はじめに

昨今、業務の効率化・経費削減などのために、自社の業務にAIを導入する企業が増えてきています。このとき、事業者はAI(人工知能)導入による多くのメリットを受けられる一方で、さまざまな法的問題に直面することになります。このような法的問題について十分な検討・対応がなされていないと、場合によっては、不法行為責任などの法的責任を企業は負わなければなりません。

もっとも、どのような場面でどういった法的問題点があるのかを具体的にきちんと理解している方はまだまだ多くはありません。

そこで今回は、AI(人工知能)導入の場面を5つに分け、それぞれの場面における法的問題点や注意点を弁護士が詳しく解説していきます。

    【この記事でわかること】
    労働分野にAIを導入した場合に想定される以下の法律上の問題点を確認する。

  • 採用の場面
  • 人事評価の場面
  • 従業員をモニタリングする場面
  • 配置転換の場面
  • 解雇の場面

1 AIとは?

AIとは

AI(人工知能)」とは、人間の知能を人工的に再現したもの、およびその技術のことをいいます。AIは、高度な技術によって人間のように「学習」し、学習したデータに基づいて「判断」することができます。そのため、今ではさまざまな分野でAIが活用されています。身近なものでいえば、iPhoneのsiriやソフトバンクのPepperなどにAIが搭載されています。

AIは大きく分けて2種類あります。1つ目は、「汎用型AI」や「強いAI」と呼ばれるもので、ドラえもんのように感情や高度な知性を持ったロボットのことをいいます。2つ目は、「特化型AI」や「弱いAI」と呼ばれるもので、今まで人がやってきた作業を代替的に行うロボットのことをいいます。もっとも、「強いAI」が活用されるようになるのはまだまだ先の話で、現在の日本で使われているのはほぼ「弱いAI」になります。

そして近年、AIは労働分野においても活用され始めています。その中でも、とくに注目を集めているのが「HRテック」への活用です。そこで以下では、AIが導入されたことにより労働環境にどのような影響を与えるのか、また、法律上どのような問題があるのかを順番にみていきたいと思います。

※AI周辺の法律問題について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照下さい。

2 人事業務へのAIの活用

人事業務へのAIの活用

AIが労働分野で活用されはじめている中で近年、HRテックが注目を集めています。

HRテック」とは、Human ResourceとTechnologyをかけ合わせた言葉で、最先端技術を使って人事関連業務を行う手法のことをいいます。高性能コンピュータやAIに社員採用時のデータや入社後のデータ、その他既存のビッグデータ等を読み込ませ、分析・予測させることで、さまざまな人事業務への活用が可能となるのです。具体的には、

  • 採用
  • 育成・研修
  • 配属
  • 評価

などへの活用が見込まれています。

これらの人事領域へAIを導入することにより、企業にとっては以下のようなメリットがあります。

  • 一定の基準をAIにインプットすることで、担当者の主観によらない公平・公正な判断ができる
  • 人事業務に関する人件費をカットできる
  • ビッグデータを用いてディープラーニングさせることで多面的な評価が可能となり、人材の価値の最大化を実現できる

実際に、2017年よりソフトバンクは新卒採用選考に「IBM watson」というAIを導入しており、その後複数の企業からも人事業務へのAI導入が発表されています。

3 「AIの人事業務分野への活用」に関する法律上の問題点

AIと人事業務の法律上の問題点

AIが労働環境(人事業務分野)に導入されることで、法律上どのような問題が生じるのでしょうか。この点、「AIの人事業務分野への活用」に関する法律上の問題(労働法との関係)としては、以下の5つが挙げられます。

  • 採用とAIの問題
  • 人事評価とAIの問題
  • 従業員のモニタリングとAIの問題
  • 配置転換とAIの問題
  • 解雇とAIの問題

以下から順番にみていきましょう。

4 採用とAI

AIと採用

(1)採用場面でのAIの活用方法

採用場面において、AIは以下のように活用できます。

  • AIに応募書類を読み込ませて、書類選考させる
  • スマートフォンやパソコンを使い、AIによる面接を行う
  • 過去のデータを元に、AIが企業と就職活動者のマッチングを行う

このように、AIを効率的に活用することにより人件費の削減などにもつながり、企業にとっては大変ありがたい技術です。もっとも、AIを活用する場面では、以下のように法律上の問題点も潜んでいます。

(2)法律上の問題点

企業と労働者との合意によって雇用関係は生じますが、企業には「採用の自由」が認められています。そして、採用の自由には、「選択の自由」と「調査の自由」が含まれます。

採用場面においてAIを活用する場合、この2つの自由との関係が問題となります。

  1. 選択の自由とAIの関係
  2. 調査の自由とAIの関係

順番に見ていきましょう。

①選択の自由とAI

選択の自由」とは、どのような基準でどのような人を採用するのかを企業が自由に決めることができることをいいます。これは、雇用する人を選択するにあたり、企業に広範な裁量が認められているためです。

たとえば、企業が労働者の思想や信条を理由として採用を拒否したとしても、当然には違法にならないとされています。

このように、採用場面においては企業に広い裁量が認められているため、仮にAIが誤った分析によって採用を決めたり、AIによる分析の信頼性について企業が検証していなかったという場合であっても、原則として企業が違法となることはありません。

また、AIを活用して得た色々なデータから特定の思想や信条が判明した場合に、そのことを理由にして不採用としても、当然には違法になりません。

さらに、企業は採用するにあたり独自の基準を設けているのが通常ですが、このような基準を候補者などに開示する義務はありません。そのため、不採用となった候補者が企業に対し、採用基準の開示を求めたとしても、応じる必要はありませんし、応じなくとも違法ではありません。

以上のように、企業に広く採用についての裁量が認められている以上、AIによる分析・判断に企業は原則として左右されません。もっとも、以下で説明する調査の自由との関係で企業の調査行為が違法となる可能性はあります。この点は、以下で詳しく説明します。

②調査の自由とAI

企業には候補者を採用するかどうかについて選択の自由があります。候補者を自由に選択するためには、各候補者について一定の情報を収集する必要があります。このような観点から、企業には調査の自由が認められています。

もっとも、自由に選択できるからといって、各候補者について何でもかんでも調べていいということではありません。人格やプライバシーを侵害するような調査は当然ながら許されません。そのため、このような点に配慮した調査方法が求められます。たとえば、調査対象となる候補者から事前に同意を得たうえで調査を実施するといった方法が考えられます。

このことは、調査事項についても同様です。調査事項は、あくまで採否を適切に判断するために必要な事項に限られると考えるべきです。たとえば、候補者の能力や適格性に関連する事項については、調査が許されます。採用するかどうかを公正に決めることが調査目的である以上、この目的に関係のない情報を収集したり使用したりすることは許されないのです。

なお、厚生労働省は人種などの差別の原因となるおそれのある情報や思想・信条に関する情報などを収集することを原則として認めないと告示しています。

企業には調査の自由が認められているとはいえ、その方法や対象などに一定の制約が課せられます。そのため、AIが基礎とするデータの中に候補者の個人情報(人種などの差別の原因となるおそれのある情報など)が組み入れられないようなシステムになっているかをきちんと確認することが必要です。このような情報が組み入れられているAIによって採否を決定した場合、場合によっては不法行為が成立する可能性もありますので、注意が必要です。

「採用場面におけるAIの活用」についてこれまで見てきましたが、採用後に蓄積されたデータを基に、AIによって人事評価を実施することも期待されています。次の項目で詳しく見ていきましょう。

5 人事評価とAI

AIと人事評価

人事評価にAIを活用することにより、人件費を削減できるというメリットを生むことができます。もっとも、メリットはそれだけではありません。まずは、その点から見ていきましょう。

(1)メリット

人事評価は従来上司など管理職にある立場の人が属人的に行うため、その評価も偏りがちです。この点、人事評価がAIにより実施されることになると、そういった弊害はなくなり、客観的で公正な評価が可能になります。さらには、蓄積されるデータの量も膨大になるため、評価項目を増やすなどして、多角的な評価が可能になります。

では、この局面における法律上の問題点はどのような点にあるのでしょうか。

(2)法律上の問題点

人事評価についても、企業に広い裁量権があるとされています。人事評価は従業員の能力や成績などといった多くの要素を総合的に判断して行われるものであるため、その評価も各自バラバラで一律ではないことが通常だからです。

もっとも、企業に与えられている裁量権も無制限に認められているわけではありません。人事権の濫用にあたるような場合には、そのような人事評価が違法になる可能性があります。

たとえば、企業が採用している人事評価制度自体が法律に違反していたり、評価の際に考慮すべきことを考慮していなかったり、反対に考慮すべきでないことを考慮したような場合に人事権の濫用が問題になります。

以上からすると、人事評価にAIを活用することは、人事権の濫用にあたる場合を除き企業の人事権の範囲内であると考えられます。もっとも、評価に際し考慮すべき事項が誤っているなど、AIが誤った分析をしていれば、人事権の濫用にあたる可能性が出てきますので、注意が必要です。

6 従業員のモニタリングとAI

AIとモニタリング

(1)AIの活用方法

従業員に係るさまざまな情報をAIに解析させ、従業員の集中度や満足度などを把握して、それを人事評価などに役立てるといった技術が開発・実施されつつあります。もっとも、

このような活用方法にも法律上の問題点が存在します。以下で詳しく見ていきましょう。

(2)法律上の問題点

AIを活用した従業員のモニタリングは、従業員の位置情報や脈拍・血圧など従業員に関するさまざまな情報をデータ化し、これらをAIに解析させることによって、従業員の行動状況や仕事に対する集中度・満足度などを把握するという方法によって行われます。

ですが、位置情報や脈拍・血圧などといった情報は、通常は他者に知られたくない情報です。そこで、企業がAIを使ってこのような情報をモニタリングすることがプライバシー権の侵害とならないかが問題となります。

通常であれば他人に知られない情報を企業が把握・利用することは、企業が従業員の私的な領域に踏み込んでいるという評価もできるため、プライバシー権との関係で問題となるのです。

では、企業はどういった点に注意すべきなのでしょうか。以下で実際の事例を参考に見ていきましょう。

(3)事例

    【事例①】
    Yの部下であったXが、Xらによる私的な電子メールをYが無断で閲覧したことを理由としてプライバシー権の侵害を訴えた事例

従業員のプライバシー権は無制限に保障されているものではありません。そのため、従業員の情報を把握する合理的な必要があり、その手段が相当であれば、このような情報を把握することも許されています。反対にこのような行為がプライバシー権の侵害とされるのは、その目的・手段、態様などを総合的に考慮して、X側に生じた不利益とを比較衡量した結果、その行為が程度を超えていると判断される場合とされています。

    【事例②】
    GPSを受信することにより、子機を携帯する従業員の居場所を企業が常時確認していたという事例

この事例につき裁判所は、

  • 外回りの多い従業員について、その勤務状況を把握し、緊急時や事故時の対応のために従業員の居場所を確認することを目的としていること(合理的な必要性)
  • 特定の従業員だけではなく複数の従業員を対象としていることから、その目的には合理性があること(目的の合理性)
  • 従業員の勤務状況を確認していたのが基本的には勤務時間帯であったこと(手段の相当性)

などを理由として、従業員の位置情報を確認した行為について違法ではないと判断しました。他方で、早朝や深夜といったように就業時間ではない時間帯に従業員の居場所を確認する行為は、原則として許されないとしています。

以上からすると、企業が従業員の情報を取得・確認する行為について、

  • 合理的な必要性
  • 目的の合理性
  • 手段の相当性

が認められればプライバシー権を侵害しないと評価される可能性があります。

では、企業がAIを活用して従業員をモニタリングする場合はどうでしょうか。以下をご覧ください。

  • 人事評価に役立てることや健康管理を目的として、従業員に係るさまざまな情報を取得する→合理的な必要性あり
  • 特定の従業員ではなく合理的で公正な基準によりモニタリングの対象を決めている→目的の合理性あり
  • 勤務時間内にかぎってモニタリングする→手段の相当性あり

このような活用方法であればプライバシー権を侵害しないと評価される可能性があります。

なお、こういったシステムを社内に導入する場合には、社内規程を整備し、従業員に事前に説明したうえできちんと理解してもらうことも非常に重要になってきます。

では、これまで見てきたような個別業務ではなく仕事全体がAIによって代替される場合、それまでその部門で働いていた従業員はどのように扱われるのでしょうか。次の項目で見ていきましょう。

7 AI導入による配置転換

AIと配置転換

AIにより仕事全体が代替された場合、その仕事に従事していた従業員がただちにその職を失うとはかぎりません。これは、日本において以下のような背景があることに基づきます。

(1)背景

従来、日本の企業は機械などにより代替される仕事に従事していた従業員について、別の仕事に就けるように教育・訓練をして、その仕事に配置転換するなどして雇用を維持してきました。日本においては、前提としている長期雇用システムに基づき、労働者を職種や就業地に関係なく雇用することが通常であるためです。

機械などに代替された従業員を直ちに解雇することは簡単ではありません。そのため、従業員にとっての適材適所を見つけることができる配置転換が解雇を回避する措置として機能してきました。

では、配置転換とはそもそもどのようなことを意味するのでしょうか。

(2)配置転換とは?

配置転換」とは、同じ企業内で職務の配置や勤務場所を変えることをいいます。企業がどのような場合に配置転換を命ずることができるかは、両者間の労働契約においてそのような規定があるかないかによって異なってきます。

たとえば、A社の従業員であるBはA社との労働契約において、職種:ライター、就業場所:本社という内容で合意しているものとしましょう。この場合、Bは自分が従事していた仕事がAIなどに代替されたとしても、自分が同意しないかぎり配置転換されることはありません。なぜなら、BはA社との労働契約で、職種と就業場所を限定しているからです。契約で限定されている以上、異なった職種や就業場所に配置転換することはできません。

もっとも、日本の企業の多くは、職種や就業場所を限定していない労働契約を結び、あらゆるケースに応じて広い範囲で配置転換を行っています。その代わりに、企業は賃金が結果として下がるような配置転換は通常行いません

そのため、従業員の賃金が下がらない配置転換であれば、特に従業員の同意を得る必要がないため、企業に対しては広い範囲で配転命令権が認められています。

(3)配転命令権の濫用

広い範囲で企業に認められている配転命令権ですが、無制限に認められているわけではありません。

たとえば、

  • 配転命令に業務上の必要性がない場合
  • 不当な動機・目的をもって配転命令がなされた場合
  • 従業員に過大な不利益を与えるなどの「特段の事情」がある場合

などには、企業による配転命令は権利濫用になるとされています。

以上のように、日本の企業には、従業員の賃金が下がらないかぎり、配転命令権について広い裁量が認められています。そのため、AIなどの導入によって仕事がなくなった従業員に対して、労働力の適正配置などといった業務上の必要性があるとして、それまで従事していた業務とまったく異なる職種に配置転換することも基本的には認められています。

また、既に説明したように、機械やAIなどに代替された従業員をただちに解雇することは簡単ではないため、企業側としてもまずは配置転換で対応することになります。

では、こういった場面において従業員を解雇できるケースはあるのでしょうか。最後の項目で見ていきたいと思います。

8 AI導入による解雇

AI 解雇

AIなどによって仕事が代替される場合、企業は原則としてその仕事に従事していた従業員について配置転換で対応します。

もっとも、今後AIなどによる代替が加速し、配置転換だけでは対応しきれないといったケースが想定されます。また、AIなどの技術が企業に浸透し、ほとんどの業務においてその技術を用いた対応が必要であるにもかかわらず、これに対応できない従業員が出てくるケースが想定されます。このような場合に、企業は従業員を解雇できるのでしょうか。

(1)解雇とは?

期間が定められていない長期労働者に対する解雇は、客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当であるといえない場合は、解雇権の濫用として労働契約法上無効になります。「客観的に合理的な理由」とは、たとえば、従業員の勤務成績の低下や経営上の必要性が含まれます。また、「社会通念上相当」であるかどうかの判断はかなり限定的に考えられており、解雇事由が重大であることに加え、解雇する以外に手段がなく、かつ、従業員に酌むべき事情がほとんどないような場合にのみ相当性が認められます。

以下では、実際の事例を参考に解雇の有効性について見ていきましょう。

(2)解雇の有効性

    【事例(エース損害保険事件)】
    能力不足を理由として解雇されたエース損害保険会社の社員が解雇の有効性について争った事例

この事例につき、裁判所は、以下のように厳しい判断基準を設定して、解雇を無効としました。

  • 長期従業員を勤務成績の不良などを理由として解雇する場合には、企業経営などに現に支障などを生じており、又はそのおそれがあり、企業から排除しなければならない程度に至っていること
  • 今後の改善の見込みがないこと
  • 使用者の不当な人事により従業員の反発を招いたなどの事情がないこと
  • 企業に配転などができない事情があること

このように、能力不足を理由とした解雇の判断基準は大変厳しいものになっているため、解雇権濫用と評価される可能性も高くなります。

以上のことは、AIなどの技術に対応できない従業員についてもあてはまります。たとえ、そのような従業員がいたとしても、能力不足などを理由としてただちに解雇するためには厳しい基準をクリアしていなければならないため、得策ではありません。まずは、そういった対応力を培うための教育を施すか、または、その従業員が十分に対応できる職種に配置転換するなどの措置を講じることが重要です。それでも改善の余地がない場合にはじめて「解雇」を検討することになります。

エース損害保険事件は、「普通解雇」の有効性について争われた事件ですが、普通解雇のうちの一つに「整理解雇」があります。整理解雇の有効性についても普通解雇の場合と同様に考えていいのでしょうか。以下で見てみましょう。

(3)整理解雇とは?

整理解雇」とは、企業が経営上必要な人員削減のために行う解雇のことをいいます。整理解雇については、普通解雇よりもその有効性について厳しく判断される傾向にあります。判例では、以下の点を考慮して整理解雇の有効性について判断しています。

  • 人員削減の必要性
  • 解雇回避努力義務を尽くしたこと
  • 被解雇者の選定の妥当性
  • 手続の妥当性

ここでいう「人員削減の必要性」について、単に経営の合理化を目的としているような整理解雇の場合には、人員削減を配置転換や出向などの他の措置により実現すべきであるとも考えられるため、人員削減の必要性が認められない、または解雇回避努力義務を尽くしていないとの評価を受け、解雇が無効であると判断される可能性があります。

以上のように、AIなどの導入により仕事が代替される場面において、その業務に就いていた従業員をただちに解雇した場合、そのような解雇は解雇権の濫用にあたる可能性が高いです。解雇はあくまで最終的な手段であるため、まずは配置転換や出向などを検討することが重要です。配置転換などでは対応できず、人員削減が求められる場合も、すぐに整理解雇という対応をとると解雇権の濫用にあたる可能性が出てきます。そのため、まずは、退職者を募ったりすることなどから人員削減を図ることが大切です。

9 小括

まとめ

AIを業務に導入できれば、そこからさまざまなメリットを生むことができます。ですが、AIを導入する局面ではきちんとクリアしなければならない法的問題点も存在します。AIを活用するケースに応じて、どのような点が問題になるのか、また、その問題にどう対応するのか、といったように常時問題意識をもつことが重要です。

AIを活用するとはいえ、活用する企業においてどのような対応がとられていたかという点は極めて重要な要素です。その点を念頭に置いて、AIを適切に活用するようにしましょう。

10 まとめ

これまでの解説をまとめると、以下のようになります。

  • 人事領域へのAI導入により、企業には①公平・公正な判断ができる、②人件費をカットできる、③人材の価値の最大化を実現できる、といったメリットがある
  • 「AIと労働分野」に関する法律上の問題として、①採用とAIの問題、②人事評価とAIの問題、③従業員のモニタリングとAIの問題、④配置転換とAIの問題、⑤解雇とAIの問題、が挙げられる
  • 採用場面においてAIを活用する場合、①選択の自由とAIの関係、②調査の自由とAIの関係が問題となる
  • 人事評価にAIを活用することは、人事権の濫用にあたる場合を除き、企業の人事権の範囲内であると考えられる
  • 企業がAIを使って通常他者に知られないような従業員に係る情報をモニタリングすることは、プライバシー権侵害との関係で問題となる
  • 企業が従業員の情報を取得・確認する行為について、①合理的な必要性、②目的の合理性、③手段の相当性が認められればプライバシー権を侵害しないと評価される可能性がある
  • 従業員の賃金が下がらない配置転換であれば、企業に対して広い範囲で配転命令権が認められている
  • ①業務上の必要性がない場合、②不当な動機・目的をもってなされた場合、③特段の事情がある場合などには、企業による配転命令は権利濫用になる
  • 期間が定められていない長期労働者に対する解雇は、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当であるといえない場合は、解雇権の濫用として無効になる
  • 整理解雇の有効性については、①人員削減の必要性、②解雇回避努力義務を尽くしたこと、③被解雇者の選定の妥当性、④手続の妥当性が考慮される