VCとの投資契約で設けられる6つの条項を弁護士がわかりやすく解説

はじめに
スタートアップ企業などは、VCを用いて資金調達をすることが少なくありません。
その際には、VCとの間で投資契約を締結することになりますが、そもそもどのような契約なのかご存知でしょうか。
投資契約にはさまざまな条項が設けられますが、一つ一つの条項がどのような意味をもつかをきちんと理解していないと、後にトラブルに発展する可能性があります。
そこで今回は、投資契約に盛り込まれる代表的な条項について、弁護士がわかりやすく解説します。
1 投資契約の概要
投資契約に盛り込まれる条項は、概ね以下の4つに分けることができます。
- 前提条件に関する条項
- 投資に関する条項
- 株式・会社運営に関する条項
- 撤退に関する条項
(1)前提条件に関する条項
「前提条件に関する条項」として挙げられるのは表明保証条項です。
「表明保証条項」とは、開示した財務諸表などの内容が正確であることを事業者が投資家に対して表明し保証する条項のことをいいます。
また、投資家に資料を開示した後に後発的な事象が生じていないことを確認する旨の条項を設けることもあり、この条項も「前提条件に関する条項」に含まれます。
(2)投資に関する条項
「投資に関する条項」としては、発行する株式の種類や数、株価などといったように投資に関する基本的な条件を定める条項が挙げられます。
(3)株式・会社運営に関する条項
「株式等に関する条項」としては、株式譲渡や議決権に関する条項、剰余金・残余財産に関する条項など、広く株式の取扱いに関係する条項が挙げられます。
また、会社運営に関する条項も盛り込まれることが一般的になっています。
「会社運営に関する条項」としては、重要事項を決定する場合にはVCの承認を求めることとする条項や、VCから会社に取締役などを派遣するための条項(「ハンズオン条項」といいます。)などのように、会社運営に対する投資家の権利などを定めた条項が挙げられます。
(4)撤退に関する条項
「撤退に関する条項」とは、投資家が投資から撤退することについて定められた条項です。
具体的には、事業者に契約違反等があった場合に、投資家は自己が保有する株式を投資先やその代表者に売却して投資から撤退するという内容で定められます。
2 投資契約に盛り込まれる代表的な条項
投資契約に盛り込まれる代表的な条項には、以下のようなものがあります。
- 優先引受権条項
- 事前承認・事前通知条項
- 取締役・オブザーバーの派遣
- 最恵待遇条項
- 表明保証条項
- 株式買取条項
(1)優先引受権条項
「優先引受権条項」とは、投資先が株式を発行する場合には、投資家が自己の持株比率を維持する範囲で優先的に株式を引き受けることができるとする権利を定めた条項のことをいいます。
資金調達の回数を重ねたりストックオプションを発行したりすると、それ以前に投資したVCの持分比率は下がります。
VCなどの投資家は、キャピタルゲインによる利益を狙っているため自己の持株比率を下げることは避けなければなりません。
そのため、投資契約では優先引受権条項が設けられることが一般的になっていますが、スタートアップ企業側が受け入れても特に大きなリスクはないものと考えられます。
もっとも、優先引受権は新株予約権などの潜在株式も対象とするのが一般的です。
そのため、事業者が将来発行する予定にしているストックオプションを優先引受権の対象から除外しておくことが必要になります。
(2)事前承認・事前通知条項
「事前承認・事前通知条項」とは、事業者が重要事項を決定する場合に、株主総会や取締役会の決議に加えてVCとの関係で事前承認・事前通知が必要になることを定めた条項です。
VCから投資を受けている以上、やむを得ない部分もありますが、過度にVCの関与を認めてしまうと会社経営の自由度が阻害されるおそれがあります。
また、細かいところまで事前承認や事前通知を要するとなると、業務上の機動性を失うおそれもあるため、事前承認・事前通知の対象をある程度絞る方向で交渉することが必要です。
また、事前承認については、一定期間内に回答がない場合には承認したものとみなすという文言を入れておいた方が無難でしょう。
(4)取締役・オブザーバーの派遣
投資を実行するVCとしては、投資先の経営状況などをチェックするために、投資先の経営に関与したりモニタリングを実施したりすることが必要になります。
そこで、会社での会議や取締役会に参加できるよう、取締役やオブザーバーを派遣することを権利の一つとして主張してくることがあります。
オブザーバーに関しては、議決権をもたず意見を述べることができるというにとどめるのが一般的であるため、スタートアップ企業側が受け入れても大きな負担にはならないと考えられます。
もっとも、オブザーバーが会議で得た情報などを外部に漏らさないよう、投資契約に秘密保持条項を盛り込んでおくことが必要でしょう。
(5)最恵待遇条項
「最恵待遇条項」とは、別の投資家と締結した投資契約がより有利な条件であれば、その条件を先の投資家に対しても与えるとする条項です。
見落としがちな条項ですが、受け入れる際には慎重に判断する必要があります。
追加増資を実施する際の障害にもなりうる条項であるため、受け入れる場合には、「有利」の解釈を明確にするとともに適用範囲などを具体的に定めておくことが必要です。
(6)表明保証条項
「表明保証条項」とは、開示した財務諸表などの内容が正確であることを事業者が投資家に対して表明し保証する条項のことをいいます。
投資契約では、先に実施されるデューデリジェンスを補完する趣旨で表明保証条項が設けられることが一般的です。
多くの場合、表明保証に違反した場合には事業者や創業株主などに損害賠償責任が発生するというペナルティが定められます。
そのため、表明保証の対象となっている事項を十分に確認し、本当に表明保証が可能な内容であるかどうかを確認することが必要です。
(7)株式買取条項
「株式買取条項」とは、一定の場合に投資家が事業者などに対して株式の買取りを請求できるとする条項です。
投資契約では、株式買取条項が設けられることが多いですが、その場合には発動事由に注意する必要があります。
株式買取条項の発動事由として一般的なものは、以下の3つです。
- 投資契約に違反した場合
- 表明保証条項に違反した場合
- 上場要件を満たしているにもかかわらず上場しない場合
事業者の努力とは関係なく発動事由に該当しうるかどうかという観点から、発動事由として定めて良いかどうかを慎重に決定することが大切です。
3 まとめ
投資契約で設けられる条項は、どれをとっても重要な意味をもっています。
条項の数や内容などから契約が複雑になるケースもあります。
後のトラブルを防ぐためには、専門家への相談も視野に入れながら進めていくことが大切です。
弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
弊所サービスの詳細や見積もり等についてご不明点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
IT・EC・金融(暗号資産・資金決済・投資業)分野を中心に、スタートアップから中小企業、上場企業までの「社長の懐刀」として、契約・規約整備、事業スキーム設計、当局対応まで一気通貫でサポートしています。 法律とビジネス、データサイエンスの視点を掛け合わせ、現場の意思決定を実務的に支えることを重視しています。 【経歴】 2006年 弁護士登録。複数の法律事務所で、訴訟・紛争案件を中心に企業法務を担当。 2015年~2016年 知的財産権法を専門とする米国ジョージ・ワシントン大学ロースクールに留学し、Intellectual Property Law LL.M. を取得。コンピューター・ソフトウェア産業における知的財産保護・契約法を研究。 2016年~2017年 証券会社の社内弁護士として、当時法制化が始まった仮想通貨交換業(現・暗号資産交換業)の法令遵守等責任者として登録申請業務に従事。 その後、独立し、海外大手企業を含む複数の暗号資産交換業者、金融商品取引業(投資顧問業)、資金決済関連事業者の顧問業務を担当。 2020年8月 トップコート国際法律事務所に参画し、スタートアップから上場企業まで幅広い事業の法律顧問として、IT・EC・フィンテック分野の契約・スキーム設計を手掛ける。 2023年5月 コネクテッドコマース株式会社 取締役CLO就任。EC・小売の現場とマーケティングに関わりながら、生成AIの活用も含めたコンサルティング業務に取り組む。 2025年2月 中小企業診断士試験合格。同年5月、中小企業診断士登録。 2025年9月 一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科(博士前期課程)合格。











