はじめに

2017年秋以降、国内でもICOが活発になっています。金融庁による規制がグレーなうちに、このICOバブルに乗ってICOをしたいけれども、具体的なやり方や手順、また、法的な問題点がわからないという事業者の方は多いのでないでしょうか。

法的にいまだ未整備な部分が多いICOで合法的に資金調達をするには、何をどのように始めたらいいのか、どのような点に気をつけたらいいのか分からないですよね。

そこで今回は、ICOとは何か、その法的な問題点に始まり、ICOをする際のやり方・流れ・手順等について、実際の案件も交えながらわかりやすく解説していきます。

目次

1 ICOのおおまかな内容

icoとは

(1)ICOとは

ICO(イニシャル・コイン・オファリング)」とは、企業が「トークン」と呼ばれる独自の暗号通貨を発行し、これを投資家に買ってもらうことで資金調達をすることをいいます。最近注目を集めている新しい資金調達方法の一種で、証券会社や取引所の審査を経る必要がなくスピーディーに多額の資金を調達することができるため、主にスタートアップ企業に多く取り入れられています。

ICOの特徴として、企業が発行する「トークン」は、円やドルなどではなく、イーサリアムビットコインなどの仮想通貨で購入してもらう、という点があります。ICO企業は、トークンの発行と引き換えに手にした仮想通貨を、交換所で円などに換金することで資金調達をすることができます。

ICOの仕組みをかんたんに図で表すと、以下のようになります。

ICOの仕組み

なお、企業がICOを行うメリットとしては、

  • 証券会社などの第三者を介さずに資金調達ができること
  • 株式のように支配権が移転したり、出資者(投資家)に対して配当を支払う義務がないこと
  • 社債のように、出資者(投資家)に対して利息を支払う義務がないこと
  • スピーディーにたくさんのお金を集めることができること

などがあります。

このようなメリットもあり、2017年の秋以降、日本でもICOが活発となっています。中でも、Quoine(コイン)社が発行したトークンのQASH(キャッシュ)は、開始からたった1日で70億円を調達し、最終的には、3日間で日本発のICO最高額・約124億円を調達しました。このように、ICOでは、スタートアップ企業が銀行などの金融機関からはおよそ調達できないような、多額のお金を集めることも可能なのです。

(2)ICOと他の資金調達方法との違い

ICOとよく似た資金調達方法に、以下の2つがあります。

  1. IPO
  2. クラウドファンディング

ICOとの違いについて順番にみていきましょう。

①IPO

IPO(イニシャル・パブリック・オファリング)」とは、新規株式公開のことで、ざっくりいえば、企業が上場するときに新規株式を発行し、それを投資家に買ってもらうことでお金を集める方法です。資金調達の仕組みとしてはICOとほぼ同じですね。

もっとも、IPOの場合には、証券会社などの第三者を間に挟む必要があり、各証券会社ごとに明確なIPOルールが設けられています。

また、新株を発行すると、既存株主にとっては持分が希薄化することになります。持分の希薄化が起こると、既存株主(多くの場合ファウンダーや役員)にとっては配当や議決権が減るといったデメリットがあります。

この点、ICOでは以下のようになっています。

  • 資金調達において第三者を介入させる必要がなく、ICO企業が独自に行うことができる
  • ICOについてのルールはとくに無く、仮想通貨法(改正資金決済法)などの法律を守っていれば、あとは企業が自由にルールを決められる
  • ICOではあくまでも「トークン」を発行するだけなので、株式のような持分比率の低下は生じない

これらの点はIPOに比べてかなり有利な点といえますね。

もっとも、ICOについて明確なルールが無いことで、ICO企業と投資家の間で認識の不一致が起きたり、投資家保護が不十分であったりと、問題点もあります。この点については、2018年4月10日、金融庁での「仮想通貨交換業等に関する研究会」にて規制の方向性が議論され、また、一部団体からICOのルール確立が提言されています(ICOビジネス研究会「提言レポート」参照)。ICO関連ルールの整備に関しては、今後の動向に注目です。

②クラウドファンディング

クラウドファンディング」とは、様々なアイデアやプロジェクトを実現したい起案者が、専用のサイトを通じて資金提供を呼びかけ、共感した支援者たちからお金を集める方法です。有名なクラウドファンディングサイトとして、CAMPFIREMakuakeがあります。

クラウドファンディングは、広く不特定多数の人から資金を調達する、という点でICOと似ています。また、支援者(ICOの場合は投資家)に対し、対価として物やサービスなどの特典を提供するという点でも似ています。

もっとも、クラウドファンディングの場合は、起案者は出資してくれた支援者に対して直接物やサービス、特典を提供します。

また、クラウドファンディングでは、出資者が得た物やサービスなどの権利を他の出資者との間でやり取りすることはありません。

これに対して、ICOでは、以下のようになっています。

  • 投資家は、出資の対価として「トークン」を受け取り、そのトークンを通して(トークンの性質によって)物やサービス、配当などの特典をうけとることができる
  • 基本的には、投資家は、手に入れた「トークン」を譲渡したり売却して利益を出すことが想定されている

手に入れたトークンを売却することで利益を得られるという点で、ICOの方が投資家を集めやすいと考えられます。

以上がICOのおおまかな内容になります。ICOについてさらに詳しく知りたい方は、「ICOの8つの法律規制と合法的資金調達のやり方とは?弁護士が解説」をご覧ください。

2 ICOをする上で知っておくべきキーワード

キーワード

ICOの具体的な解説をする前に、まずはICOをする上で知っておくべきキーワードについて確認しましょう。

(1)仮想通貨とは

仮想通貨(暗号通貨)」とは、インターネットを通じてユーザーが直接やりとりすることのできる通貨のことをいいます。「通貨」という名前がついていますが、私たちが普段使っている円やドルなどのような実物はなく、公的な発行機関もありません。代表的な仮想通貨として、イーサリアムビットコインがあります。

さて、ICOでは、企業が発行するトークンを円などの「現金」ではなく「仮想通貨」で買ってもらう、ということは先ほど解説しました。そのため、投資家としてはまず、円やドルなどの現金を仮想通貨に変える必要があります。なお、ほとんどのICO案件において、上で挙げたイーサリアム・ビットコインによるトークンの購入を可能としてるようです。

トークンを世界中で使える「仮想通貨」で買ってもらうことで、国ごとに違う「通貨の単位」という壁がなくなるため、

  • 企業:国内だけでなく、国外からも資金を集めやすくなる(より多くのお金を集めることができる)
  • 投資家:国内に限らず、面白そう・バリューが出そうな国外企業に投資しやすくなる

という、双方にとってのメリットがあります。

※仮想通貨についてさらに詳しく知りたい方は、「仮想通貨の法律規制とは?仮想通貨法6つのポイントを弁護士が解説!」をご覧ください。

(2)トークンとは

トークン」とは、ICOをするときに企業が発行する独自の暗号通貨のことをいいます。この「トークン」と引き換えに手にしたイーサリアムなどの仮想通貨を取引所で現金に換金することで、企業は資金を得ることができます。そのため、ICOという概念においてトークンは必要不可欠なものなのです。

トークンはICO企業独自の「仮想通貨」と表現されることがありますが、トークンの設計によっては「仮想通貨」にあたらない場合もあります。むしろ、仮想通貨にあたる設計をしてしまうと国から「仮想通貨交換業」の登録を受けなければならないため、ICO企業としては、発行するトークンを「仮想通貨」にあたらないように設計する傾向があります。

なお、トークンの種類は、おおまかに以下の5つに分けることができます。

  1. 仮想通貨型トークン
  2. 会員権型トークン
  3. プリペイド型トークン
  4. ファンド型トークン
  5. アプリケーション・プラットフォーム型トークン

※トークンの分類についてさらに具体的に知りたい方は、「ICOの8つの法律規制と合法的資金調達のやり方とは?弁護士が解説」をご覧ください。

(3)ホワイトペーパー

ホワイトペーパー」とは、ICOに関する情報をまとめたもので、事業計画書のようなものをイメージしてもらうとわかりやすいかと思います。株式上場の場合は「目論見書」がこれにあたります。より多くの資金を集めるにはたくさんの投資家からトークンを買ってもらう必要があるので、自社のICOに参加することのメリットやプロジェクトの計画・魅力などをアピールする、というわけです。なお、「ホワイトペーパー」といっても紙媒体のものはほぼ無く、ほとんどがICOをする企業のホームページなどに掲載されることになります。

この「ホワイトペーパー」の作成は、現状では「義務」ではありません。もっとも、さきほど述べたように、ホワイトペーパーはより多くの資金を集めるための貴重なツールであり、アピールポイントです。そのため、ほとんどのICO企業がホワイトペーパーを作成することになります。なお、ホワイトペーパーに記載する内容としては以下のようなものがあります。

  • ICOの開始日や締切日
  • 資金調達によって実現しようとしてるプロジェクトの具体的な内容
  • プロジェクトとトークンの関連性や技術的な説明
  • トークンの性質や機能、投資家がトークンを保有することのメリットなど
  • トークンの総発行量や割当先
  • ICO実施における最低調達額や最大調達額
  • プロジェクトの開発ロードマップ
  • トークンの法的性質やリスクについての説明

では実際に、日本初の大型ICO案件だった「COMSA」プロジェクトで作成されたホワイトペーパーをみてみましょう(一部抜粋)。

comsa1

comsa2

comsa3

このように、ホワイトペーパーを使ってICOに関する情報を公開・発信し、投資家たちにプロジェクトの魅力や価値を伝えた上で、ICOに参加するかどうかを判断してもらいます。

ちなみに、COMSAのホワイトペーパーは37ページに渡り、ICOの結果としては最終的に約109億円の調達に成功しています。

(4)イーサリアム

ここまでの解説の中で何度か名前が出てきましたが、「イーサリアム」とは、仮想通貨プラットフォームのことで、その中で独自の仮想通貨「イーサ」が使用されています(もっとも、「イーサリアム」と表現されている場合でも、プラットフォームではなく「仮想通貨」の方を指す場合もあります。この記事内においても、基本的に「イーサリアム」という場合には「仮想通貨」の方を指しています。)。ICOにおいては、この「イーサリアム」を利用したスキームが多く見られ、たとえば「MobileGO」や「Mysterium」、「ZrCoin」などがあります。

なぜICOにおいてイーサリアムが利用されることが多いのか、ざっくり言えば、

  • イーサリアムに使用されている技術はビットコインよりも優れているから
  • 自分たちで開発するよりも、既存の技術に乗っかった方が楽だから

という理由です。技術的な話はよくわからない方も多いかと思いますが、イーサリアムには「スマートコントラクト」という技術が搭載されています。この「スマートコントラクト」によって、取引履歴だけではなく、双方の契約内容についても保証されます。今まではこの「保証」の部分を人的にやっていたので、スマートコントラクトの技術を使えば時間もコストもカットできます。そのため、新たに独自トークンを作ろうとする企業もこの技術を利用したいと考えますよね。

このとき、イーサリアムに使用されているのと同じ技術を使って独自トークンを作成・発行する方が、1から新しいトークンを作るよりはるかに簡単です。また、同じ技術を使っていればウォレット(仮想通貨を保管しておく”お財布”のこと)も同じものが使えます。要するに、

  • 発行者側のメリット:独自トークンの発行がラクになる上に優れた機能がついてくる
  • 投資家側のメリット:トークンの管理がラクになる

といったように、双方にとってメリットがあるのです。

そうすると、独自トークンを買うときに使われる仮想通貨についても「親戚みたいなイーサリアム(イーサ)を使ってもらおう」となるわけです。

以上が、イーサリアムを使ったICO案件が多い理由です。ちなみに、イーサリアム自体も初期段階でICOによる資金調達を行っています。

(5)THE DAO

The DAO」とは、プロジェクトの名前で、「投資ファンドを非中央集権で行うこと」を目指すプロジェクトです。投資ファンドというと、普通は投資家から集めた資金を、運営が決めた投資先に投資し、利益が出たらこれを投資家に配分するという仕組みです。一、方THE DAOでは、資金を集めたり投資先を決めたりする運営者はいません。ブロックチェーン技術などを駆使して資金を集め、「DAO」という独自トークンを保有する投資家たちの賛同を得ることで投資先を決めていきます。

THE DAOはプロジェクトを実現するため、イーサリアムを利用したICOを行いました。もっとも、調達した資金の半分近く(約65億円)をハッキングにより盗まれてしまうという事件が発生します。その後、イーサリアムは、取引そのものをなかったことにする手続きを行いますが、そのときにイーサリアムの分裂騒動が起きてしまいます(ハードウォーク)。

THE DAOの件は、ICOに始まり仮想通貨の分裂騒動に至ったという点で、業界全体に波紋を広げました。

以上がICOをする上で知っておくべきキーワードです。次の項目から、ICOの具体的な内容に入っていきます。

3 ICOのメリット・デメリット(リスク)

メリット デメリット

ここまでの間に、ICOのメリットをいくつか紹介しました。もっとも、ICOによる資金調達はメリットばかりではありません。企業から見た場合・投資家から見た場合に、それぞれメリットもあればデメリット(リスク)もあります。

以下で順番にみていきましょう。

(1)ICO企業からみたメリット・デメリット(リスク)

①メリット

企業がICOをするメリットとして以下の点が挙げられます。

・短期間でスピーディーにたくさんの資金を調達できる

ICOは、証券会社などの第三者を挟む必要がなく、審査などもないため、準備さえ整えれば自分たちだけでスピーディーに資金調達をすることができます。また、ベンチャー企業の場合、銀行などの金融機関からは大した額の融資を受けられませんが、ICOをすれば、プロジェクトの内容次第では数十億以上のお金を集めることだってできます。

・プロジェクトの構想段階から資金を集められる

銀行から融資を受けたり、投資家に投資をしてもらうためには、これまでの実績を示した上で判断してもらう必要がありました。この点、ICOではプロジェクトの将来性や魅力に対しての投資という一面があるため、構想段階から資金調達をすることができます。この点は、事業を興したばかりのベンチャー企業とも相性がいい点といえます。

・投資家への対価の設定が自由にできる

ICOにおいて投資家への「対価」とは、トークンを保有することによって投資家がどのような特典を受けられるか、の部分です。これについては、ICO企業側がトークンをどのような性質にするか自由に決めることができます。たとえば、自分たちのプロジェクト内でのみトークンを使えるようにしたり、トークン保有者に対して優待や利益の還元をするなど、プロジェクトの内容や性質によって柔軟に決定することができます。

・世界中から資金調達することができる

ICOによる資金調達は、自社の独自トークンを仮想通貨で購入してもらう、という仕組みです。現金ではなく仮想通貨で投資してもらうことによって、円やドルという通貨の壁が無くなり、プロジェクトに賛同してもらえさえすれば世界中の投資家からお金を集めることができるのです。

・投資家に経営権を渡さなくて良い

IPO(新規株式公開)の場合、株を買ってもらって資金を集められる一方、持分に応じて議決権などを渡すことになります。一方、IPOの場合はあくまでも「トークン」を発行するのみなので、経営権に影響はまったくありません。

②デメリット(リスク)

企業がICOをする上でのデメリット(リスク)として以下の点が挙げられます。

・ICOへの法規制やルールが不透明であること

ICOについては、「ICO詐欺」といって、投資家から大金を調達したものの全くプロダクトを作らない事例が多くみられます。そのため、規制当局によるICOへの風当たりは冷たく、ICOを特に日本国内でやるのは難しい状況となっています。

とはいえ、ICOを直接規制する法律がなく、規制当局である金融庁のスタンスも明確ではないため、「実際に何がセーフ(合法)で、何がアウト(違法)なのか」の線引きが難しく、ICOをする際の法的リスクを把握しづらいという点がデメリットといえます。

・ICOコンサルフィーがかかること

ICOをする際にやるべきこととして、①トークンの発行などの技術面の設計、②マーケをはじめとしたビジネス面の設計、③法律規制を回避するためのリーガル面でのスキーム構築などがあります。これらをすべて自前でやりきることも不可能ではありませんが、実際には、①~③をICOコンサル会社や特定の法律事務所アウトソースするのが通常です。

もっとも、ICOに詳しいプレイヤーが日本では絶対的に不足している関係で、コンサルフィーも比較的高額なものになっています。

そのため、ICOをする際には、成功するかどうかわからない状況下で「持ち出し」の費用が結構かかってしまうのがデメリットです。

・トークンが流通しない可能性がある

ICOによって資金を調達できたとしても、発行した独自トークンが予想に反して流通しない可能性があります。流通量が上がらなければ、基本的にはトークンの価格は上がらず低いまま推移を続けることになり、これを理由にさらに投資家が寄り付かなくなる、という悪循環に陥るかもしれません。

どのようなスキームでトークンを流通させていくかは、ICOをする前にきちんと検討しなければなりません。

・一部の投資家による買い占めの可能性がある

トークンを上場した場合、市場で取引をされることによって価格が上がったり下がったりします。このとき、一部の投資家によってトークンを買い占められてしまうと、価格が不当に上がったり、逆に流通が滞って価格が下がってしまう可能性もあります。

これを避けるためにも、最初にトークンセールを行う際には購入制限を設けるなど、対策を考えておくことが大切です。

(2)投資家からみたメリット・デメリット(リスク)

①メリット

投資家がICOに参加するメリットとしては以下の点が挙げられます。

・大量の儲けが見込める

投資家がICOに参加する理由のほとんどが「儲けたいから」です。ICOの段階で安い価格でトークンを買い、プロジェクトが成功もしくはトークンの上場により価格が爆上がりしたタイミングで売り抜ければ、購入価格と売却価格の差額が利益となります。

とくに、ICOによって発行される独自トークンは、初めは低い価格設定がされていることが多く、価格が上がることによる利益を狙いやすい状態といえます。

・国外の企業や無名のベンチャー企業でも気軽に投資できる

ICO企業のメリットの部分でも述べましたが、ICOに参加するには仮想通貨を使うため、外国の企業にも気軽に投資することができます。また、ICOをするのはほとんどがベンチャー企業なので、普通の株式投資などでは出会えないような新進気鋭のベンチャー企業を見つけることもできるでしょう。

・少ない額から投資できる

今までは、企業への投資といえばベンチャーキャピタルや銀行・大企業など、莫大な資金を持っている必要がありました。この点、ICOなら、個人が投資できる少額の範囲で投資を始められます。

②デメリット(リスク)

最後に、投資家がICOに参加する上でのデメリット(リスク)としては以下の点が挙げられます。

・元本割れの可能性がある

トークンを買っても、その価値は必ず爆上がりするとは限りません。わずかにしか上がらない可能性もあるし、買ったときの価値より下がる可能性もあります。そうすると、利益を出すどころか損をすることになってしまいます。

株式など他の投資でも同じことが言えますが、必ず利益を上げられるとは思わずに、きちんと値下がりの可能性も考慮しておくことが大切です。

・詐欺案件の可能性がある

ICOはとても手軽な資金調達方法であるが故に、それらしいプロジェクトを発表してお金だけ集めてやろう、という詐欺案件が横行しています。

このような詐欺被害に遭わないためにも、ICO企業の情報についてきちんと裏付けをとったり、ホワイトペーパーの内容に怪しい点が無いかなど、投資家側による慎重な判断も求められます。

・トークンの利用範囲が狭い可能性がある

投資家としては、トークンを取引所で売ったり交換したり、利益を上げるために取引をしたいと考えている人がほとんどでしょう。ですが、トークンは必ずしも上場されるとは限りません。そうすると、基本的にそのトークンは発行企業のプラットフォーム上でしか使用することができません。また、トークン自体に譲渡制限などの一定の「しばり」がついている場合もあります。

トークンを買った後に「これは想定外だった!」と後悔することのないように、トークンをどの範囲でどのように利用することができるのか、また、上場の予定はあるのかなど、細かい部分についても確認しておくようにしましょう。

ICOのプレイヤーは、以上のメリット・デメリットを考慮したうえで、ICOを実施(参加)する必要があります。

4  ICOの歴史

ico歴史

新たな資金調達方法であるICOがはじめて行われたのは、2013年の「マスターコイン」で、約500万ドルの調達に成功しました。これを皮切りに世界の起業家やスタートアップ企業は、金融機関やベンチャーキャピタルからの資金調達ではなく、ICOによる資金調達に注目し始めました。

そんな中ICOを世に広く知らしめたのは、2014年に行われた、初の大型ICO案件である「イーサリアム」です。ICO開始からわずか12時間で約2400万円を調達し、最終的には42日間で約16億円の資金調達に成功しました。現在の時価総額はビットコインに次ぐ第2位で、ゆくゆくはビットコインを追い抜くとも言われていますね。

イーサリアムのICOが成功した後、いくつかのプロジェクトでICOが行われましたが、本格的に普及し始めたのは2017年5月以降と言われています。次の項目で説明するとおり、実際に、たくさんのICO成功事例が出てきました。

5 ICOに成功した企業の事例

事例

これまでに行われたICOの中でも、とくに多額の資金調達に成功したプロジェクトを紹介します。どのようなプロジェクトが多くの投資家から支持を受けているのか、また、それぞれのICOの特徴など参考にして、自社でのICOに活用していきましょう。。

以下の表は、ICOによる資金調達ランキングです(2018年4月1日時点)。

資金調達ランキングかい

この中から、いくつか具体的にみていきましょう。

(1)Telegram ICO(約1800億円)

teregram

https://ico-telegram.org/

調達額第1位はロシア発ICOです。メッセージアプリ「Tereglam」が先日、ICOの史上最高額・約1800億円の調達に成功しました。アプリのユーザー数は世界で2億人ほどで、すでに巨大な見込み市場があったためここまでの調達額に至ったのではと考えられます。

「Telegram Open Network(TON)」というプロジェクト名で、Tereglamユーザーはこのプラットフォーム上でトークン(Gram)を使い、国外にも手軽に送金できるようになるようです。中国のチャットアプリ「We Chat」で送金するのと同じ感覚で、仮想通貨の送金が可能となります。

ランキング2位に5倍以上の差をつける、超大型ICOとなりました。

(2)EOS(約323億円)

eos

https://eos.io/

調達額第4位がこちら。block.oneという技術ソリューションのデベロッパーが行ったICOです。分散型アプリケーションをサポートするプラットフォームである「EOS」のホワイトペーパーには、

  • 配布トークンの使い道が一切ないこと
  • ICOの期間は約1年間であること

が記載されていて、一部では「地雷ICO」と呼ばれたりもしていました。

EOSのICOは他のものに比べて斬新で、その特徴は以下のようになっています。

  • EOS全体で10億トークンを発行する(このうち1億トークンを運営が保有)
  • 第1次フェーズに2億トークンを放出する
  • その後、24時間毎に200万トークンを放出する
  • これを350日繰り返し、7億トークンを放出して終了

投資家側からすると、取引所とICOの両方でEOSを買うことができるので、その日の価格が安い方から買える、という点がメリットです。

EOSトークンには何も使い道がなく、地雷ICOなんて呼ばれていましたが、2回のICOで合計約323億円を調達しています。この金額は、2017年に行われたICOの中で第1位となっています。

(3)PARAGON(約204億円)

paragon

https://paragoncoin.com/login

調達額第8位の「PARAGON」は、大麻を一括管理するプラットフォームの構築を目指したプロジェクトです。一見すると「え、それアリなの?」と思ってしまいますが、あくまでも「大麻が違法に流通するのを防ぐために大麻×ブロックチェーンのプラットフォームを構築して、質のいい大麻製品を消費者に届けられるよう、合法化を目指す真面目なプロジェクト」なのです。

なかなか面白い(といっても賛否両論ありそうな)プロジェクト内容で、約204億円の調達に成功しました。

こちらのトークン「PRG」はすでに海外の取引所に上場されています。

(4)QASH(約124億円)

QASH

https://liquid.plus/ja/#next

冒頭でも出てきた日本発のICOです。仮想通貨取引所を運営するQUOINE社LIQUID(リキッド)というプラットフォームで発行されたトークンが「QASH(キャッシュ)」です。

当初1週間~1ヶ月と言われていたトークンセール期間をなんと3日間に短縮し、投資家を困惑させました。さらに、3日間のトークンセールにもかかわらず目標調達額が80億円強だったため、強気なICOだった印象があります。もっとも、目標額にはわずか1日で到達したうえ、同時期に盛り上がりを見せていたCOMSAを抜き約124億円という日本最高額の資金調達に成功しました。

QASHがここまで成功した理由として、COMSAとは違い「QASHはICO前からすでに上場が決まっていた」という点が挙げられます。QASHの発行元が運営するQUOINEXやBitfinexなど、複数の取引所への上場が確定していたのです。上場すればトークンは実質的な価値を持つことになり、その後の値上がりも期待できます。そのため、多くの投資家がQASHに殺到したのでしょう。

ICO前から上場を決めておく」のは、ICOを成功させるポイントの1つといえます。

以上がICOの成功事例です。これからICOを検討している企業の方は、スキームなどを参考にしてみてください。

6 【企業向け】ICOのやりかた(始め方)

企業向け

(1)ICOの手順・流れ

企業がICOをする場合、具体的にどのような流れで進めていくのかみていきましょう。まずは下の図で全体的な流れを確認してみてください。

ICOの手順かい

ICO実施の手順は上の図のように7つのステップに分けることができます。以下で具体的に確認していきましょう。

①ステップ1:ICOのスキームを構築する

ICOをするからといって、いきなり「ICOします!」と発表するわけではありません。まず初めにするべきは、「どのようなスキームでICOを行うかを決めること」です。

たとえば、すべてのICO企業が検討しなければならない点として、

  1. 改正資金決済違法上の「仮想通貨」にあたらないという前提でトークンを設計してICOをするスキーム
  2. 「仮想通貨」にあたるという前提で「仮想通貨交換業」の登録を得てからICOをするスキーム

のどちらを選ぶかはとても大切な点です。トークンが「仮想通貨」にあたる場合には、改正資金決済法(仮想通貨法)犯収法の規制対象となるからです。

また、トークンを初めから「仮想通貨」として設計したほうがスムーズですが、そうすると企業は、国から「仮想通貨交換業」の登録を受けなければなりません(ただし、仮想通貨交換業の登録をうけているICOプラットフォームを経由して販売する場合は必要ありません。)。もっとも、仮想通貨交換業登録のハードルはかなり高く、ベンチャー企業が登録を受けるのは現実的にかなり厳しいといえます。そのため、日本国内でICOをする企業のほとんどが①のスキームを選択することになります

また、ICOのスキームを構築する際には、自分たちが実現しようとしているプロジェクトをどのようなものにするのか、も検討する必要があります。具体的には、

  • プロジェクトのサービス内にブロックチェーンの技術を取り入れるのか
  • 発行する独自トークンをあくまでも資金調達の手段としてだけ位置づけ、サービスにはビルトインしない形にするのか

などです。

これはあくまでも一例ですが、これらの部分を具体的に決めておくことでICO成功の可能性が高まり、また、ICO後の運営もスムーズに行うことができます。

※仮想通貨と仮想通貨交換業について詳しく知りたい方は「仮想通貨の法律規制とは?仮想通貨法6つのポイントを弁護士が解説!」を、国内でのICOスキーム案について詳しく知りたい方は「ICOの8つの法律規制と合法的資金調達のやり方とは?弁護士が解説」をご覧ください。

②ステップ2:ICOの事前準備

ICOのスキームを構築できたら、次にICOを行うための事前準備を行います。具体的には、

  1. 独自トークンの発行
  2. ICO用webサイトの作成
  3. ホワイトペーパーの作成

などがあります。順番にみていきましょう。

(ⅰ)独自トークンの発行

独自トークンを発行する方法はいくつかあります。一例として、

  • カウンターパーティー(仮想通貨プラットフォーム)で発行する
  • イーサリアムで発行する
  • wavesで発行する
  • ビットコインなどの、公開されているオープンソースを元に自分で仮想通貨を作る

などがあります。これ以外にもスマホアプリを使った発行方法もありますので、自社に適した方法を選んでみてください。

(ⅱ)ホワイトペーパーの作成

投資家をどれだけ集められるかの「キモ」となるのがホワイトペーパーです。ホワイトペーパーについてはすでに解説しましたが、自分たちのプロジェクトの魅力やICO参加のメリットをいかに上手く伝えられるかがポイントとなります。

(ⅲ)ICO用webサイトの作成

企業ホームページとは別に、ICO専用のWebサイトを作ります。この専用サイトは投資家にとって重要な情報源となるため、ICOに関する情報をきちんと提示してあげることが大切です。最低でも以下の点は記載するようにしましょう。

  • ICOの日程
  • ホワイトペーパー
  • トークンの売り出し価格
  • トークン購入のための入金アドレス

実際の企業のICOサイトを見てみると、ICO開始までをカウントダウンしていたりします。

ブロックスクエア

https://blocksquare.io/tokensale

企業ごとに工夫を凝らしてサイトを作っているので、他社のICOサイトを色々と見てみて参考にしてみるといいかと思います。

③ステップ3:ICOアナウンス

ICOを行うことについて何も宣伝しないままいきなり開始するのは得策ではありません。より多くの投資家に注目してもらうためにも、ICOを行う前に、まずは「うちでICOをします!是非参加してください!」と多くの人にアピールすることが重要です。

自社のICOをアナウンスする方法としては、

  • プレスリリースをする
  • メディアからの取材をうける
  • ICO専用サイトに自社のICO情報を載せる
  • SNSを利用してICO情報を発信する
  • 自社のICO専用サイトで参加者の事前登録を始める

などがあります。

ICO専用サイトとしてはCOIN JINJAICO MarketCrypto Currency Magazineなど、たくさんの情報サイトがありますので、是非他のものも検索してみてください。

④ステップ4:オファーの設定

オファー」とは、ICOに関しての、投資家との間の具体的な契約内容を定めたものです。ホワイトペーパーと被る部分もありますが、

  • ICOの開始日や締切日
  • トークンの性質や性能
  • 最低資金調達額
  • プロジェクトの期限
  • トークンの最大発行数(資金の最低調達額)
  • どの仮想通貨を使ってトークンを購入してもらうか

などの、いわゆる「投資条件」を決めます。ホワイトペーパーを作成しない場合は、この段階までに必ず具体的な契約内容を決めておくようにしてください。オファーを設定したら、Webサイトなどに掲示します。

ICO企業と投資家は、以降この「オファー」の内容に沿って取引を行います。

⑤ステップ5:Presale(プレセール)/ Premiumsale(プレミアムセール)

プレセール」とは、ICOの本番(=クラウドセール・トークンセール)前にトークンを販売することをいいます。ほとんどの場合、プレセールでは通常よりも安い価格でトークンを購入できたり、特典が付いていたりします。

そのかわり、プレセールでは「100万円以上の投資額から参加可能です」などといった「最低投資金額」が設定されていたり、特定の投資家以外には非公開とされている場合も多く、一般の投資家が参加できる案件は少ないのが実情です。

⑥ステップ6:トークンセール(クラウドセール)の実施

プレセールが終わったら、いよいよICO本番の「トークンセール(クラウドセール)」です。プレセールとは違い、不特定多数の投資家から資金調達を行う点がクラウドファンディングに似ていることから、「クラウドセール」とも呼ばれています。企業によってはトークンセールをいくつかの段階に分け、ボーナスや特典を付与する場合もあります。

もっとも、トークンセールよりプレセールの段階のほうが特典が多く付くのは間違いありません。

⑦ステップ7:ICO実施後の管理・運用

トークンセールが終了し、無事資金調達ができたとしても、そこで終わりではありません。ICO企業は、調達した資金を元手にプロジェクトを進めつつ、投資家(ICO参加者)とのコミュニケーション・IR活動を行っていきます。

以上が、企業がICOを行う場合の手順・流れです。もっとも、ICOを行う上では法的な問題点や注意点をクリアする必要があります。

次の項目で確認しましょう。

(2)ICOにおける法的問題点・注意点

ICOをしたい企業にとって一番のハードルとなるのが、「仮想通貨交換業」の登録です。以下で詳しく解説しますが、ICO企業が発行するトークンを「仮想通貨」として設計した場合、国から「仮想通貨交換業」の登録をうける必要があります。

ですが、仮想通貨交換業として登録をうけるには、財務要件やセキュリティ対策のハードルなど、ベンチャー企業にとってはとても厳しい条件が立ちはだかります。そのため、「ICOを断念するしかない・・・」と判断してしまう企業も多く見られます。

これに対して、トークンを「仮想通貨」として設計しないのであれば、ICOをする上で仮想通貨交換業の登録を受ける必要はありません。そのため、ICOを検討している企業としては、

①改正資金決済違法上の「仮想通貨」にあたらないという前提でトークンを設計してICOをするパターン
②「仮想通貨」にあたるという前提でICO企業は「仮想通貨交換業」の登録を得てICOをするパターン

という2つのスキームからどちらかを選ぶことになります。より具体的に言えば、②の「トークンが仮想通貨にあたる設計」をした場合でも、COMSAなどの、仮想通貨交換業の登録をうけているICOプラットフォームを利用するのであれば、ICO企業自身は登録をうける必要はなくなります。

もっとも、トークンを「仮想通貨」にあたらないように設計したとしても、資金決済法上の「前払式支払手段」にあたる場合には、また別の規制対象となります。

これらを踏まえた上で、

  1. 改正資金決済法上の「仮想通貨」とは何か
  2. 「仮想通貨交換業」にはどのような規制があるのか
  3. 仮想通貨にあたらない場合に検討すべき「前払式支払手段」とは何か

をみていきましょう。

①改正資金決済法の「仮想通貨」とは?

ICOのスキームを検討する上で大切なのが、上で述べたように「トークンが仮想通貨にあたるかどうか?」という点です。すでに解説したとおり、「仮想通貨」とは、インターネットを通じてやりとりできる実体のない通貨のことをいいます。

改正資金決済法では、仮想通貨は「決済手段として利用できる、財産的価値のあるもの」と定義され、具体的には、

  • 1号仮想通貨
  • 2号仮想通貨

に分けられています。

1号仮想通貨」とは、不特定多数の人との間で、物を売ったり買ったりするときに使用することができる仮想通貨のことをいい、代表的なものとしてビットコインイーサリアムがあります。

2号仮想通貨」とは、1号仮想通貨交換できる仮想通貨のことをいい、価値のほとんど無い仮想通貨(=アルトコイン)がこの2号仮想通貨にあたります。

トークンの設計にあたって、1号か2号どちらかにあてはまるのであれば、そのトークンは、法律上の「仮想通貨」にあたります。そして、ICOにおける資金調達行為が、仮想通貨のエクスチェンジをしていると連鎖的に評価されてしまい「仮想通貨」を取り扱う「仮想通貨交換業者」として登録をうけなければならないor規制の対象となってしまいます

そのため、スタートアップがICOをする際には、仮想通貨交換業の登録を取得しなくても大丈夫なスキーム設計をするのがベターとなります。

②「仮想通貨交換業」の規制とは?

発行するトークンが「仮想通貨」にあたり、かつ、ICOプラットフォームを利用せず自社のみで一連の資金調達行為を行う場合、ICO企業は「仮想通貨交換業」の登録をうけなければなりません。

仮想通貨交換業」とは、仮想通貨の売り買いや、仮想通貨同士の交換をするサービスをいいます。具体的には、以下の要件をすべてみたす事業が「仮想通貨交換業」にあたります。

  1. 仮想通貨の売買または仮想通貨同士の交換をすること
  2. 上記の行為の媒介・取次・代理をすること
  3. 1.2の行為に関して、利用者の金銭または仮想通貨の管理をすること
  4. 以上の行為を「事業」として行うこと

たとえば、ビットフライヤーや、流出事件で話題となったコインチェックなどの仮想通貨取引所がこれにあたります。

繰り返しになりますが、ICOにおいては、トークンを「仮想通貨」として設計し、ICOプラットフォームを介さずに資金調達をする場合に仮想通貨交換業の登録を受ける必要があります。仮に、仮想通貨交換業の登録をうけないまま仮想通貨の取扱をした場合、

  • 最大3年の懲役
  • 最大300万円の罰金

のどちらか、もしくは両方が科せられる可能性があります。

なお、仮想通貨交換業者として仮想通貨の売買や取次などのサービスを行う場合、

  • 登録時の財務規制(登録拒否事由)
  • 情報提供義務
  • 分別管理義務
  • セキュリティ対策
  • 監督規制
  • マネロン規制

などの規制の対象となります。

③「前払式支払手段」の規制とは?

発行するトークンが「仮想通貨」にあたらないとしても、次に、「前払式支払手段」にあたらないかを検討する必要があります。トークンが「前払式支払手段」にあたる場合、ICO企業は資金決済法上の規制の対象となります。

前払式支払手段(まえばらいしき・しはらいしゅだん)」とは、以下の3つの要件をみたすもののことをいいます。

  1. 金額または数量が記載・記録されていること(価値の保存)
  2. 金額・数量に応ずる対価を得て発行されること(対価性)
  3. 代金の支払いなどに使用すること(権利行使)

これらの要件を簡単にまとめると、「ユーザーが前もってお金を払うorチャージしておき、これが記録された媒体を使って商品やサービスの購入を行うもの」ということができます。身近なものでいうと、Suicaなどの電子マネーや商品券がこれにあたります。

ICOにおいて企業が発行するトークンが「前払式支払手段」にあたる場合とは、ICOの目的となっているプロジェクトや、ICO企業が行っているサービス内でトークンが使用可能な場合をいいます。たとえば、プロジェクトやサービス内で、商品やサービスの対価としてトークンを使用できる場合です。このようなトークンを「ユーティリティトークン」といいます。

トークンが前払式支払手段にあたる場合、資金決済法上以下の規制をうけることになります。

  1. 表示義務
  2. 供託義務
  3. 行政への継続的報告義務
  4. 払い戻し義務

この中で特にスタートアップ企業にとって重い負担となるのは「供託義務」です。具体的には、発行したトークンが自家型前払式支払手段(自分たちのサービス内でのみ使えるタイプのもの)にあたると、国に対して最低でも500万円以上を預けなければいけません。スタートアップ企業にとって、500万円もの大金を供託しなければならないのはとても重たい義務ですよね。

そのため、ICO企業としては、トークンを「仮想通貨」にあたらないように設計するだけでなく、前払式支払手段にもあたらないように設計する必要があります

仮に、トークンが前払式支払手段にあたるにもかかわらず上記の義務を果たさなかった場合には、

  • 最大3年の懲役
  • 最大300万円の罰金

のいずれかが科せられる可能性があります。

※以上が、ICOに関する基本的な法的問題点です。さらに詳しく知りたい方は、「ICOの8つの法律規制と合法的資金調達のやり方とは?弁護士が解説」をご覧ください。

7 【投資家向け】ICOへの参加方法・リスク

個人向け

最後に、投資家がICOへ参加する場合の参加方法や参加する際の注意点・リスクを解説します。

(1)ICOへの参加方法・手順

まずはICOに参加する場合の手順をみていきましょう。

①ICOの情報収集をする

ICOに参加する場合、まずはICOについての情報集から始めます。どのようなICOがあるのかは、上でも挙げたようなICO MARKETCOIN JINJAなどのICOに関する情報サイトを利用するといいでしょう。

その際、企業がどのようなプロジェクトを実現させたいのか、企業のICO専用サイトやホワイトペーパーをしっかりと吟味することが大切です。なお、海外のICO案件ではホワイトペーパーが英語で書かれていることがほとんどのため、日本語に翻訳されたものを確認しておくことも重要です。COIN JINJAでは、英語のホワイトペーパーが日本語訳されたものが見れるので是非参考にしてみてください。

②ICO参加に必要な仮想通貨を用意する

参加したいICOを決めたら、参加するために必要な仮想通貨(=トークンを購入するために必要な仮想通貨)を用意します。

たいていのICO案件ではイーサリアムやビットコインが指定されていますが、まれに無名のアルトコインが利用できるものもあります。

いずれにせよ、自分が参加するICOではどの仮想通貨が必要なのかをきちんと確認しておくことが大切です。

③ウォレットを作成する

ウォレット」とは、仮想通貨を保管しておくためのWeb上のお財布のことをいいます。ウォレットを作る場合、セキュリティの観点から本人確認などが求められ、思った以上に時間がかかってしまう場合もあります。そうすると、「狙っていたICO案件に参加しそびれた!」なんてことにもなりかねません。

最近のICO案件のほとんどがイーサリアムベースで行われていますが、他の仮想通貨をベースにしている場合もあるため、この点は確認してから専用ウォレットを作成したほうが確実です。

また、わざわざ専用のウォレットを作らなくても、すでにもっている取引所のウォレットを使えばいいんじゃないか?と思う方もいるかもしれません。この点、確かに既存のウォレットでも取引は可能ですが、案件によってはトークンを受け取れないなどの不都合が生じる場合があります。そのため、専用ウォレットを用意することをおすすめします。

④プレセールorトークンセールに参加し、入金する

ウォレットを用意したら、プレセールorトークンセール期間に指定されたアドレスに仮想通貨を送金します。企業ごとにICO専用の送金用アドレスが用意されているので、間違いが無いようにしっかり確認してから送金するようにしましょう。

⑤トークンを受け取る

送金が済むと、その後ウォレットにトークンが配布されます。確実に配布されているかどうか確認しましょう。あとはトークンを保有し続けるもよし、値上がりした時点で売り抜けるもよしです。

以上が投資家サイドのICOへの参加手順です。

次の項目で、投資家がICOに参加する場合に注意するべきことや考えなければならないリスクをみていきましょう。

(2)購入(参加)する際の注意点・リスク

ICOは、投資家側からすると「安くトークンを手に入れる→上場して値上がりした時点で売り抜け、利益をあげる」という目的があり、条件のいい案件があると飛びついてしまう方も少なくありません。ですが、美味しい話には裏があるものです。世界的にも、ICOに対して規制をかける国が増えてきました。

そこで最後に、投資家から見た場合の、ICOに参加するときの注意点やリスクについて見ていきたいと思います。

①1番気をつけるべきは詐欺案件!

投資家サイドから見て1番気をつけなければならないのは、詐欺案件にひっかからないようにすることです。お金を集めるだけ集めて、その後連絡が取れなくなるorプロジェクトを進めないというパターンが数多く見受けられます。

以下のような案件の場合、詐欺目的のICOの可能性があるため注意が必要です。

  • ホワイトペーパーが無いor内容がいい加減
  • ICOサイトに情報が全然載っていない
  • 役員や創業メンバーのSNSが確認できない
  • 会社の実態が無さそうor明らかではない
  • プロジェクトが詳細まで固まっていない

また、ICO企業が詐欺をするつもりがなくても、SNSなどでその企業を騙る第三者が偽のアドレスを公開し、そこに送金させるというパターンも増えています。仮想通貨を送る場合には、公式のICOサイトに掲載されているアドレスへ送るようにしてください。

②詐欺ではなくても、プロジェクト頓挫の可能性などがあることに注意

案件自体はまっとうな場合でも、投資家サイドが知っておくべき注意点・リスクがあります。以下はほんの一例ですが、ICOに参加する上では必ず知っておかなければならない点です。

  • 最低資金調達額に達せずICOが失敗した場合に、返金トラブルなどに巻き込まれる可能性があること
  • 仮想通貨取引所になかなか上場されず、売り抜けできない可能性があること
  • 上場できたとしても、ICO時のトークン販売価格より安くなってしまういわゆる「価格割れ」が起こり、利益をあげることができない可能性があること
  • プロジェクトが進まない・達成されない可能性があること
  • プロジェクトが途中で頓挫し、消滅する可能性があること

以上が投資家サイドから見た場合に気をつけるべき点です。特に投資話に関しては、美味しい話には裏があるものです。そのため、少しでも怪しいと思ったら全て疑ってかかるくらいの自衛が必要だと言えます。また、無事にICOが成功した場合でも、そこから先にも多くのリスクがあることを忘れてはなりません。

8 小括

総付景品
ICOとは何か、過去の事例から実際にICOを行う際の手順・法的問題点などを解説しましたが、いかがでしたでしょうか。ICOはいまだ法整備が追いついていない部分も多いので、いざやってみようと思ってもどうすればいいのか不安な方も多いかと思います。

もっとも、ICOはとても有用な資金調達方法です。この記事で解説したことを踏まえた上で、合法的に資金調達をするようにしましょう。

9 まとめ

  • 「ICO(イニシャル・コイン・オファリング)」とは、企業が「トークン」と呼ばれる独自の暗号通貨を発行し、これを投資家に買ってもらうことで資金調達をすることをいう
  • ICOはIPOやクラウドファンディングと似ているが、細かい点で違う
  • ICOを行う上で知るべきキーワードは、①仮想通貨、②トークン、③ホワイトペーパー、④イーサリアム、⑤THE DAOがある
  • 企業からみたICOのメリットは、①短期間でスピーディーにたくさんの資金を調達できる、②プロジェクトの構想段階から資金を集められる、③投資家への対価の設定が自由にできる、④世界中から資金調達することができる、⑤投資家に経営権を渡さなくて良い、などがある
  • 企業から見たICOのデメリット(リスク)は、①トークンが流通しない可能性がある、②一部の投資家による買い占めの可能性がある、③規制対象となった場合には、ルールに沿ったスキームを構築する必要がある、などがある
  • 投資家からみたICOのメリットは、①投資による利益が見込める、②国外の企業や無名のベンチャー企業でも気軽に投資できる、③少ない額から投資できる、などがある
  • 投資家からみたICOのデメリットは、①元本割れの可能性がある、②詐欺案件の可能性がある、③トークンの利用範囲が狭い可能性がある、などがある
  • 企業がICOをする場合の手順としては、①ICOのスキームを構築する、②ICOの事前準備、③ICOアナウンス、④オファーの設定、⑤プレセール、⑥トークンセール、⑦ICO実施後の管理・運用となっている
  • ICOをする上での法的問題点は、①改正資金決済法上の「仮想通貨」にあたるかどうかの問題、②「仮想通貨交換業」の規制、③「前払式支払手段」の規制がある
  • 投資家がICOに参加する場合の手順としては、①ICOの情報収集をする、②ICO参加に必要な仮想通貨を用意する、③ウォレットを作成する、④プレセールorトークンセールに参加し、仮想通貨を入金する、⑤トークンを受け取る、となっている
  • 投資家がICOに参加するときには、詐欺案件だけでなく、プロジェクトの頓挫などのリスクも検討しておく必要がある