
はじめに
世界中の投資家が注目している「ICO」という資金調達方法。興味はあるものの、「失敗したらどうしよう・・・」「どんなスキームなら成功するんだろう?」といった不安や疑問を抱いている事業者の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、世界中のICOの成功事例や失敗事例とその特徴、また、ICOを成功させる(失敗させない)ためにはどうすればよいのかを、わかりやすく解説していきます。
目次
1 ICOとは?
「ICO(アイシーオー・Initial Coin Offering)」とは、事業者が発行するトークンという独自の暗号通貨を、投資家に仮想通貨(イーサリアムやビットコインなど)で購入してもらうことによって資金を調達する方法のことをいいます。ICOは具体的に以下の順序で行われます。
- ICOを行いたい事業者は自社のサービスに合ったトークンを各法律規制に抵触しないように設計します
- 事業内容やメンバー構成などの記載のある「ホワイトペーパー」を作成、トークンセールと呼ばれる方法でICOをすることを投資家にアピールします
- 事業内容に賛同した投資家が既存の仮想通貨を使用してトークンを購入します
- 受け取った仮想通貨を仮想通貨取引所にて現金に交換し、これにより資金調達が成功します
以上のような仕組みをもつICOですが、何をもって「ICOが成功した」といえるのでしょうか。過去のICO成功事例と失敗事例を参考に、成功と失敗の分水嶺がどこにあるのかを以下で詳しく見ていきましょう。
2 ICOの成功・失敗はどう判断する?
具体的な事例を見る前に、ICOの成功・失敗をどのように判断するかを解説します。
ICOは「資金調達」をすることが目的であるため、ICO事業者としては1円でも多くのお金を投資家から集めたいと考えています。そのため、ICOが成功したかどうかの判断は、最終的な「資金調達額」を基準に判断することになります。
もっとも、これは「ICOが合法的に行われたこと」が前提です。法律規制に違反していたり、詐欺的手法による違法ICOについては、そもそも評価するに値しません。
下記はICOの資金調達ランキングの一覧です。
ランキング第1位の「Telegram ICO」は、2位以下に圧倒的な差をつけ17億ドルの資金調達に成功しています。文字通り桁違いの資金調達額となり、誰がみても成功した事例であるということがいえます。もっとも、2位以下の事例についても多額の資金調達に成功していることに間違いはありません。資金調達額の多い大型ICO案件はどれも有名なものばかりです。
言い換えると、資金調達額が目標金額に達しない場合には、ICOに失敗したとみなされます。また、過去には「The DAO」というプロジェクトのICOで、調達額の半分近く(約65億円)がハッキングにより盗まれてしまうという事件も起きていて、このような場合も同様にICOは失敗したということがいえるでしょう。
では、過去のICO事例にはどのようなものがあるのでしょうか。次項では、実際にあったICO案件の事例を解説していきます。どのようなプロダクトで、どのくらいの資金を集めたかを確認していきましょう。
3 ICOの成功事例・特徴
実際にICOを成功している企業はどのようなビジネスプランを組み立て、どのくらいの資金を集めたのでしょうか。代表的な事例を以下にまとめました。
(1)日本発のICO成功事例
①COMSA
COMSAとは、日本国内で仮想通貨交換取引所のZaifを運営しているテックビューロ社が開発し、運用しているブロックチェーンの総合的なプラットフォームです。
初めての日本発ICOプラットフォームであり、プラットフォーム内ではCOMSAトークン(CMS)が扱われています。COMSAプロジェクトの特徴は以下のとおりです。
- 現行の経済とクリプト経済(ブロックチェーン技術を取り入れた経済)との懸け橋となるプロジェクトを掲げている
- ブロックチェーンを用いたビジネスとICOのスタートアップのサポートを行う
- COMSAプラットフォーム内のICO案件はZaifへ自動的に上場する
このような画期的なサービス内容により、トークンセール開始から約1ヶ月で、現時点では世界第6位となる約109億円の資金調達に成功しました。
②ALIS
仮想通貨「ALIS」は日本企業の日本人開発メンバーによる初のICO案件であるため、一躍有名になりました。
ALISがかかげるプロジェクトの主な特徴は以下のとおりです。
- 悪質な広告などを排除し、より良い記事を作成、発見することができる
- 次世代のCtoCコミュニケーションを掲げた分散型のソーシャルプラットフォーム
- すでに海外の取引所では上場を果たしている
ALISは、ICO開始からわずか4分で約1億円を調達したと言われており、最終的には約4.3億円(13,182ETH)の資金調達に成功しました。
③QASH
仮想通貨「QASH」は、仮想通貨取引所「QUOINEX」を運営しているQUOINE社のQUOINE LIQUIDで利用できるトークンです。
QUOINE LIQUIDプラットフォームのかかげる特徴は以下のとおりです。
- あらゆる金融サービスを世界中で平等に利用することができ、かつ金融サービスのメリットを誰でも受けることができる環境の実現を掲げる
- 世界中の仮想通貨取引所の取引を一つのプラットフォームに集約させ、平等な条件下で取引を行うことを目的としている
これらを実現すると仮想通貨交換所のあらゆる問題点を一気に解決することができます。そのような背景から、最終的に「QASH」は3億5000万QASHを完売、日本円にすると約120億円もの資金調達に成功しました。
(2)海外発のICO成功事例
①Telegram
Telegram ICO / TON / Coin Cryptocurrency
Telegramとは、通常のSNSとは異なり、メッセージを暗号化することによりプライバシーの保護を実現させたSNSです。ロシアや東欧では国家による検閲などがあるため、「LINE」に匹敵するユーザー数を誇ります。そんな中、テレグラムは単なるメッセージアプリからの脱却を目指し、まったく新しいブロックチェーン・プラットフォームの構築を掲げました。プラットフォームの名称はTON(テレグラム・オープン・ネットワーク)、トークン名はTONCoinといいます。
Telegramのかかげるプロジェクトの主な特徴は以下のとおりです。
- 取引スピードの速さと、コストカットの実現
- ブロックチェーン技術による高いレベルのプライバシー保護
- 数百万に上るパブリックチャットグループや、ブロードキャストチャンネルなど新しい市場の開拓
従来の仮想通貨(ビットコインなど)は投機的な側面が強く、その取引は主には投資家が参加するものでした。ですが、Telegramのかかげるプロジェクトはそうではなく、一般のユーザーにも幅広く普及したいと考えるビジネスプランの提案により、うまくいけば仮想通貨そのものの考え方を変え得る可能性を秘めています。このような背景から、ICOの調達額では歴代最高金額の17憶ドルを調達、日本円にすると約1818億円の資金調達に成功しました。
②Dragon Coin
Dragon coinは、カジノとプレーヤーのための分散型通貨です。オンラインカジノの画一的な通貨は未だなく、大手のオンラインカジノ運営会社が提携した場合には大きな影響を与えると考えられています。Dragonブロックチェーン上で使用されるのはDRGトークンと呼ばれます。
Dragon Coinのプロジェクトの主な特徴は以下のとおりです。
- 古くからのゲーム業界の強化を目指し、カジノ内で低コストかつトラブルのない透明な代替金融メカニズムの提案
- DRCトークンは同Dragon’s Blockchain施設のホテルの宿泊料金などに使用でき、カジノ内にてDGC(Dragon Global Chips)と呼ばれる暗号化したゲームチップに換えてカジノに参加することができる
オンラインカジノプレイヤーはもちろんのこと投資家からも絶大の支持を得たDRGトークンは、3億2000万ドル(日本円にすると約350億円)のICOに成功し、テレグラムに続く世界第2位の資金調達額となりました。
③EOS
EOSとは、分散型のアプリケーションを構築することを目的としたプラットフォームです。企業の業務のサポートとなることを想定して開発されました。
EOSプラットフォームの主な特徴は以下のとおりです。
- ビットコインで問題となった処理スピードの遅さを、「EOS.IO」というソフトウェアによって、1秒間に何百万にも及ぶ高速の処理スピード(トランザクション)を実現
- 取引にかかる手数料がかからない
- 現時点でのEOSトークンの利用価値はなく、ただ単に投機的目的のみしかない
EOSトークンは、約2億9800万ドル(日本円にすると約316億円)のICOに成功しました。
(3)ICOの成功例の特徴
ここまでいくつかの事例をみてきましたが、成功しているICOに共通した特徴としては、
- 提案しているビジネスモデルが新しく、かつ解決の難しい問題に対してダイレクトにアプローチしているようなものが多い
- ビジネスモデルとブロックチェーン技術がマッチしている
- トークンの価値上昇についてきちんとホワイトペーパーで説明している
- プロジェクトに携わるメンバーの素性が明らかである
- コミュニティが存在し、ユーザーが活発に意見交換を行っている
- 戦略的なPRを行っている
などといった点が挙げられます。投機的な側面から、ビジネスプランの実現可能性が高そうなICO案件は注目の的になります。そのため、ICOを行う際に、いかに細かく・戦略的に準備をするかがポイントとなります。ここをきちんと押さえておけば、ICOの成功可能性を高めることができるでしょう。
もっとも、ICOを実施したものの資金が集まらず、失敗に終わってしまった企業は数え切れないほどあります。一体どのようなビジネスモデル、戦略でICOを行った結果、失敗に終わってしまったのでしょうか。次項では、実際に失敗に終わってしまったICOの事例を紹介していきます。
4 ICOの失敗と評価された事例・特徴
失敗してしまったICOには必ず失敗した原因があります。一体何がいけなかったのか、過去の失敗したと評価される事例から紐解いていきましょう。
(1)日本発のICOで失敗と評価されている事例
①Metamo
https://metamo.it/whitepaper_jp.pdf
Metamoとは、日本国内企業であるメタモ株式会社が発行するトークンです。「Metamo card」と呼ばれるカードに、労働者自身がスマートフォンのGPS(全地球測位システム)位置情報を用いて勤務状況を記録する仕組みを作り上げました。
Metamoのプロジェクトの主な特徴は以下のとおりです。
- 労働者ひとりひとりが持つスキルをパッと見て分かるようにし、これまでの就労実績に対して客観的な評価を下すことができるビジネスモデル
- メタモカードを使用することにより職歴の確かな証拠として提示をすることができ、迅速に就職活動を始めることができる
- サービス開始の段階から世界中での事業展開を掲げる
このように非常に先鋭的なビジネスモデルで海外の投資家からは一定の人気を博し、日本国内企業としては初となるICO案件に注目が集まりました。しかしながら蓋を開けると、約3万ドル(日本円で約300万円)ほどしか資金が集まらず、数億円を集めるという当初の目論見は外れてしまう結果になりました。
このICOが失敗したと評価されている主な原因として、
- ホワイトペーパーにトークンの価値の上昇に関する内容が不足していた
- 事前告知が2週間、一般のPRに関してはプレスリリース配信の代行サービスのみとPRが不足していた
といった点が挙げられています。
②160倍確定コイン(瀬尾恵子)
http://official-seno.com/lp/ico-push/
ゴールドマンサックスに勤務していたという経歴を謳い、「400兆円市場のプラットフォームを対象とした最低でも160倍の値上がり確定のICO」と大々的に広告を打ち出したICOです。
特徴として、
- 160倍の値上がり確定を謳う
- 至るところで「三日間限定」などの表記を用いて、射幸心を煽るような宣伝広告
- 信頼できる情報という点をプッシュする
などといった点が挙げられます。当然、投資家たちからは注目の的となり一時話題となりました。しかしながら蓋を開けると、
- ゴールドマンサックス社自体が在籍を否定(元ゴールドマンサックス勤務という肩書きは虚偽表示)
- 瀬尾恵子という氏名自体も虚偽の可能性が指摘される
など、詐欺的な要素が大きく話題になりました。その結果、ICOは中止となり、動画やHPも削除されました。
国内において大きな衝撃を与えたICO案件をいくつか取り上げました。失敗に終わったと評価されるICOには、特徴的な要素が数々存在します。以下で見ていきましょう。
(2)特徴
イギリスの仮想通貨専用のニュースサイト「NewsBTC」において、2017年度のICO案件は約半数近くが失敗しているとのレポートが掲載されました。このニュースからも分かる通り、詐欺目的のICOや、最低調達額に満たなかったICO案件は非常に多いというのが現状です。実際に失敗してしまったICOの特徴としては以下のような点が挙げられます。
- ホワイトペーパーの内容が不十分もしくは何を言っているのかいまいち分からない
- プロジェクトの責任者やメンバーの経歴が怪しい
- プロジェクト自体の質が悪く、ブロックチェーン技術を用いるメリットがない
- 未熟なブロックチェーン技術による暗号化などの失敗
- ICOが成功しやすい地域(先進国)とそうではない地域(発展途上国)がある
- 充分なPRをしておらず、認知度が低い
- 過度に特別感を演出したり、「価値が~倍になります!」などの文言でPRをしている
- 最低購入金額を高額に設定している
- 海外掲示板に名前がなかったり、Google広告に頻繁に出現する
これらの中でも、ブロックチェーン技術のレベルが低かったり、ホワイトペーパーできちんとトークンの価値を明示しない、といったことは絶対に防がなければなりません。また、投資家の立場に立ってみると、詐欺目的のICOには引っかかりたくないはずです。ですので、「詐欺っぽいな、怪しいな」とマイナスなイメージを抱かせてしまうようなPRをしたICOなどは資金調達に失敗する傾向にあります。
ICOを検討している事業者は、失敗してしまったICO案件を参考にして、同じ轍は踏まないようにしましょう。
5 ICOで成功するためには(失敗しないためには)
ICOを成功させるためには、過去の成功事例、失敗事例から学ぶことが最も手っ取り早いということがいえます。成功しているICOには共通点がいくつもあります。
- 各種法律規制についてのチェック項目
- ホワイトペーパーについてのチェック項目
- その他のチェック項目
以下でひとつひとつチェックしていきましょう。
(1)各種法律規制についてのチェック項目
①改正資金決済法(通称:仮想通貨法)上の「仮想通貨」にあたらないか
発行したトークンが以下の改正資金決済法上の「仮想通貨」にあたり、これを自社で「売買、交換等」をする場合には、「仮想通貨交換業者」としての登録が必要となってしまいます。
- 不特定の人に対して、金銭の代わりに決済手段として使うことができること
- その仮想通貨で売買などができる財産的価値であること
もっとも、登録をうけるには乗り越えなければならないハードルが高く、また、多いため、スタートアップ事業者が登録を受けることは事実上無理であると考えられます。そのため、改正資金決済法上の「仮想通貨」あたらないようにトークンを設計することが必要になってくるのです。
※改正資金決済法について詳しく知りたい方は「仮想通貨交換業の法律規制とは?改正資金決済法を弁護士が5分で解説」をご参照ください。
②改正資金決済法上の前払式支払手段にあたらないか
商品券やSuicaなどのように、【ユーザーが前もってお金を払ってチャージ(ポイントやアイテムの購入)を行う→その後に商品orサービスの決済を行う】といった仕組みをもつものを「前払式支払手段」といいます。
ICO事業者が発行するトークンが前払式支払手段にあたる場合には、いくつかの法律規制を課せられます。そのなかのひとつに、
- 多額の金銭を国に預ける義務(供託義務)
という法律規制があります。スタートアップ事業者にとっては、お金を集めるためにICOを行うのにもかかわらず、供託義務を課されてしまっては、思うようにICOを進めることができなくなるおそれがあります。ですので、「前払式支払手段」にあたらないようにトークンを設計する必要があるのです。
このように、各種法律規制についてのチェックは、まず始めに「仮想通貨」該当性を検討し、トークンが「仮想通貨」にあたらない場合に、「前払式支払手段」該当性を検討することになります。詳しくは、以下のフローをご確認ください。
※なお、前払式支払手段について詳しく知りたい方は「ICOの8つの法律規制と合法的資金調達のやり方とは?弁護士が解説」をご参照ください。
③金融商品取引法上の「ファンド規制」の対象にならないか
発行トークンが金融商品取引法上のファンド(集団投資スキーム持分)とみなされる場合は、ファンド規制の対象となります。多数の投資家から集めた金銭を用いて事業を運営し、その事業から発生した利益を投資家に分配するといった仕組みをファンド(集団投資スキーム持分)といい、このような仕組みをもったトークンは「有価証券」とみなされます。これを事業として行う場合には「第2種金融商品取引業者」として国から登録を受けなければなりません。
仮に、登録を受けずにICOを行うと、
- 最大5年の懲役
を科されてしまう可能性があります。
なお、現状では「STO(セキュリティトークンオファリング)」という形で、むしろ第2種金(or第1種金)の登録を得た上で、あるいは登録を持つ業者を通じてセキュリティトークンを販売していくスキームも存在しています。
④特定商取引法上の「通信販売」にあたらないか
ICOでは、トークンに付加価値を付けることで投資家に対して購買欲を煽ることが多いのですが、その付加価値が商品や提供するサービスとして付けられた場合は、「通信販売」にあたる可能性があります。通信販売規制の対象になると、
- クーリングオフが適用される
- 広告に対する規制
など、特定商取引法上のルールなどを守る必要があります。
⑤消費者契約法の規制対象ではないか
ICOに参加する大半が個人投資家です。そのため、投資家が消費者契約法上の「消費者」にあたるとみなされる場合には、注意が必要です。
この点、消費者契約法では「消費者」を以下のように定義しています。
- 消費者とは、事業or事業のために契約の当事者になるものを除いた個人のこと
仮に、個人投資家がこの消費者の定義に当てはまると判断された場合、ICOにまつわる取引自体が「消費者と事業者間のやりとり」と判断され「消費者契約法」の規制対象となる可能性があります。消費者契約法の規制対象になると、
- あえて重要な事実を隠す
- 虚偽の説明や表示をする
などといったように、投資家(消費者)が不利益を被るようなことをわざとしてしまうと、取引にまつわる行為すべてが「取り消し」の対象になってしまいます。また、これによる損害賠償義務を負うなど、ICOプラン自体が根幹から崩れてしまうおそれがありますので注意が必要です。
⑥詐欺にあたらないか
ICOではホワイトペーパーを作成する事業者が大半を占めています。ホワイトペーパーに書いてあることが何も実現しなかった場合には「詐欺罪」にあたる可能性が極めて高いでしょう。詐欺にあたってしまうと、
- 民事では、出資を受けた金額を含めた「損害」賠償義務
- 刑事では、最大10年の懲役
が科される可能性があります。
ICOを実施したい事業者は、ホワイトペーパーへの記載などに細心の注意を払う必要があります。投資家の意思決定に重大な影響を与える事実については、セールストークの範囲内に抑えて記載していきましょう。
⑦税務面にも注意する
意外と見落としがちなのが、ICOによって調達した資金にかかる「税金」の部分です。具体的には、調達した資金に関して、
- 法人税など
- 消費税
を納める必要があります。
このうち、法人税については①収益、②負債、③資本のいずれかで計上することになります。
消費税については、発行するトークンが「仮想通貨」にあたる場合には非課税となります。反対に、仮想通貨にあたらない場合には、調達額に対して8%が課税されることになります。
※仮想通貨に関する税金の問題について詳しく知りたい方は、「仮想通貨にかかる税金の確定申告・計算方法・課税のタイミングとは?」をご覧ください。
ここまで各種、抵触しそうな法律規制のチェック事項をざっくりと見てきました。
※さらに詳しく知りたい方は、「ICOの8つの法律規制と合法的資金調達のやり方とは?弁護士が解説」をご覧ください。
(2)ホワイトペーパーについてのチェック項目
①記載されているメンバーの素性は明らかになっているか
どのような人間がプロジェクトに関与しているかどうかは、投資家にとって非常に重要な情報です。ICOに係わっている人間の経歴を詐称してお金だけを集めるような事業者も多いため、投資家サイドが調べればすぐに素性が明らかになるよう、プロフィールを書くなどして信用性の担保を必ず確保しておくべきです。
②プロジェクトの実現可能性が高いことをきちんと明示しているか
ホワイトペーパーに記載されているプロジェクト内容が、机上の空論となっているものは少なくありません。そのような場合、投資家は「実現したらすごいけど、本当に実現するの?」という疑問を必ず抱きます。実現可能性が高いということをしっかりとアピールすることで投資家を納得させなければ、ICOを成功させるのは難しいということが言えるでしょう。
③トークンの価値の上昇可能性についてきちんと説明しているか
投資家は、いくら良質なビジネススキームでも上場の可能性がなければ、そもそも投資する価値はないものと判断します。ですので、上場の可能性が高いということをきちんと明示することはICOの成功率の上昇に繋がるということがいえます。とはいえ、確実に上場すると言い切ってしまうと「発行トークン=仮想通貨」とみなされ、仮想通貨交換業者として登録を受けなければならなくなる可能性が高まるため、あくまで可能性にとどめておくべきです。
以下は、この点に関する一般社団法人日本仮想通貨事業者協会の見解です。金融庁もこの見解に寄った考え方を示しているため注意が必要です。
トークンの発行時点において、将来の国内又は海外の取引所への上場可能性を明示又は黙示に示唆している場合はもちろん、そのような示唆が存在しない場合であっても、発行者が、本邦通貨又は外国通貨との交換及び1号仮想通貨との交換を、トークンの技術的な設計等において、実質的に制限していないと認められる場合においては、仮想通貨に該当する可能性が高いため、仮想通貨に該当しないとする個別具体的な合理的事情がない 限り、原則として、トークン発行時点において、資金決済法上の仮想通貨に該当するものとして取り扱うことが適当と考えられる
引用:一般社団法人日本仮想通貨事業者協会
④懸念されるリスクに対してのアプローチ方法の記載はあるか
どのようなプロジェクトにも問題点は必ず存在します。「どうやってその問題を乗り越えるか」といった対策についての実現可能性が高ければ高いほど投資家の信用度は増していきます。悪いICO案件では、リスクをひた隠しにしますが、そのようなことは絶対にしないようにしてください。
⑤どのような目的のプロジェクトかをきちんと明示しているか
ホワイトペーパーを読む人間はプロジェクトの目的を知りたがっています。ICOにおいて最も重要なのはプロジェクトの内容そのものですから、どのような目的でプロジェクトを始めたのかを必ず明示するようにしましょう。
⑥他のトークンとの違いを説明しているか
「それ、~っていうトークンと一緒じゃん」と思われてしまうと、資金を集める際の障壁にもなり得ます。もし、革新的なトークンを設計したのであれば、「自社が発行したトークンはこの点で差別化を図っていますよ」といったことをプッシュしたPRをするべきです。
⑦プロジェクトとブロックチェーン技術はマッチしているか
ブロックチェーン技術を無理矢理盛り込んでいるようなICO案件は意外に多いものです。そもそもブロックチェーン技術を使用しなくてもいいプロジェクトであると思われないように、その親和性をきちんと明示するようにしましょう。
(3)その他のチェック項目
①スマートコントラクトのシステムを組めるエンジニアを確保したか
「スマートコントラクト」とは、あらゆる契約にまつわる取引行為全てを自動的に実行していくものです。スマートコントラクトはブロックチェーン技術の根幹とも言うべき技術であり、ここがクリアできないようではICOを行うこと自体無謀です。高い技術力を持ったエンジニアを確保できるように努めてください。
②コミュニティを形成し、投資家間が意見交換できる場を設けているか
ICO詐欺案件に多いのですが、コミュニティが存在しない場合があります。コミュニティで意見交換ができないようなICO案件には投資家は寄り付かないものと考えてください。
③PR方法を戦略的に組み立てているか
どんなに優れたICO案件でも、多くの投資家に知ってもらわなければ意味がありません。とはいえ、PR方法を誤ると詐欺なのではないかとも疑われてしまいます。こまめにPRをすることは大事なのですが、過剰にならない程度に戦略的にPRを行っていくことが非常に重要になってきます。
6 小括
ICOは成功よりも失敗している企業の方が多いというのが現状です。今回紹介した成功事例、失敗事例の他にも参考になる事例は数多くあります。ICOを成功に導く絶対的な方法はありませんが、過去の事例を参考にしながら、ICOを円滑に進めていきましょう。
7 まとめ
これまでの解説をまとめると、以下のようになります。
- ICOの成功・失敗を分ける大きな要素は、資金調達額の大小にあり、調達額が多ければ多いほど成功であるということがいえる
- ICOの成功事例として、COMSA、ALIS、QASH、Telegram、Dragon coin、EOSなどがある
- 成功しているICOの特徴として、①ビジネスモデルが新しく、かつ解決の難しい問題に対してダイレクトにアプローチしている、②ビジネスモデルとブロックチェーン技術のマッチ、③トークンの価値上昇についてホワイトペーパーで説明している、④プロジェクトに携わるメンバーの素性が明らかである、⑤コミュニティが存在し、ユーザーが活発に意見交換を行っている、⑥戦略的なPRを行っている といった点が挙げられる
- 国内で失敗しているICOにはMetamoや160倍確定コインなどがある
- 失敗しているICOの特徴として、①ホワイトペーパーの内容が不十分、②プロジェクトの責任者やメンバーの経歴が怪しい、③プロジェクトの質が悪く、ブロックチェーン技術を用いるメリットがない④未熟なブロックチェーン技術による暗号化などの失敗、⑤地域差がある、⑥不十分なPRにより認知度が低い、⑦過剰な演出やPR、⑧最低購入金額を高額に設定している、⑨海外掲示板に名前がなかったり、Google広告に頻繁に出現する などといった点が挙げられる
- ICOを成功させるためには、①各種法律規制を乗り越える、②ホワイトペーパーの戦略的な作成、③戦略的なPRの実施、などが必要である