はじめに

インターネットを利用していると必ず出会うのが「リンク」です。「リンク」とは、現在のページから別のページへと簡単に移動できる仕組みのことをいいます。

この仕組みを悪用した「リーチサイト」が近年問題となっていることをご存知でしょうか?2017年には、日本最大級の海賊リーチサイトだった「はるか夢の址(あと)」の運営者が逮捕されました。

こういった事態を受けて、 監督官庁である文化庁も「リーチサイト」を規制するため、著作権法を改正する方針を固めているところです。

では、「リーチサイト」における問題点はどういった点にあるのでしょうか?実際にリーチサイトを利用したことがある方でも、法的にどのような問題があるかまでは分からないかと思います。

そこで今回は、近年問題視されている「リーチサイト」について、その概要や法的な問題点・対処法を3つのポイントに分けてわかりやすく解説していきます。

1 リーチサイトとは

リーチサイト

リーチサイト」とは、映画やテレビ番組、漫画やアニメなどの違法コンテンツへユーザーを誘導するサイトのことをいいます。その特徴として、以下の2点が挙げられます。

  • リーチサイトには違法コンテンツそのものを掲載しない
  • その代わりに、違法コンテンツがアップロードされた他サイトのリンクが、ジャンルごとに大量に掲載されている

普通なら、違法コンテンツを掲載しているサイトは検索エンジンに表示されないため、ユーザーがそのサイト自体を把握しているということがない限り簡単にたどり着くことはできません。ですが、リーチサイトを使えば、そこに貼ってあるリンクから目的の違法コンテンツをダウンロードすることができます。リーチサイトがいわゆる「海賊版」への窓口になっているのです。

リーチサイトの仕組みを簡単に図で表すと以下のようになります。

リーチサイト

このとき、映画や漫画などを無断でアップロードすることは「違法行為」になります。次の項目で詳しく解説しますが、他人が作った作品には「著作権」という権利があり、作者から許可をとらずにそれを利用することは「著作権侵害」になるからです。作者に無断でアップロードされた映画や漫画などが「違法コンテンツ」になることは、みなさんもイメージしやすいかと思います。

では、違法コンテンツへの「誘導」をしている「リーチサイト」も同じように著作権侵害となるのでしょうか?ここで思い出してほしいのが、「リーチサイトには違法コンテンツそのものは掲載されておらず、あくまでも違法コンテンツを掲載している別のサイトへのリンクを貼っているだけ」という点です。

つまり、リーチサイトの運営者は自ら違法コンテンツをアップロードしているわけではなく、ただ違法コンテンツの掲載先を「紹介」しているに過ぎません。これなら法的に何も問題がないようにも思えます。

とはいえ、リーチサイトに貼られたリンクによって、簡単に違法コンテンツへアクセスしてダウンロードができるため、リーチサイトが著作権侵害を助長し、その結果被害を拡大させていることも事実です。そのため、リーチサイトは「間接的な著作権侵害」をしていると考えることもできます。

次の項目で、リーチサイトに貼られた「リンク」と「著作権侵害」の関係についてみていきましょう。

2 リーチサイトは著作権侵害にあたるのか?

著作権侵害

(1)著作権とは

著作権」とは、人が作った作品(=著作物)に対して発生するもので、著作物を法的に守ってくれる権利のことをいいます。

具体的には、「著作権」があることで、作者以外の他人が著作物を勝手に使用したり転載したりすることができないルールになっています。そして、このルールを破った場合には「著作権侵害(=違法な行為)」となります。

リーチサイトに貼られたリンク先にある映画や漫画、音楽、テレビ番組などのコンテンツは、「著作物」にあたるので、そこにはもちろん「著作権」が発生しています。

そのため、これらのコンテンツを作者に無断でアップロードする行為は「著作権侵害」にあたり、アップロードされたコンテンツは「違法コンテンツ」となります。

(2)リンクと著作権侵害

無断でアップロードされた違法コンテンツが「著作権侵害」にあたるのであれば、その違法コンテンツへと誘導する「リンク」についても「著作権侵害」となるのでしょうか?

先ほども述べたように、リーチサイトは違法コンテンツそのものを掲載(アップロード)しているわけではないため、直接的に著作権侵害をしているとはいえません。

もっとも、リンクによって違法コンテンツへ「誘導」している点を捉え、間接的な著作権侵害といえる可能性はあります。

そこで、「リンクそのものが著作権侵害となるのか」が問題となります。

この点について、単にリンクを貼る行為について著作権侵害を問われることは一般的にありません。

著作権法では、「著作物に対してある一定の行為をしたら権利侵害になる」というルールが細かく決められています。例えば、著作物を無断で複製した場合には「複製権侵害」、サイトなどにアップロードして不特定多数がアクセスできる状態にした場合には「公衆送信権侵害」にあたります。これらはいずれも、著作物に対して直接なされる著作権侵害行為です。

他方で、「リンクを貼る行為」を禁止するルールは今のところありません。通常のリンクは、その先にあるコンテンツの場所を示しているだけであって、著作権を侵害するものではないからです。

また、リーチサイトのようにリンクの貼り方が悪質な場合でも、その侵害行為はあくまで間接的であるため、「直接的な侵害行為」に関する規定をそのままダイレクトにあてはめることはできません。

このような理由から、悪質なリーチサイトに対してストレートに「著作権侵害の違法行為だ!」と言うことはできず、取り締まりがとても難しい状況が生じているのです。

では、悪質なリーチサイトに対して何も打つ手はないのかというと、そうではありません。著作権侵害行為としてストレートに取り締まることができなくても、別の角度から対処をすることはできます。

次の項目で確認していきましょう。

3 リーチサイトへの対処法

リーチサイトへの対処法

リーチサイトへの対処法としては、以下の2つが考えられます。

  • 著作権侵害のほう助の可能性
  • その他の不法行為の可能性

順番にみていきましょう。

(1)著作権侵害のほう助の可能性

繰り返しになりますが、リーチサイトは違法コンテンツを直接掲載しているわけではなく、違法コンテンツがアップロードされた他のサイトへのリンクを貼っているだけに過ぎません。そして、少なくとも現状においては、リンクを貼る行為そのものについて、著作権侵害を問うことはできません。

もっとも、リンク先にあるコンテンツが著作権侵害をしている違法コンテンツであると知りながらあえてリンクを貼っているような場合には、「著作権侵害のほう助行為」とみなされる可能性があります。

ほう助」とは、手助けをすることをいいますが、リーチサイトがあることによってユーザーは簡単に違法コンテンツへたどり着くことができます。その結果、違法ダウンロード行為が助長・拡大されることから、著作権侵害を手助けしている、とみなされる可能性があるのです。

この点について過去の裁判例をみると、

  • リンク先のコンテンツがパっと見は違法コンテンツに見えないものであった場合
  • リンク先のコンテンツが違法にアップロードされたものであるとの警告を受けたあと、すぐにリンクを削除したような場合

には、「著作権侵害のほう助行為」の成立が否定されています。

言い換えれば、明らかに違法コンテンツだとわかるようなもののリンクを貼ったり、警告を受けたにもかかわらずそれを無視してリンクを貼り続けたような場合に、「著作権侵害のほう助行為」が成立するものと考えられます。

(2)その他の不法行為の可能性

リーチサイトにおいて、リンクを貼る行為そのものが著作権侵害にあたらないとしても、他の権利を侵害して不法行為が成立する可能性があります。

例えば、リンクの態様(リンク先にジャンプさせたときに何をどのように表示させるかということ)によっては「著作者人格権」を侵害する可能性があります。

著作者人格権」とは、著作者の人格的な利益を保護する権利のことをいいます。侵害にあたるものとしては、以下のような場合があります。

  • リンク先のサイトがあたかも自分のサイトのように見えるリンクの貼り方をした場合
  • 画像や動画に直リンク(他のサイトのURLをそのまま使うこと)を貼って、自分のサイトの一部に表示させる場合

また、リンクを貼るときに、リンク先サイトの商標を勝手にリンクボタンに使った場合には「商標権侵害」となる可能性があります。

さらに、利益を得る目的で、自分のサイトを他の有名サイトの関連サイトであるかのように勘違いさせて、「関連サイトはこちら」といったようなリンクを貼った場合には「不正競争防止法違反」となる可能性があります。

もっとも、これら3つについては、リンク先のサイトやコンテンツを作った人との間の問題であり、リーチサイトの問題点である「違法コンテンツへと誘導するリンクを貼る行為」を直接取り締まれるわけではありません。

4 小括

まとめ

現状において、リーチサイトを取り締まることはとても難しい状況です。一方でその被害はとても深刻なものとなっていて、ついに国もリーチサイトへの規制を検討し始めたようです。

どのような形でリーチサイトに規制をかけるのか、著作権法以外の法律でも対処できるようにしていくのかが、今後の課題といえます。

5 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下のとおりです。

  • 「リーチサイト」とは、ユーザーを映画やテレビ番組、漫画やアニメなどの違法コンテンツへと誘導するサイトのこと
  • リーチサイトには違法コンテンツそのものを掲載せず、その代わりに、違法コンテンツがアップロードされた他サイトのリンク(ダイレクトに他のサイトへアクセスできるもの)が、ジャンルごとに大量に掲載されているのが特徴
  • 「リンクを貼る行為」そのものについては基本的に著作権侵害にあたらない
  • 場合によっては「著作権侵害のほう助行為」や「不法行為」が成立する
  • その他、著作者人格権侵害、商標権侵害、不正競争防止法違反となる可能性がある