雇用契約書の書き方は?作成する際の4つの注意点を弁護士が解説!

はじめに

正社員をはじめ、事業者が労働者を雇用する場合には、事業者と労働者との間で雇用契約書が取り交わされます。

もっとも、雇用契約書を作成する際には、いくつかある重要なポイントをきちんと押さえることが必要です。
そうすることで、労働問題や労務トラブルの防止にも繋がります。

そこで今回は、雇用契約書の書き方を中心に、その際の注意点にも触れながら弁護士がわかりやすく解説します。

1 雇用契約書とは|労働条件通知書との違いは?

雇用契約」とは、労働者と事業者(雇用主)の間で、以下の2点を約する契約のことをいいます。

  • 労働者が事業者の労働に従事すること
  • 事業者が労働者に報酬を支払うこと


雇用契約を交わす際には、雇用契約書を作成することが一般的ですが、その際に併せて労働者に交付される書面が「労働条件通知書」です。

労働条件通知書」とは、労働条件が記載された書面のことをいいますが、雇用契約書と労働条件通知書を混同している方もいらっしゃるようです。

以下のように、雇用契約書と労働条件通知書には明確な違いがあります。

  • 合意したことを示すものか否か
  • 法律で義務付けられているか


雇用契約書は、労働者と事業者が「合意したこと」を示すものですが、労働条件通知書は、事業者が一方的に労働条件を明示しているものであり、双方が合意したことを示すものではありません。

また、雇用契約書は、法律で作成が義務付けられているわけではありません。
これに対し、労働条件通知書は、書面による労働条件の通知が法律で義務付けられていることから、その作成が義務付けられているといえます。

2 事業者に義務付けられる労働条件の明示

雇用契約書と労働条件通知書は、一つの書面にまとめて交付されることも少なくありません。

事業者は、どのような方法をとるにせよ、以下に該当する労働条件については、これを労働者に明示しなければなりません。

  1. 契約期間
  2. 就業場所
  3. 従事する業務の内容
  4. 始業時刻・終業時刻
  5. 所定労働時間を超える労働の有無
  6. 休憩時間・休日、休暇
  7. 賃金の決定・計算及び支払の方法
  8. 賃金の締切り・支払の時期
  9. 昇給に関する事項
  10. 退職に関する事項


雇用契約書は、法的に作成が義務付けられているわけではないため、契約書を作成しなかったからといってそのことを理由にペナルティを科されることはありません。

ですが、労働条件の明示は法的に義務付けられているため、これに違反した場合には、最大30万円の罰金を科せられる可能性があります。

3 雇用契約書を作成する際の注意点

雇用契約書を作成する際には、特に以下の点に注意することが必要です。

  1. 雇用期間
  2. 労働時間制
  3. 転勤の有無
  4. 退職・解雇に関する事項

(1)雇用期間

試用期間」を設ける場合には、試用期間がもつ意味を正確に理解することが必要です。
誤解をしている人もいらっしゃると思いますが、有期契約として試用期間が設けられているわけではありません。

試用期間で結果を残さなかったからといって、試用期間経過後に簡単に本採用を拒否できるというものではありません。

3か月で適性を見極めたいという場合には、試用期間ではなく、3か月の「有期契約」を締結することで、3か月経過後に契約は終了します。
正社員としての適性が認められれば、改めて正社員として「無期契約」を締結することも可能です。

また、有期契約を締結する場合には、契約期間と更新条件を雇用契約書に明記する必要があります。

有期契約では、更新時におけるトラブルが少なくありません。
更新のための条件をあらかじめ定めておくことで、労働者とのトラブルを防ぐことができます。

(2)労働時間制

近年では、フレックスタイム制や裁量労働制など、変則的な労働時間制を採用する企業が増えています。

変則的な労働時間制を採用する場合は、残業代の有無にも影響するため、雇用契約書にその旨を明記することが必要です。
この点について明記していないと、残業代などについて労働者とトラブルになる可能性があるため、注意するようにしましょう。

また、フレックスタイム制や裁量労働制を採用する場合には、別途「労使協定」を締結することが必要です。

(3)転勤の有無

先に見たように、「就業場所」は事業者が労働者に明示すべき労働条件の一つです。

労働者にとって、就業場所がどこになるか、転勤があるかないかは、重要な要素であることが多いです。

そのため、転勤の可能性がある場合には、雇用契約書に「転勤命令には従わなければならない」ということを定めておく必要があるでしょう。

(4)退職・解雇に関する事項

「退職・解雇」は、事業者と労働者がトラブルになりやすい事柄の一つでもあります。
そのため、可能なかぎり、細かく具体的に定めておくことが大切です。

たとえば、自己都合による退職の場合は、引継ぎなどが必要になるため、「自己都合による退職の場合は○日以上前に申し出ること」といったルールを定めておくことが必要になるでしょう。

また、解雇については、どのような場合に普通(懲戒)解雇となるかなどを、できるだけ具体的に明記しておくことが必要です。

もっとも、雇用契約書に書き切れない場合は、「解雇等については就業規則の定めによる」などとして、就業規則の定めに委任することも可能です。

4 まとめ

労働者とのトラブルを避けるためには、雇用契約書をきちんと作成することが必要です。

労働者に明示すべき労働条件を基本として、実態に合った雇用契約書を作成するようにしましょう。

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勝部 泰之(弁護士|東京弁護士会・登録番号35487/中小企業診断士) 注力:知的財産権・著作権/ライセンス、ブロックチェーン、データ・AI法務 GWU Law LL.M.(知的財産法) 事業の成長とリスクを両立する実務寄りの助言に注力しています。

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