
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現在は、弁護士としての企業顧問と、大学院での研究という2軸の活動をしています。 弁護士としては、IT・ゲーム・フィンテック領域を中心とした企業法務をサービスの中心としています。 大学院では、一橋大学ソーシャル・データサイエンス研究科(M1)において、法令工学に基づいて処理済みのデータを計量統計的に処理する研究しています。 証券会社の社内弁護士として、暗号資産交換業の法制化初期に、登録申請やコンプライアンス体制の整備に従事し、独立後も国内外の暗号資産交換業者、投資助言・代理業者、資金決済関連事業者の顧問業務を担当し、許認可・当局対応から契約、社内規程、サービス設計まで幅広く支援してきました。 ゲーム・デジタルコンテンツ、AI・データ分野では、開発・運営に関する契約、利用規約、著作権、個人情報保護、データの取得・利用条件、課金・サービス提供スキームなどを取り扱っています。また、日常的な契約・会社法務、資本政策、資金調達、株主・役員関係、紛争対応など、企業の成長段階に応じたジェネラル・コーポレート業務にも対応しています。 また、中小企業診断士として、財務分析、事業計画、資金繰り、融資・エクイティを含む資金調達の検討にも関与しています。法的な可否やリスクを指摘するだけでなく、事業性、財務、オペレーションを踏まえた実行可能な選択肢を示し、契約、規程、業務フローに落とし込むことを重視しています。 【経歴】 2006年 弁護士登録。複数の法律事務所において、企業間紛争、訴訟その他の企業法務に従事。 2015年~2016年 米国ジョージ・ワシントン大学ロースクールに留学し、Intellectual Property Law LL.M.を取得。コンピュータ・ソフトウェア産業における知的財産保護、著作権、ライセンス及び契約法を研究。 2016年~2017年 証券会社の社内弁護士として、法制化初期の仮想通貨交換業、現在の暗号資産交換業に関する登録申請及びコンプライアンス体制の整備に従事。 独立後、海外大手企業を含む複数の暗号資産交換業者、金融商品取引業者(投資助言・代理業)、資金決済関連事業者の顧問業務を担当。許認可・当局対応、契約・規約、社内規程、事業スキームの設計などを支援。

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